40話 宴?
「俺は……これからどうすればいいんだ」
プロメテウスに置いて行かれたエピメテウスは呆然とした表情でつぶやく。それを見ていたパンドラがタマの頭の上からエピメテウスの方へ飛んだ。
「げ、元気出すのです。しばらくしたら迎えに来るって言っていたのですよ」
「慰めてくれるのか? こんなみすぼらしい姿になったのにか?」
声を掛けられるとは思ってなかったのかエピメテウスは意外そうな表情でたずねる。それにパンドラは明るい笑顔で答えた。
「別に体の大きさで何もかもは決めてないのです。それと一応ここは人間の世界なのです。巨人の基準で全てを計るのは野暮という奴なのですよ」
「……それもそうか。パンドラ殿の言う通り兄貴はしばらくしたら迎えに来ると言っていた。それならばこの世界を満喫する方がいいな。パンドラ殿……いや。この世界で先に過ごしているのだからそれは失礼か。パンドラ先輩っ!」
「先輩っ!?」
思ってもみなかった言葉が出て来たことにパンドラが慌てる。
「俺にこの世界の事を教えてくれ……ださい」
「しょ、しょうがないですね。とはいっても私も最近ここに来たばかりなので教えられることは多くないですよ?」
エピメテウスの言葉にパンドラはまんざらでもないと言った様子で答える。エピメテウスは言葉を続けた。
「同じ世界から来た先達なのには変わりないから問題ない。俺はこれから何をすればいいんだ?」
「え……えーと」
エピメテウスは大型犬のような澄んだ目でパンドラを見る。純粋なまなざしに耐えられなくなったのかパンドラは視線を泳がせてからタマに助けを求めた。
「タマッ!? どうすればいいのでしょうか!?」
「俺に聞くのっ!?」
唐突に名指しされたタマが慌てる。それにエピメテウスは感嘆した。
「なるほど。確かに現地の者に聞くのが一番いいな。それにパンドラ先輩の眷属ならば妙案もあるかもしれない」
「いやいやいやっ!? いきなり聞かれてもこっちが困るわっ!?」
あまりの無茶振りにタマが悲鳴を上げる。流石に無茶振りが過ぎたと思ったのかエピメテウスはあっさりと頭を下げた。
「むぅ。すまない。無茶が過ぎたようだ」
「わ、分かってくれるならそれでいいんだ。それよりも聞き返す形になっちゃうけど、エピメテウスはどうしたいんだ? まずはエピメテウス自身がやりたい事が分からないとダメだろ」
タマはたずねる。エピメテウスは少し考えてから要望を口にした。
「俺のやりたい事か? 確かに俺のやりたいことを先に決めてなかったか。だが、小難しい事を考えるのは性に合わん。とりあえずここでしばらく生活をしなければならないから働ける場所と最低限の先立つモノが欲しい所だな。後は戦えるとより良いな」
「なるほどな。それなら俺の所に来ないか?」
エピメテウスの話に反応したのは太陽であった。太陽の提案にエピメテウス返事を下。
「む。太陽殿の所か?」
「おう。俺の事務所の方に所属してもらいたい」
「戦いはあるか?」
エピメテウスは気になる事をたずねる。それに太陽はうなずいた。
「あるぞ。ツクモ神案件の仕事には危険なツクモ神の討伐もあるからな。お前さんみたいな強者が力を貸してくれるなら心強い。歓迎するぞ。もちろん給料も出る」
「それはいいな。分かった。俺にできる事なら協力しよう。まず俺は何をすればいい?」
太陽の提案にエピメテウスは即決する。太陽は少し困惑した様子でたずねた。
「話が早くて助かるが、いいのか?」
「おう。俺が出来る事といったら基本的に戦う事だからな。問題ないぞ」
「そうか。エピメテウス。少し手間かもしれんが、まずは手続きからだ。一時的な逗留という形で戸籍などを用意するから後で必要な内容を聞かれたら答えてくれ。記入はこちらでするから」
「……必要なのはわからんでもないが、めんどうだな。省略する方法とかないのか?」
太陽の言葉にエピメテウスは眉間にしわを寄せる。それをなだめるように太陽は言葉を続けた。
「色々と手順を省略した分が用意した書類だ。国の補償や間違って討伐されないようにするためには必要なんだ。分からなかったら分からんで答えてくれたらいいが、なるべく素直に答えてくれ」
「そうか。分かった。書類は?」
太陽の説明に納得すると記入する書類についてたずねる。太陽は答えた。
「おう。書類はこれから準備するから少し待ってくれ。茜」
「書類の準備をしてきます」
太陽は茜に指示を出す。茜はそのまま書類を取りに姿を消した。
「エピメテウス。手続きに関しては茜が帰ってきてから開始だ」
「おう。分かった」
「それと環さんと葛葉さん。2人には依頼達成の報告をしておくから今日はもう解散しても大丈夫だ。それと後日宴を開く予定だから予定が合えばぜひ参加してくれ」
「宴?」
タマが頭を傾げるとそれに洋子が答えた。
「ん。大きな問題が解決したら宴をするのが通例。戦いに参加した人に美味しい料理と飲み物で労う。もちろん。タダで」
「そっか。確かに色んな人が関わってるもんな」
太陽と洋子の言葉にタマは納得する。
「そう。それに1人1人を個別に労ってたらキリがないから1回で済ませるためにする」
「せ、世知辛い……」
追加で説明された宴をする理由にタマは何とも言い難い表情に変わる。それに太陽は苦笑しながら答えた。
「まぁ、そういう訳だからこれも経験という事でよければ参加してみてくれ。紅蓮達も参加するぞ」
「そうなのか。あ。でも、服装とかどうすればいいんだ?」
タマは疑問を口にする。洋子は答えた。
「学生だから制服でも問題ない。もちろん。おめかししもいい。参加する?」
「どんな感じか少し興味あるから覗くだけもいいのか?」
タマはたずねる。それに洋子はうなずいた。
「ん。問題ない。人間。得意や苦手はあるから無理強いはしない。私は家の事もあるから参加するよ」
「そっか。洋子もいるなら少し見てみたいかな。パンドラも良いか?」
「私はタマが行くならどこでも付き合うのですよ」
「おう。もしもの時は助けてくれよ」
「当然なのです」
タマの言葉にパンドラが力強く返事をする。それを聞いたタマは太陽に返事をした。
「俺とパンドラは参加するぞ」
「おう。了解した。後日招待状を送ろう。その日になったら葛葉さんと一緒に来てくれ」
「太陽様。戻りました」
太陽はそう言うと同時に茜が戻ってくる。
「という訳で俺はエピメテウスの手続きを進めるから君達は学園にも戻って完了報告をしてくれ」
「承知しました。お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
太陽の言葉に洋子が返事をすると頭を下げる。それに合わせる形でタマも同じように頭を下げると太陽は返事をした。
「おう。お疲れ様」
太陽の言葉を聞いたタマと洋子は学園にも戻るために動き始めた。
エピメテウスの今後についてと宴の参加についてのお話。




