1話 依頼って今日からだっけ?
「タマ。依頼に行こう」
巨人エピメテウスとの戦いのための支援物資の運搬の指名依頼から数週間が経った頃。様々な授業にも慣れて来て4月の終わりが近づきゴールデンウィークが目前と言ったタイミングの放課後。
黒髪の大人びた魅力のある少女が金髪のちびっ子と共に居るツクモ神に言った。
「誰がちびっ子だ」
地の文のちびっ子という言葉に金髪の美少女兼我らが主人公である環 タマは反応する。その反応に対してタマの相棒でもあるツクモ神のパンドラと大人びた少女雰囲気を持つ言いだしっぺ兼友人の葛葉 洋子がたずねた。
「どうしたのですか? タマ?」
「ん。パンドラの言う通り。いきなりどうしたの? タマ?」
2人の問いかけにタマは口を開いた。
「いや。すまん。パンドラと洋子にじゃないよ。なんかどこからか不名誉な事を言われた気がしたんだよ」
「そう。不思議な電波を受信した。と。タマは不思議ちゃん属性も手に入れるつもりなの?」
「そんな属性持ってないし、いらないよ。ところで依頼って今日からだっけか?」
「ん。1年は今日から。指名依頼が特別だっただけ」
タマの問いに洋子は肯定しながらうなずく。2人の話を聞いていたのか少し離れた席から声がした。
「依頼ですか? それなら私も一緒に受けたいです。タマちゃん。洋子お姉様」
話に入って来たのはタマのクラスメイト兼友人の水原 リラであった。リラの言葉にタマ達は反応した。
「リラもか?」
「ん。一緒に受けるのは歓迎。タマは?」
「俺も別に問題ないぞ」
「ありがとうございます。それでは話に混ざりますね」
少し離れていたリラはタマの席を中心に集まる。タマは依頼について洋子にたずねた。
「そういえば依頼って複数人で受けてもいいのか?」
「ん。基本的には問題ない」
「複数人とかで挑んでいいんだ」
疑問に洋子が答えるとタマは意外そうな顔でつぶやく。それに洋子は説明を付け加えた。
「ん。九十九士は基本的にツクモ神の起こした問題を解決することにある。迷子のツクモ神探しや群れの対処とかが多いから1人でするのは面倒が多い。だから複数人推奨」
「依頼ってそんな感じが多いのか?」
「多いよ。ツクモ神に関する依頼は多種多様。基本的に何でもありだから九十九士はツクモ神関係のなんでも屋になる」
「へぇー。そんな感じなんだな。何となくわかった。ありがとう」
タマは洋子の説明にとりあえず納得する。
「ん。お礼を言われると説明した甲斐があったって気になる。補足すると1人で受けても何も問題ない。1人で受ければ報酬とか単位を独り占めできる」
「そうなんだ。まぁ今回は呼ばれたから一緒に受けるし、時間があれば1人でも受けてみるか」
「タマ。私もいるのですよ」
タマのつぶやきに机に座っているパンドラが反応する。それにタマは優しい声で答えた。
「そうだったな。パンドラも一緒にだったな」
「そうなのですよ。なんたってタマは私のダンボールの戦士なのですから」
パンドラは満足そうに答える。それを見ていた洋子はタイミングを見てから言った。
「ん。という訳で一緒に依頼を受けよう。割のいい依頼はもうないかもだけど、今回は受ける事に意味がある」
「そうだな。リラもそれでいいか?」
「はい。初めての依頼。実は少しワクワクしてます」
「そうなのか? あれ? 確かリラの家もお勤めとかあるんじゃないのか?」
タマは頭を傾げる。
「ありますよ。ただ、私自身がお勤めを始まるのは20歳の成人式を超えてからなんです。なので依頼をするのは初めてなんです」
「なるほど。そういった理由があったんだな」
リラの説明にタマは納得する。
「はい。なので卒業するまでに九十九士としてのお仕事でお勤めにも活かせるように頑張るのです」
「そうか。それなら洋子はなんで小さい頃からお勤めをしてるんだ?」
「ん。私の所は玉藻との相性が関係してる。玉藻との相性で家の跡取りが決まる」
「それって家系と関係あるのか?」
洋子の説明にタマは頭を傾げる。洋子はゆっくりとうなずいた。
「ん。玉藻を憑依させるには血縁が必要」
「えっと……つまり玉藻の子孫って事か?」
「そう。私の祖先に玉藻がいるから私にも玉藻の血が流れてる。だから私の一族は玉藻を筆頭に御狐様を憑依させて力を引き出すことができる。その御狐様の中でも力の強い人が玉藻を憑依させてその家の跡継ぎになるのが私の家」
タマの言葉に洋子はうなずく。それにタマは新たな疑問が頭に浮かんだ。
「あれ? それなら玉藻の子供って俺と同じ半分ツクモ神なのか?」
『それは違うのぞ』
そんな疑問に答えたのは洋子のツクモ神である玉藻であった。玉藻は洋子の中からすり抜けるように半透明の霊体で出てくると言葉を続けた。
『私も人と交わって子を成したが、その時の種族は人間じゃったぞ。力や資質は私の方を継いだが、お主みたいに完全に人とツクモ神が混ざり合った状態ではないぞ。それがどうかしたのか?』
「いや。もしも同じような存在だったら何かいい感じに戻れる方法が見つかるかなって思ったけど、そんなに甘くないか」
タマは少しだけ落胆する。それに玉藻は真面目な空気のまま答えた。
『そうじゃな。仮に我が子がお主と同じ状態であっても別に害がある訳ではないから基本は放っておいたじゃろうしな。素直に精進しながら探すが良い』
「ああ。そうさせて貰うよ。教えてくれてありがとう」
タマが礼を言うと玉藻は軽く手を振ってから洋子の中に帰る。それを見送った後に洋子は言葉を続けた。
「そんな訳で今玉藻の憑依を実現させてる私が跡継ぎ。玉藻の知識と経験を引き継いでるからこそ国に災禍をもたらすようなツクモ神を祓ったり狩ったりするのが私の家のお勤め。年齢は関係ない」
「そうなんだな。ん? それなら忙しいんじゃないのか?」
洋子の言葉にタマは思った事を口にする。
「お勤めは不定期。国が特に危険と判断した場合や他の手が回らない場合だけ私が出るから余程の事態がなければそこまで忙しくならない。だから、余裕がある内に成長するための鍛錬と刺激を得る必要がある。それと感覚を鈍らせないようにいろんな仕事に触れる事も大事」
「そっか。それで依頼について声を掛けたんだな」
「そういう事」
タマの言葉に洋子が肯定する。
「だから2人共。まずは依頼を探しに行こう?」
「ああ。行こうか」
「はい」
洋子の言葉にタマとリラは返事をすると立ち上がる。
3人は学園の依頼を受ける為に自身の相棒であるツクモ神達を連れて依頼を張り出している教員室の方へと向かって移動を始めた。
指名依頼を除いた最初の依頼を探しに行くまでのお話。




