33話 婚約してたのか? あいつと?
白く染まった視界が元に戻るとそこは入った地下の部屋と同じような空間であった。
「あれ? 同じ?」
「違う。おじさまの居る基地の転移部屋で合ってる」
タマの疑問に洋子が答える。それにタマは感心した。
「良く分かるな」
「ん。あそこ」
「あそこ? ……なんか書いてあるな」
タマが洋子の指した場所を見ると暗い部屋の中にプレートらしき板を見つける。距離が遠いからなのかタマが書かれている文字に悪戦苦闘しているとパンドラが口を開いた。
「『第一基地』って書いてるのです」
「読めるのか?」
タマは目を細めながらたずねる。パンドラは自慢気に答えた。
「戦いの才能はないですが、目は良いのです」
「そっか。読んでくれてありがとうな」
「どういたしましてなのです」
「むむっ。タマ。くすぐったいのですよ」
パンドラはえっへんと胸を張った。タマはそんな様子のパンドラに少しほっこりしたのか礼を言いながら指でパンドラを優しく撫でる。それにパンドラはくすぐったそうに答えた。
「ん。とりあえずおじさまにお礼と報告。多分砲撃を指示しただろうし」
「確かにそれだったらお礼は言わないとな」
「行こう」
洋子は提案する。それにタマがうなずくと近くにある扉を出る。扉を出た先の廊下に出ると太陽の秘書の日野 茜が待ち構えていた。
「おかえりなさい」
「茜さん。戻りました」
「ん。戻った」
茜が声を掛けるとタマと洋子が返事をする。茜は苦笑しながら言った。
「先程は災難でしたね」
「ん。援護射撃ありがとう。なんとかなった」
「ありがとうございました」
「いえいえ。こちらこそ対応が遅れました。まさかあの巨人が真っすぐ貴女達の元へ行くとはおもいませんでした。無事でよかったです」
2人の無事そうな姿を見て茜は安堵する。茜は言葉を続けた。
「とりあえず太陽様の元へ行きましょうか。そこでお話を聞かせてください」
「はい」
「ん。分かりました」
「では着いて来てください」
茜はタマと洋子が元気よく返事を聞いてから案内を始めた。通路を通ってから少し歩くと見覚えのある通路へと出る。パンドラはそれを口にした。
「見覚えのある場所なのです」
「そうだな。という事は最上階なのか?」
「はい。作戦室からは少し離れていますが、最上階です。通信での連絡手段があるとはいえ、基地間の移動は手早くできるに越した事はありませんからね。その分敵の侵入に対しての対策は厚くしているので不法侵入については安心してください」
「そうなんですか」
「そうなんだ」
茜の説明にパンドラとタマの言葉が重なる。それに茜は笑った。
「ふふっ。息ぴったりですね。っと。着きましたよ」
茜は扉を開ける。
扉の先では今も砲弾やミサイルといった火器で波状攻撃をしているのが映っている映像と太陽が各基地への指示出しをしている姿であった。
しばらくするとある程度指示を出し終えたのか太陽は一息つく。同時にタマ達が戻って来たのに気がつくと太陽は招いた。
「おう。おかえり。上手く逃げ切れたみたいだな」
「戻りました。おじさま。状況はどうですか?」
洋子が代表して返事をする。太陽は顎に手を当てながら答えた。
「あまり良くはないな。君達に襲い掛かって来たから手を出したが、砲撃は正直動きを止めてるだけだな。ほとんどダメージになっていない」
「ん。倒しきれる算段はある?」
太陽の説明を聞いた洋子はたずねる。太陽は真面目な表情で答えた。
「今の状況だと厳しいな。今以上の火力を出すのは出来るが、継続できないから少し怪しい。交渉もこちらから手を出した都合相手が話に応じるかも厳しいだろうな」
「ん。それについては申し訳ないと思ってる」
「それについては気にしなくてもいい。子供を守るのは大人の務めだからな。それよりも情報共有だ。君達に話しかけていたみたいだが、何を話していたんだ? こちらでは専用のドローンとかじゃないと音声は拾えなくてな」
太陽はたずねる。それにパンドラが口を開いた。
「それについては私が。あの巨人。エピメテウスは私を嫁にするために探しに来たのです」
「巨人が君を……嫁に?」
太陽は頭を傾げながらパンドラの言葉を繰り返した。
「昔の話なのですよ。私エピメテウスは短い期間でしたが、婚約関係があったのです」
「婚約してたのか? あいつと?」
婚約という言葉にタマが頭を傾げる。
「同じ神話帯のツクモ神同士ではあるが、どう考えてもサイズ的に無理があるのではないか?」
「元の私は今のタマと同じ位なのです」
「……それでも相当サイズ差があると思うんだが?」
太陽はどう考えても夫婦になるには無理があるサイズの差に疑問を口にするしかなかった。それにパンドラは丁寧に答えた。
「それについての理由は良く分からないのです。補足するとエピメテウスから一方的に婚約を取り付けられたのですよ。もちろん。私も嫌だったので父様と母様にもその意思を伝えてから破棄の方向で話し合いの場を設けました。その際には色々あって破棄には成功したのですが、それでエピメテウスは大暴れ。私のいた世界を追放されて別の世界に幽閉されたそうです。とはいえ追放したのは私の住んでいた世界での話。こことは別になるので好機と踏んでここまで来たと考えられるのです」
「なるほど。何らかの方法で君が外の世界に出たのに気づいたという事か。そこまでの執着を見せるのであればここまで来るのも納得できる話ではあるな」
「なので巻き込んでしまって申し訳ないのです」
パンドラは頭を下げる。それを太陽は宥めるように言った。
「謝らなくてもいい。これに関して悪いはあの巨人だからな。その代わりに奴をどうにかするのには手伝って貰うぞ。パンドラ殿」
「それは当然なのですよ。タイヨウ。私の身の安全にも関わるのですから」
太陽の言葉にパンドラはお互いに力強くうなずく。太陽は提案した。
「それならばエピメテウスについての対策の話をしようか。奴について情報を教えてくれ」
「承知したのです」
そう言うとパンドラはエピメテウスについての事を話し始めた。
太陽の居る基地への移動とパンドラとエピメテウスの関係についてのお話。




