ニ度目の変身
いい時間になり昼食を取った後に食休みをしつつあたしの魔法の才能について確認する。
「あたしってこの世界的にはどうなの?」
ちなみに自分で思う感じでは、あまり才能はない気がする。
ただ、魔法が発動していないみたいな感じはないから全くないわけではない……なんて勝手に思ったけど。
「シロナ様は魔法の適性は……高いとはいえませんね」
「まあそんな気はしてた」
「魔法使いとして戦闘を行っていくには不安が残ります。冒険者とやると言っていたら、物理的な戦いを行う戦士やレンジャーをおすすめします」
「あ、やっぱり冒険者の中にも職業というかクラスみたいなものがあるんだ」
「資格や明確に決められたものがあるわけではありませんが、パーティーを組みたいときや自分の実力を相手に示す時にわかりやすいようにと戦闘の仕方にあわせたクラスが定着はしていますね。とはいえ、例外であったり器用に多くの役割をこなす方もいるので絶対ではありませんが」
「なるほどね」
ゲームみたいに、クラスによってできることが決まるってことはないのか。
まあ普通はそうか。現実なんだもん。
「ですが、使えないというわけではないので初級魔法は可能であれば研鑽を詰んでいくといいと思います。聖女としての力を使う際にも魔力を使用することは魔法でなくともあると思いますので」
「が、頑張る」
才能がないとわかっていて努力するとか正直なところ苦手なんだけど。そんな事は言っていられない状況だと思うし――エミリアの純粋な言葉があたしの心に期待を裏切ってはいけないという気持ちを生み出し始めている。
「では、午後は聖女の力の確認と把握をしてまいりましょう!」
「……といっても何すればいいのかな?」
「これまでの聖女とは似ている能力の伝承もありませんので、ひとつずつ試していくしかありません。ひとまずは先日のお姿になってみましょう。半身程度の大きさですが鏡ももってまいりましたので」
そういうとエミリアは自分のもってきた荷物からいくつかの板を組み合わせて、別の布でくるんでいたものをその板にはめ込んだ。
布でくるまってたのが鏡だったみたいで、上半身を映せる程度の鏡が出来上がった。
あたしもスマホを取り出して準備する。
アプリを起動してマイクボタンを押してワードを言えばいいんだけど……これ、音声認識してくれればいいのかな?
「セイクリッド・ドレスアップ……」
あたしは電話する時のようにして小さく呟いた。
「…………」
「シロナ様? どうかいたしましたか?」
「ちょっと、待ってね」
何も起きなくて気まずい空気が流れた。
スマホの画面を見るともう一度お願いしますの文字だ。
昨日はスマホと口は離れてて本来のスマホであれば叫んだとしても音声認識できるか怪しい距離だったのに……もう少し融通が効いてくれてもよくない?
「セイクリッド・ドレスアップ!!」
あたしは諦めてやけくそ気味にスマホを意味なく天に掲げながら叫んだ。
前と同じくその瞬間光りに包まれて、体感的には数秒後に視界が戻り――少なくともスカートや手のアクセサリーなどが変化していた。
改めてみると、あのアプリのクローゼットに入っていたドレスとおんなじだ。
「シロナ様。鏡はこちらにありますが……自分でご確認しますか?」
「……うん。ちょっと、なんか怖いけど見てみる」
果たしてあたしはどんな姿でこの前戦っていたのか。
そしれこれから戦うたびに、どんな姿で戦うことになるのか。
エミリアが少し持ち上げてあたしの上半身が映るほどの高さにしてくれる鏡の前まで移動する。
鏡の方を向いて思わず目をつむって一旦深呼吸する。
そしてゆっくりと目を開いた。
「…………」
「いかがでしょう。私は可愛いと思いますが」
「か、可愛いけど。自分のことながらたしかに可愛くしてくれてるんだけど」
鏡に写ったのはあのピンクを基調とした衣装を身にまとった少女だった。
ただし、あたしの黒髪はかなりボリュームが増えて少し低めの位置のツインテールのような形でまとめられて腰ぐらいまで伸びていた。
この前は戦いに夢中だったとしても、自分のこの髪に気づかなかったのか。
いや、それはそれとして結構リボンとかクローゼットの時はわからなかった装飾もされてるし、魔法少女とかみたいだ。
そういう作品が好きなあたしからして鏡に映っている人は可愛いと思う――でもそれがあたしだと考えた瞬間に高校生になってこの衣装は少し恥ずかしさがやっぱりある!
「この年齢で恥ずかしいとか思わない?」
「えっと……たしかに少しスカートは短いかも知れませんが、そこまで極端に恥ずかしい格好とは思いませんが」
ファンタジー世界的にはそういう認識なのかな。
それともエミリアの感性か……まあ、ただあくまであたしが勝手に思うだけで、周りからはそんなに恥ずかしい人間だと思われないなら安心じゃないけど良かったと思おう。
あと今回は変身してみて気になるのは、変身中ってどんな風にあたしはこの姿になっているんだろう。
自分の体も見えないくらい視界が真っ白になって次の瞬間には変身してる印象だからわからないのが少し気になる。
「シロナ様。その、気になることが多いのは表情から察せられますが、今確認できることをやりませんか?」
「え? あ、うん。そうだね」
あたしそんなに悩んでたの。
最後に鏡でもう一度自分の姿を確認させてもらってから少し開けた場所へ移動することになった。
自分の髪を少し確認してみたけど、凄い綺麗に変わっているしちゃんと自分の髪だということはわかる。
今言えることは――聖女は複数人いることもあるらしいけど、少なくともあたしは一人だけで召喚されてよかった。
流石に別の場所で聖女が召喚されてても同じ世界からじゃないことを祈ろう。




