エピローグ
エピメテウスとの戦いから数日後。
タマとパンドラは洋子に連れられて宴を開催するホテルの会場へとやって来ていた。
「ここが宴の会場か。ホントにこんな所を使っても大丈夫なのか?」
「タマ。広いのですよ。お祭りなのですよ。色んな料理が机にありますよっ!」
受付を済ませたタマとパンドラは廊下から見える宴の会場にそれぞれ思った事を口にする。パンドラの反応を聞いたタマは少し羨ましそうに言った。
「パンドラは緊張してないんだな」
「英気を養うための宴でなんで緊張するのですか?」
「えっと……ほら。いかにも高級そうな場所だろ。マナーとか必要かもしれないだろ。そう思ったら緊張する」
「ははっ。タマは心配性ですね。マナーが必要だったらヨウコがあらかじめ言ってるはずですよ。ね? ヨウコ」
「そっそうだよな。大丈夫だよな?」
パンドラの言葉に少し心配しながら洋子を見る。洋子は変わらない表情のまま思い出したようにつぶやいた。
「あ」
「待ってください。その反応は急に不安になってきたのです。大丈夫……大丈夫ですよね?」
忘れていたと言わんばかりの短い言葉にパンドラは急に不安になる。洋子は特に表情を変える事なく答えた。
「ん。冗談。大丈夫だよ。ビュッフェ形式だけど格式ばったマナーは無いようおじさまが配慮してくれてる。しかも食べ放題」
「心臓に悪い。それなら大丈夫なのか? いや。ビュッフェってなんだ?」
洋子の言葉を聞いて少しだけ安心するとタマは疑問に思った事を口にする。洋子は少し考えてから答えた。
「立食。お皿を持って食べたい料理の場所へ行って食べる形式。バイキングの方がタマにはなじみ深いかも。日本限定だけど」
「バイキングなら分かる」
洋子の説明に何となくタマは理解する。
「ヨウコ。そのビュッフェ形式とやらはルールはあるのです?」
「ん。料理を取りに行くときは時計回りに巡って行く事と食べれる量を取る事だけ。あ。後は取った料理は全部食べる事くらい」
「なるほど。それならタマについて行って欲しい物を要求するのです」
「えぇ。自分では運ばないのかよ。別にいいけどさ」
文句を言いながらもパンドラの要望にタマはうなずく。パンドラは満足そうに言った。
「タマならそう言ってくれると思ってましたよ。ささ。早く選びましょう」
「ん。料理を選ぶのはちょっと待って。まずは席に行く。ドリンクとか置いてる」
「そうなのですか。それなら先に席に行くのですよ」
「すまん。案内を頼む」
「ん。任された。こっち」
洋子はそう言うとタマを引っ張って会場へと入る。周囲を見渡してから席へたどり着くと会場のステージには太陽が居た。太陽は準備を終えたのかマイクを持って会場の方へ移動した。
「ん。おじさまがもうステージに居る」
「丁度のタイミングだった?」
「みたい。始まる」
洋子がそう言うと太陽が口を開いた。
『あー。聞こえるか?』
マイクを使った声が会場内に響く。太陽の声に会場の視線がステージに集まる。
『時間だから喋らせてもらうぞ。せっかくの宴だ。まどろっこしい事はなしだ。事件の解決を祝って乾杯っ!』
太陽の掛け声と共にグラスを持った参加者がグラスを掲げる。タマは机の上に合ったドリンクの入ったグラスを同じように持ち上げた。
「か、乾杯」
「ん。乾杯」
タマの動作に合わせるように洋子がグラス同士を優しくぶつける。無事に乾杯を終えると洋子は言った。
「音頭には間に合ったから後は自由時間。好きに飲んで食べておしゃべりして満足したら自由に解散が流れ」
「そっか。教えてくれてありがとう」
「ん。誘ったのは私だから」
「それにしても演説短かったな」
タマは疑問を口にする。それに洋子は答えた。
「ん。人によるよ。おじさま。まどろっこしい事嫌いだから」
「あぁ。音頭からしてそんな感じの言葉だったな」
「そう。いつもこんな感じだから適当でも大丈夫」
「いつもなのか」
「いつもなのですか」
「そう。参加する分には楽だからタマを誘いやすかった」
「そうなのかぁ」
洋子の説明にタマは色んな意味で納得する。そんな感じのやり取りをしていると見覚えのある人影が視界の端に映った。
人影の方を見るとそこには紅蓮と蘆屋が居た。
「あ。紅蓮と蘆屋さんとアンナさん」
「おう。環さんと葛葉師匠も来たのか」
「こんばんは。葛葉様。環さん」
「ごきげんよう。タマと友人達」
紅蓮と蘆屋、蘆屋のツクモ神のアンナが挨拶する。それにタマは挨拶を返した。
「っと。こんばんは。そういえば会わなかったけど。2人も巨人の動向を調べてくれてたんだっけ」
「おう。そうだぜ。つっても占いが得意なのは大輔だから俺は付き添いだけどな」
「いや。紅蓮が居てくれるだけでも助かるよ。アンナさんが居てくれるから絶対に大丈夫なのは分かっているけど、安心して集中できる環境は大事だよ。そう言ったコンディションが占いの精度に直結するんだから」
「お、おう。そうか」
蘆屋の言葉に照れたのか紅蓮は言葉を詰まらせる。それを微笑ましそうに洋子は見てから言った。
「ん。2人共元気そうで安心した」
「いえいえ。お2人の方こそ巨人と直接相対したと聞いてましたから心配でしたよ。大きな怪我とかなくて何よりです」
「そうだな。入学した直後に大けがで入院とかになってたら目覚め最悪すぎるしな」
「そう。心配してくれてありがとう」
洋子が微笑んで答えると紅蓮は顔を逸らしながら答えた。
「おう。師匠も環さんも楽しんでいってくれよ」
「珍しく照れてるね」
「うるせぇ。大輔も美味いもん探しに行くぞ」
「おっと。2人も楽しんで言ってね」
照れ隠しに紅蓮は芦屋を連れて離れていく。2人を見送った後に洋子はタマを見てから言った。
「ん。タマも行こう」
「おう」
洋子は手を差し出す。誘われたタマは洋子の手をとると後日食べ過ぎで苦しむことになるまで宴の時間を楽しむのであった。
という訳ですごく強引ですが、エピローグです。




