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37話 足ぃっ!?

「うわっ!?」


 強い光にタマは怯む。少しすると白く染まった視界が戻った。


「ふぅ。びっくりした。でも? 何もない?」


 タマは今も離れた場所で戦いを続ける太陽とエピメテウスとその周辺を見ながらつぶやく。周囲にはそれらしい怪物の姿は影も形もなかった。


「いえ。呼び出しには成功しているのです。手の紋様は光ったままなのです」

「そうなのか。じゃあなんで何も出てないんだ?」

「うーん。それは……分からないのですよ」


 タマのつぶやきを聞き取ったパンドラが頭を傾げながら答える。それを見ていた洋子が口を開いた。


「ん。不発ってこと?」

「それはないのですよ。あるとすれば呼び出した際にタイムラグがあるような大きな存在が出てくるのですが。……あ。不味いのです。タイヨウを呼んでここから離れるのですよっ!?」


 パンドラは自身が口にした内容で思い出す。慌てた様子を見せながらタマ達に避難するように声を掛けるとタマはパンドラが焦っている理由をたずねた。


「何かわかったのか?」

「あれを見るのです」


 タマの問いにパンドラはそう言って空を指す。パンドラの指の先。エピメテウス達の戦っている頭上の空には亀裂が入っていた。


「亀裂?」

「今回はあの亀裂から出てくるみたいです」

「別のパターンもあるのか?」

「私が呼び出した時は島くらいなら余裕で呑みこみそうな渦から出て来たのです」


 タマの疑問にパンドラが答える。その説明でなんとなく嫌な予想が出て来たタマは顔を引きつらせてうなずいた。


「なるほどなぁ。となると最低でもあの大きな亀裂と同じくらい大きいのが出てくるって事か?」

「出てきますねぇ」

「不味くない?」

「不味いのですよ」

「「…………」」


 タマの予想に対してパンドラはその予想を肯定すると2人はお互いに見合わせる。タマは短くうなずいてから太陽とエピメテウスの戦いの余波を警戒している茜と洋子に言った。


「ん。話は聞いてた。不味いから離れるよ」

「タマの言う通りなのです。タイヨウにも撤退を促してください」


 2人がそう言うと静かに話を聞いていた茜と洋子はうなずいた。


「今指示を出しました。ギリギリまで引きつけてから退避するそうです。皆様はこちらへ」

「ん。巻き込まれただけで死ぬのは嫌。行くよ。タマ」

「おう。パンドラもしっかり捕まってろよ」

「了解なのですよ」


 そういってと走り始めると同時にガラスが砕けるような音と共に亀裂に穴が開く。空いた穴から見えたのは離れているタマ達も巻き込まれてしまいそうな巨大な何かであった。


「うぉっ!? なんだアレッ!?」

「あれは巨大な鳥の足なのですっ!?」

「足ぃっ!?」


 しがみつきながらもパンドラは穴から出てくる山を思わせるような巨大なモノについて観察しながら答える。パンドラの言葉が気になったのか走りながらタマは振り返ってパンドラの見ていたモノを見た。


 巨大すぎて分かり辛いがモミジ葉っぱのように4本に枝別れしており、先端は鋭い爪があった。枝分かれした箇所の中央には下手な樹木よりも太い中央の塊が亀裂の先へと繋がっており、その見た目はパンドラの言う通り鳥の足先であった。


「っ!? なんだっ!? こいつはっ!?」


 太陽と戦っていたエピメテウスは足が穴を超えた辺りでようやく気がついたのか呆然とする。逃げるのは間に合わないと判断したのか迫って来るモノを受け止める体勢を取った。


「おぉっ!? すげぇっ!? 受け止めたっ!?」


 何とか足の当たらないエリアまで逃げたタマはエピメテウスの方を見ると降って来る鳥の足を真正面から受け止めた瞬間であった。


 衝撃的な光景ににタマが興奮する。一方でエピメテウスは苦しそうな声を上げながら雄たけびを上げた。


「ぐっ!? 戦いに水を差しやがってっ!? 負けてたまるかぁぁぁっ!? ぬぅうぉぉぉぉぉぉぉっ!?」


 エピメテウスは耐える。降って来る鳥の足に対してエピメテウスの力が拮抗する。しかし、その拮抗も長くは続かなかった。


「ちくしょうがぉぉぉぉぉぉ———」


 しばらくの間は完全に拮抗していたが、質量の差は圧倒的であった。悔しそうな叫びをあげながらエピメテウスは押しつぶされる。鳥の足が地に着くと大地が大きく揺れた。揺れが収まると微動だにもしない鳥の足を見ながらタマは口を開いた。


「なぁ。なんで足だけ出てるんだ? その……本体が出て来てなくないか?」

「うーん。おかしいですね? このまま本体が丸ごと出てくると思ったのですが、途中で止まってしましいましたね?」


 目の前の状態にタマが疑問をつぶやくとパンドラが頭を傾げる。その反応にタマは意外そうな顔をしていった。


「分からないのか?」

「禁忌の箱自体が普通は呼び出してはいけないようなモノを呼び出す力ですよ? 1度や2度であれば権能や力の実験のために使用許可も出ますが、それ以外なら神の間でも即封印指定されるような力なので試す事も出来ないのです」

「そう言われると気軽には試せる訳ないわなぁ」

「そうなのですよ。あるとすれば初召喚で何か不備があったとかですかねぇ」

「うーん。分からん」

「私にもわからないのですよ」


 パンドラの説明にタマは納得する。そんなのんきなやり取りに洋子が釘を刺した。


「ん。そろそろ現実逃避は止めるべき。これどうするの?」

「そうですね。今は微動もしてないので大丈夫ですが、動き出したら大事ですよ?」


 洋子と茜が疑問を口にする。それにタマとパンドラは同時に答えた。


「正直、消えるまで待つしかないと思うぞ。下手に刺激して暴れて来られたら危ないし」

「消えるまで大人しく待つのが吉なのです。下手に刺激して暴れられる方が危ないのです」


 洋子と茜の問いに対してタマとパンドラがほぼ一致した答えを返す。茜はどうするか考えながら言葉を続けた。


「やはり待つしかないですか……」

「ん。分かった。それとおじさまは……」

「おーい。戻ったぞ」

「ん。噂をすれば戻って来た」


 洋子が太陽の事を気にすると同時に木々の上の方から木に掛けていた太陽が戻って来た。

 禁忌の箱で呼び出したのは巨大な鳥の足の部分というお話。

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