3話 依頼を受けに来ました
学園を出てから歩く事十数分。
洋子の案内で依頼主の居る住宅街の一軒家へとおとずれていた。
「ここが依頼主の家」
「普通の家だな」
「ですね」
タマの家とそんなに変わらない一軒家にタマとパンドラがつぶやく。
「ん。依頼は一般の人からも受け付けているから当然。失礼がないようにね」
「タマ。気を付けるんですよ」
「そうだな。って!? パンドラもだからなっ!?」
パンドラの忠告にタマはうなずきながら言い返す。パンドラは自信満々といった様子で答えた。
「ふふん。私はタマにくっついていればいいだけなのですよ。頑張るのはタマだけなのです」
「あ。ズルい。黙ってるつもりだったな」
考えを聞いたタマは羨ましそうな表情でパンドラを見る。パンドラは勝ち誇った表情で答えた。
「賢いといってください。私はタマ達の活動の邪魔をする気はないのですから」
「むむむっ」
パンドラの言葉にタマはうなる。それに洋子は呆れた雰囲気で答えた。
「ん。2人共落ち着く。依頼にいくよ?」
「「はーい」」
洋子の一言にタマとパンドラはすぐに言い合いを止める。それを見ていたリラは困惑した様子でつぶやいた。
「き、切り替え早いですね」
「ん。2人共ただのじゃれ合いだから気にしなくてもいい。行こう」
「だな。パンドラは大人しくしててくれよ」
「何もされなければ大人しくしてますよ」
「はっはいっ! 行きましょう」
洋子の言葉にタマ達は返事をする。それを聞いた洋子は家のインターホンを鳴らした。
『はいはーい。どちら様ですか?』
しばらくするとインターホンから家主と思われる歳のいった女性の声が聞こえる。洋子が代表して口を開いた。
「九十九士学園の葛葉と申します。九十九士の依頼の確認にやってまいりました」
洋子はそう言うと学生証を見せる。インターホンのカメラ越しで確認が取れたのかインターホンから声が返って来た。
『あらあら。ご丁寧にどうも。今行きますね』
そう言うとインターホンが途切れる音がする。少しすると玄関の扉が開いた。玄関からは美魔女という言葉がしっくりくる齢の女性が出て来た。
「いらっしゃい。外だと話し辛いから中に入ってちょうだい」
家主の女性がタマ達を招き入れる。タマ達は連れられてゆっくりと家の中に入った。全員が中に入って扉が閉まるのを確認すると女性は言った。
「こんばんは。貴女達が私の家族のネコちゃんを探してくれるのね」
「はい。学園の方から依頼を受けに来ました。改めて葛葉と申します。2人も」
洋子は淡々としながらも淀みない口調で自己紹介をしてからタマ達に促す。2人は慌てて名乗った。
「あ。そうか。依頼を受けに来ました。環です」
「水野です。よろしくお願いしましゅ」
「ふふっ。可愛らしい学生さん達ね」
「まだ入学したてなので寛大な心で見てやってください」
「ええ。もちろんよ。私は山根 大河と申します。今回はよろしくお願いしますね」
微笑ましいと言った様子で依頼主の山根が自己紹介する。お互いに名乗り合うと洋子が話を切り出した。
「それでは早速ですが、依頼について聞きに来ました。ネコを探すという事ですが、どんなネコなのか分かる写真とかありませんか?」
「ええ。それについては依頼を出した時に言われているから用意しているわ」
洋子の言葉に山根は返事をすると懐から写真を取り出す。写真には2本の尻尾の茶トラが映っていた。
「わぁ。可愛いですね」
「あれ?尻尾が2本ある?」
タマは思った事を口にする。言われることは予想していたのか山根は穏やかな声で答えた。
「ええ。この子は猫又なの。私が子供の頃から一緒に居てくれてるの」
「ん。補足すると年老いた動物が妖怪や神様といったツクモ神に変化することもある」
「へぇ。そんな事があるんだな」
洋子の説明にタマは感心する。洋子は説明を続けた。
「そこそこ珍しい事例。普通の動物がツクモ神になるには余程の資質が必要だから稀。だから、協会の方でも飼っていた動物がツクモ神化した時には登録が必須」
「そうなのか。あれ? 動物がツクモ神になるなら人もツクモ神になる事があるのか?」
タマは疑問を口にする。洋子は真剣な声でその疑問に答えた。
「ある。今の人型のツクモ神がそれらの子孫にあたる。ただ、そうなる可能性はこの星が突然の隕石で滅びるよりも低い確率。じゃなかったらここまで話が残っていない訳がない」
「そうだよな。っと。話が逸れてた」
「ん。脱線したのは良くないけど、依頼の事を思い出せたのは偉い。山根さん。猫又のお名前はなんですか?」
「この子の名前は茶トラから取ってトラちゃんよ。トラちゃんは最近猫又になったばかりだからまだ喋れないわ。実は先週くらいから家に帰って来てないの。いつものお散歩で出て行ったきりなのよ。ご近所さんや役所の人にもお願いして探してもらったけど、全然見つからなくて役所の人から九十九士にお願いした方が良いって言われて依頼したの」
山根は事情を説明する。それに洋子はうなずいた。
「なるほど。それだったら役に立てるかもしれません。それなりにトラさんのお気に入りのオモチャないしは毛とかはありませんか? トラさんと縁のあるものなら何でも構いません」
「それは必要なのかしら?」
「はい。それを元にトラさんの痕跡を追跡する為に必要です」
山根の問いかけに洋子はゆっくりとうなずく。洋子の説明を聞いた山根は立ち上がった。
「そうなのね。それなら少し待ってちょうだい。トラちゃんの毛ならブラシに残っているかも」
「お願いします」
洋子がそう言うと山根は奥へと消える。しばらくするとブラシを持ってきた。
「お待たせしました。これはトラちゃんのお気に入りのブラシよ。ブラッシングが好きなのかいなくなった日の直前もおねだりされてしたわ。これに着いている毛でどうかしら?」
「大丈夫です。ありがとうございます」
「いいえ。それでトラちゃんが見つかるなら問題ないわ」
「それでは失礼しますね」
洋子はそう言うとブラシから猫の毛とわかるオレンジ色っぽい毛を数本回収する。回収した毛を容器に入れる。
数本だけの毛が入った容器を見て山根はたずねた。
「それだけでいいの?」
「はい。ツクモ神としての情報から痕跡を追うので量は少なくて大丈夫です」
「そうなのね。九十九士ってそういう事も出来るのね」
「はい。それでは一旦探してみますね」
「ええ。よろしくお願いしますね」
「はい。タマ。リラ。行くよ」
そう言うと洋子が指示を出す。タマ達は依頼主の山根の家を後にした。
初依頼の内容についてたずねるお話。
次回は本格的に猫又のトラの捜索と追跡の予定です。
ここまで読んで下さりありがとうございました。次回もお楽しみに。




