39話 えっと……俺は許す
エピメテウスを蹴っ飛ばしたそれは巨人であった。顔はエピメテウスに似ているが、良くいえば戦士、悪くいえば蛮族のような恰好の彼とは対照的にまるで魔法使いのような恰好をしていた。
そして今。タマ達の目の前に出て来た巨人はエピメテウスにコブラツイストを決めていた。
「痛いっ!? 痛いっ!? 放してくれっ!? 兄貴っ!?」
「『兄貴っ!?』」
エピメテウスの言葉にタマ達が反応する。驚く声に気がついたのかコブラツイストはそのままに巨人は答えた。
「おっと。これは失礼。私プロメテウスと申します。このエピメテウスの兄をしています」
エピメテウスの兄プロメテウスが締め上げる力を強めながら名乗る。それにエピメテウスは叫んだ。
「あだだだだだだだっ!? 兄貴っ!? もっと優しくしてくれっ!?」
「ダメです。愚かなことをしでかしたお前に対する罰ですから。一瞬とはいえ一度意識を手放したのに負けを認めない愚かな弟に対するね」
「そんなっ!? って!? それよりもなんで兄貴がここに居るんだよっ!?」
「そんなの決まってるでしょう。やり過ぎないか監視していただけです。本来はまだ謹慎中のお前を外に出す許可を出したのだから当然でしょう」
「なんだってぇっ!?」
プロメテウスの言葉にエピメテウスは驚く。プロメテウスは棘のある口調で言葉を続けた。
「お前の本来の目的は本物のパンドラ殿への告白だったでしょうが。お前が鬱陶しい雰囲気をずっと醸していたからさっさと告白させてフラれて吹っ切らせるために許可を出しました」
「そんな事を考えて送り出したのかっ!?」
「ええ。事前に神々の方からも話を聞いていましたからね。ですが、黙って見ていれば正面から告白よりも先に強引に連れて帰ると言い出す始末。しかも『俺様に惚れていつかは嫁になるだろう』ですか。そんなことをすれば余計にお相手の心は離れるだけですよ?」
「うぅっ!? 」
しっかりと会話の内容も聞かれていたのかプロメテウスはエピメテウスが口にした言葉の一部を復唱した。
それに返す言葉がないのかエピメテウスは言葉を詰まらせるとプロメテウスはため息をついた。
「はぁ。戦士としても女を射止めようとする男としても落第点が良い所です。下手すれば顔も見たくないと言われても文句は言えませんよ?」
「…………ああ。そうだな。兄貴。俺にけじめをつけさせてくれ」
そこまで言われるとエピメテウスは真面目なトーンでコブラツイストからの開放を乞う。反省した様子を見たプロメテウスはコブラツイストを解いた。
解放されたエピメテウスはゆっくりとタマとパンドラの元へ移動するとエピメテウスはその場で土下座した。
「さっきはすまなかった」
地面に頭を叩きつけんばかりの勢いにタマは困惑しながらも答えた。
「えっと……俺は許す。パンドラは良いのか?」
「タマが許すんであれば私も許しましょう。ですが、次はありませんよ」
タマの言葉に便乗する形でパンドラも答える。それにエピメテウスはたずねた。
「……いいのか?」
「くどい。もしもまた手を出して来た時は返り討ちにしてやるから覚悟しとけよ」
「その時は私もタマを手伝うのです。今回出したのよりもヤバいのを引き当ててけしかけてやるのです」
「ははっ。そうか。謝罪を受け入れてくれて感謝する。タマ殿とパンドラ殿」
タマとパンドラがそう言うとエピメテウスは微笑む。その後で真面目な表情に変わるとエピメテウスはパンドラに向かって言った。
「パンドラ殿」
「はい。何ですか?」
「告白させてください」
「許しましょう」
「好きです。結婚を前提に付き合ってください」
エピメテウスはストレートに告白する。それにパンドラは頭を横に振った。
「ごめんなさい。私は今誰ともお付き合いする気はないのです」
「そうか。フラれた……か。素直に答えてくれてありがとう。パンドラ殿」
パンドラが拒否するとフラれた側であるエピメテウスは清々しい表情をしていた。
「ふむ。ようやくマシな顔つきになりましたか。それはそれとしてエピメテウスには罰を与えます」
それを見ていたプロメテウスはそう言うと唐突に指先から光線を出す。光線はエピメテウスに直撃した。
「あばばばばっ!?」
「エピメテウスッ!?」
プロメテウスの行動にエピメテウスの告白をフッたパンドラが慌てる。プロメテウスはさわやかな笑顔で言った。
「大丈夫ですよ。この光線でエピメテウスが死ぬことはありません。これは言いつけを守らなかったエピメテウスに対するけじめですから」
そう答えると光線を受けていたエピメテウスの体がどんどん縮んて行く。2mくらいまで縮むとプロメテウスは光線を止める。
エピメテウスは周囲を見てから自身が縮んだ事に気がついた。
「こっこれはっ!? 周囲がデカいっ!? この俺様が縮んでいるのかっ!?」
「エピメテウス。しばらくはその姿で人間の社会を過ごしなさい。時が来たらまた迎えに来ます」
「兄貴っ!?」
プロメテウスはそういうと同時に消えた。
突然の出来事にエピメテウスは呆然とするのであった。
兄であるプロメテウスの制裁とパンドラがエピメテウスの告白をフるお話。




