プロローグ
とある世界の居城の一室。
そこでは部屋の片隅には美女としか言いようのない金髪の女性が真剣な表情で水晶の玉を眺めていた。水晶の玉には様々な景色や人物が変わっていく。
しばらくすると美女は口を開いた。
「全く……どこに居るのかしら? パンドラちゃん」
美女はパンドラの名をつぶやく。水晶にはどこかの景色が映し出されるが、目的のパンドラの姿はなく、短いテンポで何度も切り替えては「違う」とつぶやいては景色を切り替えていく。
それからしばらくするとパンドラが映し出された。
「見つけたわ」
美女は嬉しそうにつぶやく。
水晶に映ったのはパンドラとパンドラそっくりの人物が木の枝の上で二又の猫を相手に猫のように四つん這いになって相対している光景であった。
その光景に美女は困惑した。
「何をしてるのかしら? スマホは無事に買えたと先回りして用意した私のスマホに連絡があったし、眷属を新しく迎えたと言っていたけど、場所については教えてくれなかったのよね。途中で何かあったのかしら?」
訳の分からない光景に美女は困惑しながらもその光景を見続けながら言葉を続けた。
「ま、まぁいいわ。詳しい場所は分かったわ。それにパンドラちゃんそっくりで可愛らしい子はパンドラちゃんの眷属ね。本当にそっくりねぇ」
目的の神物を見つけた美女はそう呟きながら一旦思考を切り替えて立ち上がる。美女は手元にあるベルを鳴らすと部屋の奥からメイド服を着た女性が入って来た。
「お呼びでしょうか? 奥様」
「出かけるわ。場所は日本。旅支度の準備を」
「かしこまりました。準備いたします。護衛は?」
「お忍びだから少ない方が良いわね」
メイドの問いに美女は答える。メイドはさらにたずねた。
「承知しました。旦那様には?」
「言わないわ。他所の世界に行けるのを知ったら見境なく人や神に手を出すわ。そっちの方が最悪よ」
「それはそうですね。黙っておきましょう」
「それと私がいない間は浮気相手が増えないように監視を強めてちょうだい。私の眼がないと分かったらすぐに行動に移すでしょうから」
「承知しました」
メイドはそう言うと主である美女に軽くお辞儀をすると消える。少しするとメイドは鞄を持って戻って来た。
「準備が完了しました。日本の国の貨幣と道具一式。変装用の衣装でございます」
「ありがとう。いつも早くて助かるわ」
「それと護衛も連れてきました」
メイドはそう言うと自身よりも2回り程小さいメイドが緊張した様子でお辞儀をした。
「おっ奥様の身辺をお守りします。護衛型メイドゴーレム107号です」
「あらぁ。いい感じの可愛らしい子じゃない。107……いおなちゃんね」
長身の美女はゴーレムを名乗る小さいメイドを見て上機嫌に答える。それに107号は笑顔になった。
「いおな……いおな。はい。いおなです。よろしくお願いします。奥様」
「よろしくね。いおなちゃん」
美女はいおなにそういうと連れて来たメイドはため息をついた。
「はぁ。奥様。メイドにあまりそういう態度はしないでくださいませ。この世界の女王でもあるのですから」
「公式の場ではないのだからいいじゃない。それにかわいい子を愛でるのは趣味と実益を兼ねているわ。私はかわいい子を愛でて癒されるし、夫よりも私を優先してくれるかわいい子を見た夫の悔しがる姿も見れるのですからお得でしょ? だから、私が愛でるのは当然の事よ」
「……そうでしたね。その毒牙に私も引っかかった口ですから私も迂闊でした。ただ、その趣味は旦那様の浮気性といい勝負だと思いますよ? 奥様」
「そうね。でも、先にしでかしたのはあっちよ。それなら私も好きにするわよ」
「そうですか」
メイドは少し呆れた様子を見せながらもこれ以上は深入りするのは危険だと察知して話を切り上げようとした。
しかし、美女の方は妖艶な笑みを浮かべてメイドの目の前に移動する。そのまま首筋から優しく指先を這わせて顎の下まで持ってくると顎を軽く持ち上げてから言った。
「それに愛しているのは本当よ」
そういうと美女へメイドにキスをする。突然の出来事にメイドは硬直し、それを見ていたいおなが「はわわっ!?」を顔を真っ赤にして慌てた。
「ふふっ。その反応。かわいいわね」
「おっ奥様っ!? 今は業務中ですので後にしてくださいっ!?」
「そう。終わった後ならいいのね」
「っ!? しっ失礼します。いおな。奥様を任せましたよっ!?」
そういうとメイドは逃げるように部屋から出て行った。それを見た美女は怪しい笑みを浮かべた。
「ふふっ。素直じゃないんだから」
「奥様。大胆です」
いおなは主である美女に対して思った事を口にする。
美女がいおなの方を向くとさすがに言うべき内容ではないと気がついたのかすぐに口を両手でふさいだ。
「あらあら。そういえばいおなちゃんもいたわね。いおなちゃんには少し早かったかしら」
「いっいえっ!? 私の事はお気になさらずにっ!? メイド長とのお時間をお楽しみくださいですっ!?」
「ふふっ。慣れたら貴女も一緒に楽しませてあげるわ。楽しみにしててね」
「はっはい」
どんなことを去れるのか全く想像の付かないと言った様子でいおなは返事をする。それを聞いた美女は満足そうに伸びをした。
「んぅっ。さてと。そろそろ娘のパンドラちゃんに会いに行きましょうか。ついでにパンドラちゃんの眷属ちゃんの味も調べておきたいしね」
そういうと美女はぺろりと舌なめずりする。それは肉食獣が獲物をみつけた様な表情であった。
という訳で新章のプロローグ。バレバレですがとある神物のお話から。ある程度の神話は参考にしていますが、大部分で立ち位置や関係は異なっています事だけはご了承ください。




