第11話:迷宮に降臨した『宝物庫(※ゴンドラ什器)』と、覚醒の秘薬(※エナジードリンク)
セシリアによる『セグウェイ轢き逃げ事件』から数時間後。
プレハブ小屋の平和は保たれていたが、俺には一つ不満があった。
「いくらプレハブ小屋を建てたとはいえ、床に直置きじゃ格好がつかないな……」
俺の『異世界コンビニ・アルト屋』の店内には、カップ麺の段ボールやスナック菓子、その他日用品が床に乱雑に積まれている状態だった。これではコンビニというより、ただの倉庫だ。
俺はウィンドウの『店舗用品』カテゴリーを開き、ついに念願のアイテムをポチった。
【業務用 店舗用ゴンドラ什器5連セット 特価:10,000pt】
数分後、俺が異次元ロッカーから運び込んだパーツを組み立てると、プレハブ小屋の壁沿いに、真っ白で機能的な『陳列棚』がズラリと完成した。
「おお……! 一気に店っぽくなったぞ!」
俺は感動しながら、棚にシーフード味のカップ麺、ガーリックポテチ、FRISK、そしてLED懐中電灯などを綺麗に並べていった。
すると、外で魔物を狩って(八つ当たりして)帰ってきた三人の居候たちが、プレハブのドアを開けて立ち尽くした。
「な、なんだこれは……」
ヴィンセントが、綺麗に整列された商品を見て絶句した。
「ただの床置きから、見事な祭壇へと昇華されている……! アルト、貴様ついにこの白亜の城を、本格的な『神々の宝物庫』として機能させる気か!?」
エレノア(魔女)が目を輝かせながら陳列棚を撫でる。
「美しい……これほど恐ろしい神具や魔薬が、かくも整然と並べられている光景……まるで天界の武器庫です……っ!」
セシリアは胸の前で両手を組み、カップ麺の棚に向かって祈り始めた。
(いや、ただ棚に並べただけなんだけど……)
相変わらずの彼らの大げさな勘違いに苦笑しつつ、俺はついでに冷蔵庫にも新しい『飲み物』を補充することにした。
俺が冷蔵庫から取り出したのは、緑色の三本線の爪痕がデザインされた、黒いアルミ缶だ。
【エナジードリンク 500ml缶 特価:200pt】
「ん? アルト、その禍々しい黒い筒はなんだ? 表面に刻まれたその緑の爪痕……まさか、伝説の『暴風魔竜』の封印シールか?」
ヴィンセントが、エナジードリンクのロゴを見て後ずさった。
「まあそんなとこだ。新しい飲み物だけど、飲むか?」
俺がプルタブを『プシュッ』と開けると、ケミカルで甘ったるい、なんとも言えない独特の香りが漂った。
「こ、これは……コーラとは違う、もっと危険な香りがするぞ……!」
三人は警戒しつつも、コーラで味覚を破壊されているため、誘惑には勝てなかった。俺が紙コップに分けてやると、三人は一斉にそれを飲み干した。
——ゴクリ。
「「「…………ッッッ!!!???」」」
次の瞬間、三人の目に、文字通りバチッ! と雷のような光が走った。
「な、なんだこの暴力的なまでの高揚感は!? 脳の奥底から、無限の活力が湧き上がってくる!」
ヴィンセントのコウモリの翼が、バサァッ!と限界まで広がる。
「疲労が……マッサージガンで解すまでもなく、細胞レベルで強制的に活性化していく……! これなら、三日三晩連続で魔法を撃ち続けても全く疲れる気がしないぞ!」
エレノアが黒剣を振り回し、異常なテンションでプレハブの中を反復横跳びし始めた。
「ああっ……! 凄まじい神の恩寵! 私の聖力が限界を突破して溢れ出しています! 今すぐ迷宮の魔物を全て轢き潰して回れそうです!!」
セシリアがセグウェイのハンドルを握りしめ、荒い息を吐く。
(いや、ただのカフェインと糖分の塊だから! 明日の反動が怖いなこれ……)
徹夜明けの現代人を強制的に覚醒させる『エナジードリンク』。
それは異世界の最強クラスの住人たちにとって、強制的にリミッターを解除する『覚醒の秘薬』に他ならなかった。
こうして、綺麗に陳列棚が並んだ俺の迷宮コンビニは、カフェインでガンギマリになった最強の警備員たちによって、かつてないほど強固に守られることになったのだった。
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