第9話:解放された新枠! 縮地の魔導具『セグウェイ』と、戦慄する最強の居候たち
「シークレット・カテゴリー……?」
プレハブ小屋の中で、エレノア(魔女)、ヴィンセント(吸血鬼)、そして聖女(名前はまだ聞いていない)の三人が、黒毛和牛の奪い合いで醜い争いを繰り広げている隙に、俺はウィンドウの隅に現れた新しい項目をタップした。
【シークレット:現代兵器・乗り物】
開いた瞬間、俺は息を呑んだ。
そこには、鉄の塊に大砲がついた車両(※戦車)や、空を飛ぶ巨大な鉄の鳥(※戦闘機)の絵が並んでいたのだ。
ただし、価格は『300,000,000pt』など、今の俺の全財産(450万pt)でも全く手が届かない天文学的な数字だった。
「さすがに大砲は買えないか……。ん?」
リストを下の方へスクロールしていくと、手が届く価格帯の奇妙なアイテムを見つけた。
【電動立ち乗り二輪車(オフロード仕様・迷彩柄) 特価:50,000pt】
古代文字(日本語)は読めないが、絵を見る限り、二つの極太タイヤの間に立つ場所があり、真ん中から持ち手が伸びている。
どうやら、人間がこれに乗って移動する魔法のアイテムらしい。
「よし、迷宮内の移動が劇的に楽になるかもしれない」
俺は即座にポチり、いつものように離れた場所にある異次元ロッカーまで歩いて向かい、実物を受け取った。
ずっしりと重い金属のボディ。俺は恐る恐るスイッチを入れ、両足を乗せてみた。
『ウィィィィン……』
「おおっ!?」
少し体を前に傾けただけで、足元の二輪車が滑るように前進し始めた!
体重移動だけで、前進、後退、旋回が自由自在。しかもオフロード仕様の極太タイヤのおかげで、迷宮のゴツゴツした岩肌も全く揺れることなく、信じられないほどのスピードで滑走できる。
「これはすげえ! 魔法の絨毯みたいだ!」
俺はすっかり楽しくなり、時速20キロほどのスピードで、プレハブ小屋へと爆走して戻った。
一方その頃、プレハブ小屋の前では。
「む? アルジの気配が近づいてくるな」
肉を食い終え、満腹で動けなくなったエレノアが暗闇に目を向けた。
「あの歩くのが遅い人間か……ん? おい、様子がおかしいぞ」
ヴィンセントが目を細める。
「……信じられません。一切の足音も、魔力波紋も感じないのに……異常な速度でこちらに迫ってきます!」
聖女が立ち上がり、純白の杖を構えた。
暗闇の中から、迷彩柄の二輪車に乗った俺が、スーッと滑るように現れた。
両足は完全に揃えられたまま、一歩も歩いていない。ただ直立不動の姿勢で、空間を滑走してきたのだ。
「「「…………!!??」」」
最強の魔女、吸血鬼の王、そして聖教会の聖女。
迷宮第十層に集った異世界最高峰の強者たちが、揃って息を飲んだ。
「あ、歩いていない……!? 足を一切動かさずに、あの速度で迷宮の悪路を走破してきただと!?」
「無詠唱の浮遊魔法……いや、違う! あれは空間そのものを削り取って移動する、伝説の【縮地の法】!!」
「しかも、あの足元にある黒い二つの車輪……信じられないほど複雑な機構でありながら、魔力が一滴も使われていない! まさか、神の御業で作られた絶対神具……!」
俺はプレハブの前でピタリと止まり、セグウェイからひょいっと降りた。
「ふぅ、これめっちゃ便利だな。ちょっとそこまで買い物に行くのに最高だ」
「「「買い物(※迷宮最深部での魔物狩り)に、だと……!?」」」
三人は完全に震え上がっていた。
彼らの中で、『得体の知れない強力なアーティファクトを無尽蔵に出す謎の術師』だった俺の評価は、『空間すら己の足とし、神具をサンダルのように履きこなす絶対領域の支配者』へと、勝手にカンストを超えて限界突破してしまったらしい。
「アルト様……」
聖女が、もはや神を見るような目で俺を見上げて両手を組んだ。
「その【縮地の神輪】……私にも、一度だけ乗せていただくことは可能でしょうか……?」
「いいけど、バランス崩すと転ぶから気をつけてな」
俺の異世界コンビニに、ついに『最新の移動手段』が導入された瞬間だった。
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