調査前夜
更に時が過ぎて今できる準備はすべて整った……と思う。
そして気がつけばあたし達は馬車の荷台で寝転がりながら目的地まで向かっていた。
「白奈は大丈夫?」
「え? 何が?」
「いや、かなり揺れてるからダメな人はダメそうだなって」
「あー……そういえば、意外と大丈夫かも」
乗り物酔いとかはしたことはなかったけど、こんだけ揺れるとたしかにダメな人はいるかもしれない。
というか……。
「贅沢いうつもりはないんだけど、なんで商人用の馬車なのこれ? あたしと真琴だと荷物だってそこまで多くなかったのに」
「聖女をすでに召喚したこととか公にしてないんでしょ? それに姫様用の馬車なんて使ったら何事ってなるよ」
「そうかもしれないけど……」
「それにボクは乗せてもらって来たからいえるけど……すごい見られるよ。偉い人の馬車って」
多分、あたしが城下町を歩いていた時に通っていった馬車に真琴達が乗っていたのかな。
そうだとしたらあたしも見てたから何も言えない。
「ていうか、今更だけど馬車を使えば日帰りでいける距離って国から結構近かったりしない?」
そんなに国の近くで黒の魔力が出てる元凶があるとかいうの?
「ボクが聞いた話だとつくのは夕方くらいで、ボク達が本格的に動くのは明日だってさ。後ろから馬車がついてきてるのは騎士団の人達が魔力のギリギリのところまで近づいてキャンプを作って待機しててくれるみたいだって」
「後ろ? 本当だ。ついてきてる」
まあ馬車で夕方までかかる距離なら警戒するくらいでいいのかな。
初めて乗ったけど思ったより速度はでてるし。
あたしの世界だと近づいたら命の危険みたいなことってガス漏れ事故とかのイメージだけど、幸いなことに一度も経験はしたことないから安全な範囲って想像が難しい。
あたしが考えても答えはでそうにないと結論づけて、到着するまでは景色を眺めたり仮眠をとろうとしたりしながら過ごした。
そして、馬車がとまって荷台から降りると夕方になったこととは別の何かの理由で薄暗く感じる場所だった。
それに霧かわからないけど視界がなくなることはないにしても、少し不快なモヤがかかっている。
少し目をこすってみるけど変わらないってことは、あたしの目が理由じゃないはず。
「聖女様。これから我々でベースキャンプを設営します。明日に備えて準備をお願いします」
騎士の1人がそう伝えてくる。
「それならボクは周辺を警戒がてら少し動いてくるかな」
「体力つかって大丈夫なの?」
「何もせずに元気なまま寝るとそれはそれで眠りが浅かったり体に不調がでるんだよね」
「そういうものなんだ」
あたしなんて家でゴロゴロして過ごしても次の日の登校とかに影響あることほとんどないからわからない感覚だ。
騎士団の人達が荷台からテントなどをおろして設営しているのを見つつ、あたしは少し周囲を見渡した。
街道だの先とかは普通に見える。
ただし、方角は正確にわからないけれどある方向にある森からは異様といえる圧を感じ取ることが出来た。
それに最近覚えのある気配も感じ取ることができる。
「確実にあっちの森の中かな」
「そんな感じがするね。ボクも感じるよ……魔物と同じ感じをね」
「やっぱり? あたしもそういう系の感じがするんだよね。というか……なんかあの森だけ他と比べても暗くない?」
反対方向だったりを見てから改めて森を見るとやはり暗く感じる。
ただ空を見てみても特別に分厚い雲が存在しているわけでもないはずだから、明らかに普通ではありえない形で暗くなっている……気がする。
この世界だと普通の自然現象だとか言われたらそれまでだけど聞いたことはないし。
「黒の魔力が濃いのが原因だとしたら……大本の近くってどんなことになってるんだろう」
「あたし達で解決できるか不安になってきた。やるしかないけど」
「ボク達でやるしかないからね。頑張ろう!」
「うん……そうだね。頑張ろう! あたしの本気をマジで見せてやる!」
「なんかもう本気をマジとか混乱してるね」
「ぐっ……」
不安が出てきたらやるしかないと思い込むしかないから、支離滅裂な言葉は見逃してほしい。
少し前までただの現代の高校生だったあたしがこれから謎の魔力が漏れ出している危険地帯に飛び込むんだから。
「まあ大丈夫。最悪、やばかったらボクが白奈のことおぶってでも一旦撤退するから!」
ある意味ではかっこいいセリフなんだけど……縁起でもない状況だともいえる。
「……そんなことにはなってほしくないけど。まあ、もしもの時は頼りにしてる」
「任せて!」




