32話 逃げよう
「っ!?」
タマ達の目の前で爆音と衝撃が襲い掛かる。吹き飛ばされえそうになるのを堪えている少しすると衝撃が消えた。顔を上げると光が爆風を受け止めていた。
「ん。結界を貼った。爆発の余波くらいなら余裕」
「おう。ありがとう」
「2人共。ありがとうですよ」
タマとパンドラは同時に洋子へ礼を言う。洋子は続く攻撃の中で言った。
「それじゃあ。逃げるよ」
「え? 逃げるのか?」
「ん。おじさまが言ってたでしょ? 巨人はタフって」
「確かに言ってたけど、あれで倒せないのか? ってか。攻撃してよかったのか?」
「倒せない。これで倒せるならツクモ神との戦いは苦労しない。それとこの攻撃は私達が襲われそうだったのが見えたからだと思う。だから、私達が安全な場所に移動。そこからどうするか考えよう。それとタマ達はあの巨人は倒してしまいたい?」
「いや。そこまでは考えてないな。諦めてくれたらそのまま帰ってもらった方が良いかな。って思ってる」
タマは考えを口にする。それにパンドラが同意するようにうなずいた。
「私もタマの意見に同意です。ティターンは同族や仲間に対する情が深いのではぐれ以外は殺してしまうと仲間がここに殺到してくる可能性があるのです」
「ん。なるほど。逆に私達がこのまま連れ去られたり、ケガしたり、したらエピメテウス……さんは討滅の対象になってしまうから日本と巨人との泥沼の戦いになる可能性がある。だから、一旦逃げる。タマはどうしたい?」
洋子の言葉にタマは真剣な表情でうなずいた。
「分かった。ひとまず逃げよう」
「了解。逃げ道は確保してる。こっち」
「準備万端だな」
「当然。準備は大切」
洋子がそういうと一緒に近くの林の中へと逃げ込む。洋子を追ってタマを追ってしばらく林の中を走って行くとエピメテウスは怒りのままに吠えた。
「うぉぉぉぉっ!? 我が花嫁よぉぉぉっ!? どこだぁぁぁっ!」
「うおっ」
「ん。凄い声…………止まって」
未だに続く砲撃の音に混ざった大きな声に怯みながらも林の中を進んで行く。タマ達を見失ったのか怒りで地響きをたてながら探すような音が聞こえる。
揺れに気を付けながら進んで行くと唐突に洋子は立ち止まった。
「どうしたんだ?」
「あった。ここが目的地」
「ここが?」
「あれ」
洋子がそういうと見つけた物を指す。そこには地下へと続く厳重な鉄の扉があった。
「あれは?」
「各所に点在する基地への地下通路。これで隠れながら移動できる」
「そうなのか。便利だな」
「でも、それって敵にも利用されませんか?」
話を聞いていたパンドラがたずねる。洋子はそれにうなずいた。
「大丈夫。パンドラちゃんのいう事も分かるけど、言葉通りに繋がっている訳じゃない」
「繋がっていないのに地下から移動できるのですか?」
「結界内であれば特別な陣を利用した転送術がある。玉藻監修だから敵が術士であっても容易には突破できない」
「うむ。私が定期的に更新してるからせきゅりてぃ? とやらも万全じゃぞ。もし私以上ならこちらも気づけるようになってるからそれはそれで反応もできるぞ?」
洋子に続く形で玉藻が自信満々の様子で答える。その言葉にパンドラはゆっくりうなずいた。
「なるほど。納得したのです。ヨウコもタマモも説明ありがとうなのです」
「よいよい。パンドラは洋子よりも素直でかわいいのぅ」
「むぅ。玉藻。失礼。私もかわいいでしょ?」
玉藻の言葉に洋子が不満そうに頬を膨らませる。それをなだめるように言った。
「そうじゃの。ダメな子ほどかわいいぞ。それとエピメテウスと言ったか。あの巨人がまだ探しているのじゃろう? 早く地下へ入らんでいいのか?」
「そうだった。こっち」
玉藻の言葉で洋子はここに来た理由を思い出す。洋子はタマを呼ぶと扉の前に来た。
「どうやって開けるんだ?」
「ん。すぐわかる」
『人物検知。音声と映像から対象の検索…………対象は葛葉様と環様と一致。扉のロックを解除します』
音声がなると扉の鍵が外れる音がする。少しすると自動で扉が浮き上がると扉が開いた。
「おぉ。開いた」
「ん。入ろう」
「分かった」
洋子に連れられて扉を通ってから階段を伝って地下へと入って行く。階段の一番下へとたどり着くとそこには数十人は入れる広い空間と部屋の中心に置かれた機械があった。
「機械?」
「ん。転移用の機械。あれを起動したら陣を発生させてここから基地間を移動できるよ」
「へぇ。でも、何で機械なんだ?」
タマは思った事を口にする。洋子が答えた。
「ん。知ってる」
「洋子。知ってるのか?」
洋子が自信満々に答えるとタマがたずねる。洋子はうなずくと喋り始めた。
「陣の安定した精度と持ち運びのしやすさからこれが採用されてる。地下の耐震はしてるけど、陣が少しでも傷が出来たり、線が欠けたりすることがあるから」
「そんな理由があったのか」
洋子の説明を聞いたタマは納得する。洋子は機械の操作を始めながら言った。
「とりあえず起動する」
「ああ。頼んだ。っと」
洋子が捜査していると地面が大きく揺れる。不意に来た揺れに洋子がバランスを崩すとそれをタマが受け止めた。
「おっと。大丈夫か?」
「ん。ありがとう」
「おう。無事でよかった。俺も何度も助けられてるからお互い様だ」
タマが笑顔で答えると洋子は微笑んだ。
「ん。タマは女誑し」
「なんでっ!?」
洋子の言葉にタマが慌てる。そんな様子のタマを見て洋子は笑った。
「ん。冗談。戻ろう」
「もうっ!? 真面目な時くらいはからかわないでくれっ!?」
「ん。タマの反応がかわいくてからかいすぎた。ごめん」
「うん。気を付けてくれよ。それよりも起動させなくていいのか?」
「そうだった」
洋子が謝るとタマはあっさりと許す。その後のタマの言葉で洋子は思い出したように機械の起動を再開した。
「ん。起動した。場所はおじさまのいる基地にする」
「おう。その辺は詳しい洋子に任せる」
「ん。行くよ」
そう言うと機械を中心に陣が広がる。陣が強く光ると軽い浮遊感と共に白い光に包まれた。
エピメテウスから逃走するお話。




