聖女の使命
いつの間にかどこかの豪華な部屋に運ばれていた。
ついでにいうとファンタジーでみるような寝間着っぽいワンピースに着替えさせられてベッドに寝かされていた。
まあ、あのお姫様たちによって運ばれたんだと思う。
目が覚めてから再び、あのお姫様がやってきてひとまず現状の説明をしてもらったんだけど。
「えっと、つまり……あたしは異世界にあなた達によって召喚されたってこと?」
「そのとおりです」
「それで、あたしはあなた達がいうところの聖女と呼ばれる存在……なんだよね?」
「はい」
さっぱり理解ができない。
いや、なんかアニメとかでそういう展開の作品は見たことあるけどアニメとかだし。
どうにも現実感がない。
だけど、気を失っても状況が変わってないから夢ではないんだよね。
勝手な想像だけど、夢なら覚めてそう。
「わかった。ひとまず信じる。それで、あたしは何をするために呼ばれたの? 世界の危機とか言ってたけど」
「言葉の通りです。この世界そのものに関わるかもしれない危機が迫っています」
「もう少し詳しく教えてくれない?」
あたしもそこまで真面目なタイプじゃないけど、流石にノリだけでわかった気になっちゃいけないことぐらいはわかる。
「そ、そうですね。聖女様の世界には世界樹は存在していますか?」
「創作物の中の存在って感じで実在はしてないかな」
「この世界は世界樹によって生まれたと言われており、実際に大陸の中心に存在しています」
「なるほど?」
「そして、世界樹の根と呼ばれる大きな魔力が大陸中に枝分かれして広がっています」
召喚されたって聞いてたから驚きはないけど、魔力って単語が当たり前にでてくるってことは魔法とかもあるのかな。
まあ、それは聞くのは後にしよう。あたしって話が混ざると頭こんがらがっちゃうこと多いし。
「人族が住む大きな国はこの枝分かれした根の中でも太く世界樹と密接につながっている根の先に作られている場合が多いのですが……」
「ですが?」
「この根の魔力が周期的にですが有害な魔力――私たちは黒の魔力と呼んでいる魔力を生み出してしまうのです」
「なるほど」
病気みたいなものなのかな。
「あれ? でも、それなら世界の危機って周期的にきてるってこと?」
「いえ、本来であれば神官達による浄化の力でどうにかできるのですが。今回は理由はわかりませんが、今までの比にならない規模の黒の魔力が生まれてしまったようで」
「いつもよりひどくて対応がおいつかないってことね」
「それどころか現状では自分たちのみでの解決は見込めないというのが本音になります」
勝手なイメージだけど、立場がある人がこういう話をする場合は体裁とかもあってある程度隠したりしそうだと思ってた。
でも、このお姫様からはそんな雰囲気は感じ取れない。
「それで、聖女の伝説か何かがあって、召喚したらあたしがきたってこと?」
「はい。過去に状況は違えど世界樹に異変があった時に聖女が現れて世界を救ったというものがあります」
「あたしが聖女……自分ではさっぱりわからない」
「で、ですが、召喚術式には間違いはなかったはずです。それに、その……あの……」
なぜかお姫様が顔を赤くしてもじもじする。
「どうしたの?」
「着替えさせていただいた際にお腹に聖女の証である聖印が確認できたので」
「そんなんあるの!?」
確認しようと思ったけれどワンピースなので、すぐにはできなかった。
ただ、少なくともあたしは古傷が残るような怪我もしたことがないから何かがあれば見間違うことはないはず。
それなら、嘘は多分ついてないと思う。
「まあ、追々確認すればいいけど……なんで、そんなに恥ずかしがってるの? 女同士ならあたしは気にしないよ?」
「い、いえ、同性であれど裸を見てしまうという経験が少ないものでして。それも聖女様の素肌を不可抗力とはいえ」
もしかして、この世界ってお風呂の文化がないのかな。
そうだとしたらすごい大変なんだけど。毎日はいらないと我慢できないってほどの潔癖のつもりはないけど。
「聖女様?」
「あ、うん、大丈夫」
これもひとまずはおいておこう。
今確認しなくても、この世界で過ごすことになったらいずれわかることだよね。
「全てを受け入れられたわけじゃないけど……状況はわかった!」
「こちらの世界の都合に巻き込んで申し訳有りません。ですが、今は聖女様に頼る以外の方法が見つかっていなく」
「うん、それもなんとなくわかった。あたしにできることなら、手伝うよ」
「聖女様! ありがとうございます!」
正直なところ世界を救うなんてできる自信は沸いていない。
でも、追い詰められていることは伝わってくる彼女の姿を見て話を聞いて、無視することはできなかった。
それに、あたしが好きなヒロインやヒーローだったら、今世界を救えるかどうかなんて関係なく目の前の子を助けるために一歩踏み出すはずだと思った。
現実ではありえなかったそんな存在に近づけるのかも知れないなんて、無意識に思ったのかもしれない。
「よし、それなら今更だけどあたしは神崎白奈。あ、えっと、白奈が名前ね」
「シロナ様ですね。私はエミリア・セイティスと申します」
「よろしくね」
「はい!」
あたしはエミリアと握手をする。
さて、一応話はまとまったんだけど最後に聞くのが怖いけど聞いておかないといけないことがある。
ここまでずっと避けてきた。
ゲームとかではお約束だと思うけど、この状況になると少し嫌な。
「ところでなんだけど。手伝うって言ってすぐにこれを聞くのはひどいと思う。だけど、聞いておかないとだめだと……思って」
「なんでしょうか? 私に答えられることであれば」
「仮に今帰りたいっていったらあたしって帰れるの?」
「…………」
あたしがそう言った瞬間、数秒時が止まった気がした。
そして、ゆっくりと目をそらされた。
「申し訳ありません……おそらく、伝承通りであれば危機を解決していただければ帰れるかと思います」
「やっぱり、そういう感じだよねー!」
あたしのヤケクソ気味の叫びがその場に響いた。




