二人の聖女
「あの姿は簡単にいえば変身したっていうか、なんかそんな感じなんだけど」
「自己暗示の趣味とかじゃなくて?」
「そうだとしたらもう少し地味な見た目にするから! ていうか、変身とけたところ見たでしょ!?」
「見たけど信じがたいというか。ボクが聞いてた聖女の力の例だと一切聞いたことなかったから」
やっぱりそうなんだ。国によって聖女の認識が違うとかでもないってことだよね。
「女の子向けアニメみたいな感じじゃなかった?」
「やっぱりそう思う? いや、あたしもびっくりしたんだからね?」
まあ、それはそれとして。
「真琴のほうはどんな能力なの?」
「ボクはなんか色々な武具を使いこなせるっていうことと聖剣が使えるらしいって聞いてるんだけど」
「あの短剣?」
「いや、あれは教会の人から一時的な代わりとして渡されたの。聖剣がそもそも聖女の召喚と一緒に大陸の何処かに現れるんだって」
「何その回りくどい能力」
「ボクもそう思うよ。この世界救ってほしいがための召喚なら一緒に渡してほしいって」
「それじゃあ、この国に来たのは聖剣を探すため?」
「というより聖剣の情報を集めるためかな。あとはアンシーさんが独断でボクのこと召喚したみたいであっちの国だと扱いが微妙なんだよね」
「そういうこともあるんだ」
てっきり大規模な召喚の準備が必要で、それこそ国のトップの命令で集められた人達で行わないといけないものを想像してた。
「ちなみに白奈はこっちにきれどれくらいたったの?」
「あたし? あたしは……どれくらいだっけ。なんかもう色々有りすぎてわかんないかも。半年はたってないと思うんだけど」
「ふーん。でも、それぐらいならボクと同じくらいの期間かも」
「黒の魔物とは今回以外にも戦ったりしてるの?」
あたしは素直に疑問として聞いた。
エミリアの元で召喚されたことで無理に戦いにだされたことは今はないから実情を結局把握はできてない。
今回のことだって城にいるだけで分かる程度の騒ぎになってるからあたしも気がつけて情報を集めようと思えたわけだし。
「何回かは戦ったかな。でも、今回ぐらいの強さの相手は初めて」
「もっと弱い……というか小さい黒の魔物もいるってこと?」
「むしろボクはそっちと戦ってきてたから、今回の相手が大きいし力は強いしタフだしでびっくりしたよ。今まで戦ってた小さい奴相手なら数が多くなっても戦っていけそうだと思ってたくらい」
「なるほどね……あたしはでかいモグラみたいなやつと今回だけだから、むしろそういう小さいのもいるのを見たことがなくて」
今回もレーダー使ったときも、あのでかいの以外の反応はなかったから小さいやつは国の近くにはいなかった気がするし。
「ボク達で倒して問題解决って本当にできるのかなって気持ちに正直なってる」
「あたしもまあ、少し軽く考えてたなって実感した」
「聖剣を手に入れたらもっと変わるのかな」
「そこはあたしにはわからないけど……あ、そういえば、なにか元の世界から一緒にきた道具とかはない?」
「へ? こっちの世界で起きたときにはもう手ぶらだったよ」
「そっか……」
てっきりスマホは聖女のみの通信機として使えるみたいな都合の良いことがないかなとか思ったんだけど。
ますますあたしだけなんでこんなに前例のない聖女なんだろう。
理由なんてないのかも知れないけど……一度気にしてしまうと頭に残る。
「何か持ってたりしたの?」
「スマホを持ってた。まあアプリも電話も使えないから娯楽には役に立たないんだけど」
あたしはそう言ってスマホを見せる。
「やっぱり、ボク達が元いた世界って同じなのかな……まあそれはおいといて、それなら何に使えるの?」
「変身とか黒の魔物が近くにいるとわかる」
「便利……と思ったけど、そもそもいることを察せないと調べられもしないんじゃ微妙かもか」
「うん。しかも、この世界に来てから勝手に入ってたアプリとか見ても『???』が多すぎて、結局能力としても何ができるか中途半端なの。どう思う!?」
「まあまあ落ち着いて」
思わずヒートアップしてしまった。
「そういえば真琴ってセーラー服だったけど。あれって防御力? 的にどうなの?」
「あんまり意味ないよ。守りの魔法を教えてもらって使ってるから弱い相手なら大丈夫だけど。」
「そうなんだ……そうなると今後はなんか装備探さないと」
「うん。でも、ボクも鎧なんて着たこと一度もないし戦えるのかな」
「戦わないといけないって諦めれば意外とどうにかなる!」
「それはどうにかなっているってことでいいのかな……?」
その後もなんとなくこの世界に来てからあったことだったり、若干の生活の時の不満だったりを話した。
夜も更けていきそろそろ寝るかななんて時間になった頃だった。
「……あ、気になってたこともうひとつあったんだ」
「何?」
「いや、技の名前叫んでたけど。変身してる時は『ピュアハート』って名乗ってるとかそういうこと?」
「…………」
全然気にしてなかったけど、確かに宝石の名前といい『ピュアハート』って名前につくことすごく多い。
でも、あたしがそれを自分で決めたわけじゃなくてスマホでみたらデフォルトでそうだったり、頭に浮かんだのがその名前だっただけで。
「ち、違う。あたしが決めたわけじゃない!」
「そ、そっか」
「というか、そんなに人前で変身したことまだないから」
「あー……でも、それじゃあ、今後はどうするの?」
「どうするって?」
「いや、そういう変身するアニメとかって正体を隠すのがお約束だったりするなってボクは思って。それに、聖女であることって隠しておいたほうがいい場面もあるなら、便利じゃない?」
「一理はあるけど……でも『ピュアハート』って。あたし高校生だよ?」
「年齢は関係ないんじゃない?」
「ピンクだし。髪までキュンキュンみたいな雰囲気になってるじゃん。戦い方は物理がすごいけど!」
「でも、女の子向けのヒロインって結構そうやって戦ってる気がするけど。ボクと同じ世界のアニメだったら」
「それは……そうなんだけど……実際にあの服装になったら恥ずかしいんだよ!? 今はまだマジマジと見られる場所で戦ってないからいいけど!」
もしも城下町のどまんなかで国民全員に見られながらとか思うと。
「でも、この世界においても珍しいならみんな特別な装備とか思って気にしなさそうだけど」
「そ、そうかなー?」
「いいじゃん! 魔法少女ならぬ魔法聖女ピュアハート」
「それっぽい名前つけないでよー」
最後はそんなくだらない話をしているうちにエミリアたちも戻ってきて、一旦お開きとなった。
あと数日の間はこの国にいるらしいので続きを話すなら後日と。
「ねえ、エミリア」
「はい。なんですか?」
「あたしの変身した姿って……は、恥ずかしくないかな? この世界の基準で」
「可愛らしいと思いますよ。たしかに個性的ではあるかもしれませんが」
「そ、そっか」
恥ずかしい格好だとは思われにくいのか。
……でも、ピュアハートかあ。




