いきなりのピンチ
「卑怯だけど先制攻撃!」
勢いよくとんだあたしはそのまま魔物めがけて両足で蹴りをいれた。
本当は着地地点ちゃんと考えずにとりあえずとんだせいでぶつかるしかなかったんだけど。
まあ、いいでしょう。
あたしは蹴りを入れたことで勢いが収まり地面に着地した。
勢いよく蹴ったせいで魔物は木に激突していた。
というか、体が大きいからか森の中でも少しだけ開けている場所にいてくれた。
ここならあたしも動きやすい。
「ていうか……黒の魔物っていうか本当に魔物じゃん」
吹き飛んだ後に立ち上がってこちらを向いた魔物を見て思わずそう言ってしまった。
遠目で見てもピンとこないわけだ。
「オーク? それとも黒の魔力で大きくなったゴブリン?」
イメージ的にはそんな感じの筋肉質な人型の魔物だった。
肌の色は暗めの緑色といった感じだけど。
『グオオオオオ!!』
理性があるようには見えない雄叫びを上げた。
体の色んな場所も血管が浮き上がってるみたいになってる。
「何をしている!? その魔物を刺激するんじゃない!」
「あっ」
あたしが魔物と向き合っていると、近くで隠れながら見ていたと思わしき兵士さんがでてきてしまった。
そして、魔物がそっちを向いてしまった。
「兵士さん逃げて! 早く!」
「きみを置いていけるか!」
「いいから!」
最初の一撃の時点で聖女とはいわないけど、魔物相手に戦えること察してくれたらよかったけど、都合良くはいかないよね。
魔物は太い腕を振り上げつつ兵士さんのほうへと走り出した。
「ぐっ、引き付けているうちに逃げるんだ!」
兵士さんは兵士さんでなんか覚悟決めてるし。
「少しは状況を見てよっ!」
あたしは兵士さんと魔物の間に飛び込み、どうにかその腕を受け止めた。
ただ、変身してるにも関わらず結構重めの一撃で両手で受け止めてなかったらそのまま吹き飛ばされてそう。
それどころか受け止めたのに拳を引っ込めるどころかそのまま押しつぶそうと言わんばかりに力を込めてくる。
「君は一体!?」
「いいから、早く逃げてっ! そんで他の人も不用意に近づかないように言って!」
「わ、わかった」
流石にこの光景を見たら理解してくれたようでその場から離れていった。
「そんでもってあんたは早く手を引っ込めなさい!」
あたしも足でしっかりと地面を踏みしめてどうにか拳を弾くように押し返した。
体格差は3倍とか4倍くらいある。
今の攻撃でわかったけど、変身中のあたしでこれだと普通の人だと大盾とか持っていたとしても本当に蹂躙される気がする。
『ガアアアアア!』
あたしに拳を弾き返されると、更に激情でもしたのかわからないが空に向かって雄叫びを上げてがむしゃら気味に殴りかかってきた。
「よし、こい……って思ったけど、待って!?」
あたしはそれを先程のように受け止めて捌いてやろうと思ったけれど、直感的に後ろにジャンプで距離を取って回避する。
魔物がそれを追うようにして拳を振り下ろしてくる。
右腕の後に左腕と単調なはずなんだけど――デカい上に早いのがこわすぎる。
「1回1回受け止めてたら絶対やられてたでしょこれ」
どうにかジャンプで回避ながら、たまに勢い余って拳がぶつかった地面のエグレ具合を見て血の気が引いた。
「この前とぜんぜん違うしどうしよう」
モグラは大振りの攻撃だったし動きも結構見えやすかった。
今回は拳の攻撃そのものだけみると単調だけど、がむしゃらに振り回されているせいで反撃のタイミングがあたしだと見極められない。
でも、こんだけ元気なところにワンドの技を入れても一撃で倒せる保証がないと、むやみに使って変身がとけたら――いや、やられた後の想像はしないでおこう。
何にしても、このままだといきなりのピンチだよ。




