2話 ズルは出来ないんだな
依頼を受ける為に教室を出てから数分後。
タマ達は教員室の前にある受付のある広場へとやって来た。すでに依頼を受けた人が多いのかこの場には人はそこまで多くはなかった。もちろん全くいないという訳ではなく程々といった様子ではある。
周囲を見回すと教員室の近くには大きな掲示板があり、そこには大量の依頼と思わしき紙で埋まっていた。
「なぁ。洋子さんや」
「ん。なに?」
タマは洋子に声を掛ける。タマは少し表情を引きつらせながら言った。
「あの中から依頼を探すのか?」
「探さない。あれは達成済の依頼を紙にして貼ってるらしい」
「なんで達成済みの依頼の紙を貼ってるんだ?」
「眼に見える形にする事で達成感を得られるからだって昔に校長先生から聞いた」
タマの疑問に洋子は答える。タマは目の前の掲示板を見ながら言った。
「へぇ。確かにこの中に自分が達成した分が入ってるってなると貢献したって感じがするかも。じゃあ。依頼はどうやって探すんだ?」
「依頼は生徒用の専用のサイトがあるからそこから依頼を受ける」
「……それだったら教室でも依頼受けれたんじゃないか?」
洋子の言葉にタマは思った事を口にする。洋子はそれを否定する形で頭を横に振った。
「それは出来ない。サイトに入るための専用の回線と入った時の端末の位置情報も参照してるからここじゃないと探せないようになってる」
「ズルは出来ないんだな」
タマがそう言うとしっくり来たのか洋子はタマの言葉をオウムのように口ずさんだ。
「そう。タマの言う通りにズルは出来ない。その代わりに教員室周辺は広めに作られてるし、予約すれば個室もあるからそこまで不便は感じないようになってる。依頼の受注はサイトからも出来るけど、教員室前の受付でもできる。逆に報告は受付じゃないと出来ないから注意が必要」
「へぇ。そんな感じなんだな」
「ん。昨日の内に調べた」
洋子はえっへんと胸を張りながら答える。色々とたずねていたタマとは裏腹に周囲を見ていたリラが2人に向かって口を開いた。
「洋子お姉様。タマちゃん。あそこの方とかどうですか?」
リラは受付周辺で空いたスペースを指す。そこには4~5人が居座れそうなスペースがあった。
「ん。リラ。ナイス」
「そうだな。早速行こう」
洋子とタマはリラを引き連れて彼女の見つけたスペースへと移動する。幸いなことに人は多くなく、すんなりとリラの見つけた場所へとたどり着いた。
「到着。と。依頼探そうぜ」
「ん。いくつかピックアップしてる」
「どんな感じの依頼があるのでしょうか?」
早速と言わんばかりに洋子は予め準備していたタブレットの画面を見せる。そこには受領済みと書かれた画面の並んだ依頼の列であった。
「……ほとんどないな」
「ありませんね」
「ん。基本早い者勝ちだから仕方ない」
想定はしていたのか特に悲観することなく洋子は答える。洋子のタブレットの画面を動かしながらタマは言った。
「残ってるのは……九十九士役所の掃除や猫探しとか店員のヘルプ?……それに資料整理とかか。それ以外の九十九士らしそうなのはここからかなり遠い場所の依頼がほとんどみたいだな。というか意外と依頼は多いんだな。普通にバイトとかお手伝いみたいなのも依頼にあるし」
「ん。九十九士はツクモ神の対処は当然するけど、同じくらい社会貢献のための依頼も多くある。ツクモ神の力を借りる事が出来るならより早く解決できる可能性もあるから依頼は多い。だから、選ばなければ依頼がないみたいなのは滅多にない」
「そっか。それで依頼は何にする?」
洋子の説明を参考にしながらタマは受ける依頼についてたずねる。最初に答えたのは洋子であった。
「ん。私は特に決めてない。今日はタマとリラに任せる」
「今日は様子見ですから私としてはなるべく簡単な依頼がいいですね」
洋子とリラがそう言うとタマは残っている依頼を見て行く。見ながらも特に興味をわくような依頼は見つからないのか微妙な反応を見せた。
「うーん……そう言われても全然ピンとこないんだよな」
「ん。分かる。依頼をいざ選ぼうとすると食指が働かない時はある」
「私は純粋に色々な依頼があり過ぎて選べません」
「それなら適当にスワイプして止まった依頼を受けるか」
タマはこのままだと決まらないと踏んだのか決定方法を決める。それに洋子はうなずいた。
「選ぶのはそれでもかまわない。ただ、明らかに地雷そうな依頼だけは私が弾くけどいい?」
「もちろんそうしてくれ。俺だって無理な依頼は受けたくないからな。パンドラ。ストップの合図を頼む」
「承知したのですよ」
タマは洋子の言葉にうなずくと同時に肩に居るパンドラに指示を出す。タマはタブレットの画面を擦る準備をするとパンドラはタイミングを見てから言った。
「今なのです」
「おう」
タマはページをスワイプとページの移動を始める。しばらくするとパンドラは答えた。
「ストップ。ここなのです」
「っ!?」
パンドラの指示に合わせてスワイプを止める。そのまま画面を覆うようにタマが画面を覆うとその光景に少しワクワクした様子で洋子がたずねた。
「ん。何の依頼が出た?」
「楽しみです」
「じゃあ……行くぞ」
タマはそう言うと画面を遮った手をタブレットから離す。そこには『ネコの捜索』の依頼があった。
依頼探しのお話。




