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第10話:暴走する聖女! 神の戦車(※セグウェイ)が魔物を轢き飛ばす件

「それでは、失礼して……」


金髪の聖女——セシリアと名乗った彼女は、恐る恐る電動立ち乗り二輪車セグウェイのステップに両足を乗せた。

その手はハンドルを強く握りしめ、まるで未知の凶悪な魔獣を調教するかのように震えている。


「セシリアさん、力を抜いて。少し体を前に傾けるだけで進むから」


「か、体を前に……こう、ですかっ!?」


セシリアがカチコチに緊張したまま、グンッと前のめりになった。

その瞬間。


『ギュイィィィィィンッ!!!』


「きゃああああぁぁぁぁっ!?」


重心移動のセンサーが過剰に反応し、オフロード仕様のセグウェイは猛烈な勢いで前進を始めた。

セシリアの悲鳴を残し、彼女を乗せた二輪車は弾丸のようなスピードでプレハブ小屋の前から飛び出し、迷宮の暗闇へと消えていった。


「お、おい! ブレーキは体を後ろに反らすんだぞ!」

俺が慌てて叫んだが、もう手遅れだった。


「ほう……あの神の狗、初めてあの【縮地の神輪】に乗ったというのに、もうあれほどの速度を引き出すとは」

エレノアが感心したように腕を組む。


「だが、向かっていった先は……迷宮の第十層でも特に凶悪な魔物が湧く『死霊の谷』の方向だぞ。いくら聖女とはいえ、武器も持たずに突っ込めば無事では済まん」

ヴィンセントがポテトチップスをかじりながら冷静に分析する。


「やばい! 助けに行かないと!」


俺が駆け出そうとした、その時だった。


『ドゴォォォォォォォンッ!!!』


迷宮の奥深くから、爆発のような轟音が響き渡った。

続いて、ガラガラと岩壁が崩れる音と、凶悪な魔物の断末魔のような叫び声が聞こえた。


数分後。

暗闇の向こうから、スーッと滑るようにセグウェイが戻ってきた。

そのステップの上には、涙目で顔を真っ赤にしたセシリアが直立不動で乗っている。だが、その純白の修道服には、なぜか大量の返り血(※魔物の血)が浴びせられていた。


「セ、セシリアさん!? 大丈夫か!? 今すごい音がしたけど!」


俺が駆け寄ると、セシリアは震える足でセグウェイから降り、そのままその場にペタリとへたり込んだ。


「ア、アルト様……この神具は、恐ろしすぎます……っ!」


彼女はぜぇぜぇと息を切らしながら、興奮した様子で語り始めた。


「速度を落とせずパニックになっていたところ、前方に上位魔物である『デス・ナイト』が立ち塞がったのです。しかし、この神の戦車は止まるどころか、自らの意思で加速し……デス・ナイトの硬い霊装甲を、その黒い車輪で物理的に粉砕して轢き殺しました!!」


「「「轢き殺した……!?」」」


(いや、ただパニックになってアクセル全開のまま魔物に突っ込んだだけだろ……)


オフロード用の極太タイヤと、数十キロの金属の塊が時速20キロ以上で突撃したのだ。いくら魔法の世界の魔物とはいえ、物理法則の暴力(交通事故)には勝てなかったらしい。


「一切の魔力消費なしで、上位魔物を轢き潰す絶対的な質量兵器……! アルト様、この『セグウェイ』なる神の戦車は、間違いなく神話の時代に天界で使われていたものですね!」


セシリアは両手を組み、セグウェイに向かって熱心に祈りを捧げ始めた。

その後ろで、魔女と吸血鬼も「あの鉄の塊、そんな殺傷能力があったのか……」と本気でドン引きしている。


「いや、ただの移動用の乗り物なんだけど……」


俺の小さなツッコミは、三人の強者たちの畏敬の念に完全に掻き消されてしまった。

こうして、俺の異世界コンビニの防衛戦力に、なぜか『セグウェイで魔物を轢き逃げする物理特化の聖女』が加わったのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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