初めての戦いー我慢
魔物は何度吹き飛ばしても立ち上がってきた。
攻撃自体はどうにか回避できているんだけど――1つの不安がだんだん強くなってくる。
簡単に言えばあたしの変身ってどのくらいの時間保っていられるの?
1回の変身ごとに制限時間が決まっていたりしたら戦っている最中に突然変身が解除されるかも知れない。
それを確認できそうな方法で唯一思いつくスマホは変身した後はどこにあるかわからないし。
「ていうか、しつこすぎるでしょ!」
それともうひとつは仕方がないとは思うんだけど。
吹き飛ばして城の壁に叩きつける形になってしまっているんだけど、そろそろ城の中にまで影響がでかねない見た目になってきている。
だからといって外に連れて行くにしても土地勘がなさすぎる――安易に空高く城の外に投げ飛ばすのはダメだ。
下手するとこういう城下町のほうに魔物を投げたらどれだけの被害が出るかわかったものじゃないし。
そもそも騎士団がいなくて今戦える人の多くがここに集まっているんじゃ……城下町に偶然いた冒険者みたいな人がいることを願うしかなくなってしまう。
「あーもう、どんだけタフなの。エミリアが言ってたけど……」
愚痴をはきながら魔物の体をよく見ると傷も治ってる気がする。
完治じゃないけど、あたしが変身する前の戦いも含めたら明らかに傷が少ない。
しかも、動きも鈍くなったりしていないから、スタミナ切れを待つのは期待できなさそうなんだよね……。
あたしがそう思っていると、この世界において数少ない聞き覚えのある声がした。
「みなさま、大丈夫ですか!?」
「姫様!? ここは危険です!」
「いえ、黒の魔物への対処は私の仕事のうちです。それに対応できる騎士達の多くも外への対処に出してしまったのは私の判断によるものです」
「そうかもしれませんが、ここは流石に危険です。姫様に――」
その声に反応してか魔物がそちらを向いてしまった。
「まずい……いかせないから!」
あたしは魔物の意識をこちらへと向けるべく高く飛び上がってそのまま頭部めがけて右ストレートを突き入れる。
『グガッ』
流石に生物ではあるのかな。
脳が揺れたのかはわからないけど地面に崩れ落ちる。
そして立ち上がろうとして、足が体重を支えきれずに倒れることを繰り返しはじめた。
あたしはそのままエミリアの元までかけよる。
「エミリア。大丈夫?」
「え? は、はい……そのお声は、もしかしてシロナ様ですか?」
「そうだけど……服は違うかもだけどそんなにわからない?」
「あの……いえ、服といいますか……ひとまず、細かいことはあとにしましょう。シロナ様。そのお力は聖女としてのお力ですよね?」
「た、多分。ただ、さっきから戦ってても全然倒せなくて」
「いえ、シロナ様の聖女としてのお力は効果がでています。ただ、この大きさですと無自覚な攻撃の魔力ではなく大きな魔力で一気に黒の魔力と浄化か相殺しなければトドメにはなりません」
変身しているだけで魔物にあるていど攻撃が効くようになっているのは魔力のおかげなんだ。
だけど、それだけだろ威力が足りない。
いや、でもそれって――。
「ど、どうやればいいんだろう。あたしが動きを止めている隙に別の人がとか?」
「それが、聖女の力以外だと複数人の神官によっての浄化が有効ではあるのですが。現在城に常駐している人数だと……城下町の教会へと支援は求めたのですが」
「そ、そっか」
これから向かってくるんじゃ時間がかかる。
その間あたしが抑え続けられる保証がないとなると、現実的じゃない。
「シロナ様の魔力でどうにかできないでしょうか!?」
「できるならやりたいけど、魔法も魔力も出し方とか使い方とかわからないの!」
「そ、そうですよね……手段を考えます。申し訳有りません、少しの間時間を作っていただけませんか!」
「や、やってみるけど。できれば急いでほしいかな!」
「はい!」
普通だったらまだ立ち上がるにも早いだろうけど、魔物はのっそりと立ち上がって流石にこちらを見てくれた。
これ以上攻撃してもトドメをさせないなら回避に専念したほうがいいのかな。
あたしは倒せないなら倒せないで一旦自分の消耗を減らそうとそう考えた――その矢先だった。
さっきの一時的にでも行動不能にした一撃が原因かわからないけれどスイッチを入れてしまったらしい。
今までと同じように攻撃をかわして特に気をつけるべき爪の振り下ろしを交わした時だった。
目の前の地面に突き刺さった爪の周りの土が浮き上がって襲いかかってきた。
「うそっ!?」
とっさに腕を前に出して頭とかは守ったけれど――やばい。
「いったぁ!?」
初めてまともに食らったといえるけれど痛みはしっかりあった。
いや、これでも抑えられてるのかも知れないけど生きてきた中で味わったことがほとんどない痛さ。
「ぐぅ……折れたりしてないけど」
自分の目ですぐに確認できる腕はひとまず無事というか、血も出てないあたり見るとこの痛みでも結構守られてる気がしてきた。
「あたしこれ以上の戦いとか耐えられるの? いや、だめだめ。気にするから気にしちゃうんだから気にしない!」
何言ってるか自分でも混乱してきた。
ただ、混乱して考えないで済むならそれでいい。
「エミリア、急いでー!」




