新たな聖女
「大丈夫!?」
転んだ魔物の横を通り抜けてあたしのもとまでやってきたセーラー服の女の子。
「だ、大丈夫だけど。あなた、その服は」
「あぁ、見慣れない服だよね。信じられないと思うけど、ボクは聖女なんだ。ここは任せて!」
ボクっ娘って周りにもいなかったから初めて見たかも知れない。
いや、それはどうでもいい。
セーラー服に短剣を持ってセミロングな黒髪ゆらしているこの娘も聖女ってこと。
いや、異世界から召喚されたって意味では服装がそれを嫌でも示してるけど。
「ちょっと待った」
「へ? いや、あの魔物はちょっと変なやつで」
「そんなことはあたしだってわかってる。ていうか、あたしも聖女だから」
「へっ!? そんなピンクはこの世界特有のなにかかと」
「この世界でも異質だよ!」
髪の色こそ色んな色の人がいたけど、ピンクはほぼいなかったし。
『ガアアア!』
そんな風にやり取りしていたら魔物は立ち上がってこちらに向かって叫んできた。
そして、どう考えてもこちらに突っ込んでくる姿勢になっている。
「詳しいことは後にしよう。あなた、あの魔物に対しての決定打は?」
「あるらしいけど、まだ使ったことない。ボクが今確実にできることは光の攻撃魔法と初級の回復魔法。あとは守りの魔法」
「いや、十分すぎるどころかよりどりみどりじゃない!?」
「ていうか、来てるよ!」
魔物は地面を強く蹴ってこちらに向かってきた。
あたしは一時でいいので話して作戦を練りたかった。
あの魔物にわかりやすい遠距離攻撃はここまで見ていない。筋力で何かを投げるとしても、投げられるものがこの周辺だとない。
仮に合ったとしても木を折るか引っこ抜くから時間がかかる。
あたしはそこまで考えて、彼女を抱きかかえて一気に上にジャンプした。
「うわあああ!?」
「舌、噛むから叫ばないほうがいいよ」
そして最高到達点付近になって上に行く勢いが弱まる。
「落ちるまで時間内から簡単に伝えるけど、弱らせてから大技当てないと倒しきれない。だから、お互いに気を引きながらまずは弱らせる。トドメはさせそうになった時にやれるほうがやる」
「わ、わかった」
「ただ、相手が弱っているかどうかすごいわかりにくいから状況はしっかり見ることと。筋肉バカだから一撃がめちゃくちゃ重いから注意」
「りょ、了解。というか、なんでこんなにとべるの!? 空とべるの!?」
「ただの大ジャンプだからもう少ししたら落ち始めるから。着地したら下ろすからお互い別の方向にダッシュね」
「へ? ――いやあああ!!?」
まあスカイダイビングの経験でもないと普通はそういう反応になるよね。
あたしは自分の体だったことと、かなり混乱してた時に経験したせいで気がつけば適応してたけど。
でも、この子があたしと同じような世界からきたとしたら命がけの戦いなのに余裕すごいあるな。
楽観的なのか大物なのか。
そして落ちる時間がやってきた。
ただ下に魔物はいてもちろこちらを向いている。
でも、流石にこの状況は見越している。
あたしは彼女を落とさないように気をつけつつも少し姿勢を調整して。
流星キックとでもいうべきかな。
勢いを増して一直線に魔物のこちらを捉えていた眉間に右足の蹴りを入れた。
そしてそのまま蹴りの勢いで距離を取って着地する。
「ボク、バンジージャンプとかしたことあるはずなのに……全然怖かった」
バンジージャンプって単語の時点であたしの似た世界か同じ世界の人?
いや、気になるけど一旦この戦いが終わるまでは意識の外においだそう。
「それじゃあ……あたしがあいつの背後まで行く。それでお互いに気を引いて狙われてないほうが攻撃ね」
「任せて!」
しかし、短剣で服装は確実に軽装だけど本当に大丈夫なのかな。
いや、自信満々だったし信じよう。それにあたしだって人のこと気にしてるほど余裕はない。
あたしは杖を改めて握り直して魔物に向かって走り出した。




