少し隠れた魔道具店
西門まで向かって通りを歩いている時のことだった。
人が左右に交わして奥から馬車がやってきた。
あたしもひとまず邪魔にならないように移動しつつ見ていると、どうやら商人といった雰囲気でもなさそう。
荷車ではなくて装飾がされて人が乗る用に作られている見た目をしていた。
窓は特殊なものなのか日の角度か中の様子は見えなかったけれど貴族の誰かとかかな。
馬車が向かってる方向も城のほうだし。
あたしは馬車が見えなくなるまでなんとなく眺めてしまいながら、改めて西門に向かって歩き始めた。
西門まではそれ以上のことは起きずに無事にたどり着けた。
周りを眺めてみてみると通りに面した場所にはなさそうだけれど、店の間にある道に魔法使いと思わしきローブを着た人が入っていくのが見えた。
あまり奥まで入らなければひと目にはつきそうだと判断して応用にしてその道に入ってみる。
すると、そこには宝石を売っている店や魔道具と思わしき商品が並ぶ個人経営規模の小さい店が並んでいた。
だが、その中に数軒だけ大きな建物があり入口に看板が立てかけられている。
1つはぼうやら武器工房みたいで煙突からは煙がでて、耳をすませると金属を叩く音が中から響いている。
そして、次の一軒をみると看板に目的の店名が彫られていた。
「ここだ……他の大きいお店はなんだろう」
もうひとつは店名と建物を見ても何が売っているか想像がつかず、扉はしまっている。
ただ、あたしの世界でも見るような『開店中』の札がドアノブにかけられているからやってはいると思う。
そして最後に目立つ建物には看板もなく扉もしまっていた。
「誰も使ってないのかな?」
少し気になってはしまうけれど、今は目的の店を優先しよう。
あたしは魔道具店の扉を開いて中にはいる。
扉を開けた時に、店内側につけられていたベルが揺れて音を鳴らして店員と思わしき女性がやってきた。
「いらっしゃいませ。ようこそ『ショップ・マジカル』へ」
「本当にこの名前なんだ……」
異世界においてマジカルってなんなんだろう。
「何かお求めの品がお決まりでしょうか?」
「あ、えっと、ローズさんから紹介されてきたんですけど」
「へ!? ローズ様のお知り合いのお方でしたか。少々お待ちください」
ローズさんの名前をだしたら驚いたように店の奥へ引っ込んでいってしまった。
……ローズ様?
いや、まあ常連のお客さんのことを他人に話すなら違和感はないのかな?
それかあたしが知らないだけでローズさんは実はあんな地下にこもっているけれど魔法使いや魔道具を扱い業界では有名人とか……?
まあ、お城で自由にできているしエミリアとの仲を考えると腕はたしかなのはあたしでも想像がつくけど。
「おまたせして申し訳ありません。店長のエイルといいます」
あたしがそんな考えをしていると、奥から中性的な人がやってきてそう名乗られた。
まずい……声を聞いても男性でも女性でも通じそうな声だ。
男女によって対応を変えるなんてことをあたしはするつもりはないけれど、それでも男性か女性かで触れていいのかどうかわからない話は数多くある。
「白奈です。少し相談があって、ローズさんからこのお店を勧められたんですが」
「なるほど。少し込み入った話になりそうですし座って話しましょう。こちらへ」
そういってエイルさんは手招きしつつ店の奥へと歩いていく。
向かう最中に店内の棚を見ると、あたしにとっては見慣れなくて価値がわからない石だったりどう使うか想像がつかない道具が並んでいるのが目に入った。
カウンターを通り過ぎて奥に行くと通路があり、来客用と思える部屋に案内された。
こういう部屋を用意しているってことは、単純に売るだけじゃなくてオーダーメイド的なのも引き受けたりしているお店なのかも知れない。
「あまり高価なものではありませんがどうぞ」
「ありがとうございます」
案内された席に座っているとそういって紅茶と思わしきもの出してくれた。
エイルさんは机を挟んで向かいの席に座る。
「それではシロナさん。ご相談というのはどういった内容でしょうか」
話を切り出されて今更ながらにあたしの準備不足がまたでてしまったことを自覚した。
いや、街を歩いている時に一度は自分でも思ったことだけど聖女についてどこまで周知されているかわからないから、どこまで話していいんだろう。




