30話 了解です
太陽の案内でタマ達は基地の最上階へたどり着く。
扉を開けるとそこには大きな端末とモニターがあり、それらを操作する大人達が忙しそうにやり取りをしていた。太陽と共にタマ達が部屋に入ると視線が太陽の方に集まる。
そんな大人たちの中でスーツ姿の女性が代表なのか太陽の前に現れた。
「おかえりなさいませ。太陽様。それと学園の生徒の皆様」
「茜か。戻ったぞ」
「……こんにちは」
「ん。こんにちは。茜さん」
太陽が返事をするとタマと洋子も茜に挨拶する。茜は優しめの口調で洋子にたずねた。
「こんにちは。洋子様。それとタマ様」
「あれ? 俺名乗ったっけ?」
「ん。名乗ってない。タマ。依頼だから情報は伝わってる」
「あ。そうか。えっと。タマです。今日はよろしくお願いします」
「ご丁寧にどうも。タマ様。私は日野 茜と申します。太陽様の秘書をしています。よろしくお願いしますね」
タマはなるべく丁寧な口調で挨拶すると茜は同じように丁寧な口調で自己紹介する。
「そういえば気安いやり取りをしてたけど、知り合いなのか?」
「ん。お勤めの時にたまに手伝って貰ってる」
「なるほど。知り合いなのか。それで気安いやり取りをしてたんだな」
「ん。そう」
タマが話の内容に肯定する。その一方で太陽と茜は真剣な表情で言った。
「茜。状況は?」
太陽は茜にたずねる。茜はモニターを捜査する人にハンドサインを送った。するとモニターを画面が切り替わる。
モニターの先には屈強そうな男が荒れ狂う海の中で槍を持ってバタフライで泳いでいた。
「これは……予言された巨人か?」
「はい。途中までは少しさ迷うにゆっくりと近づいていたのですが、途中からまるで何かを見つけたように真っすぐに加速してこちらに向かって来ています」
「なに? そうなると予定よりも早く来るか?」
「そうなります。後1時間もしない内に到達しそうです」
茜が太陽の問いにうなずくと考える。少しすると口を開いた。
「ふむ。津波の被害は?」
「このまま放置していれば想定よりも早くこの周辺一帯が巨人の生み出した津波に呑まれます。放置は推奨しません」
「なるほど。すぐに動ける人員は?」
太陽はたずねる。茜はすぐに答えを返した。
「今回招集掛けた九十九士の方々は全員海の方で待機しています。幽世結界の発動もいつでもできるように準備も万全です」
「そうか。それなら幽世結界の発動を早める。戦闘員にもいつでも戦えるように指示を。終わったらこの子達に持って行ってもらう物を選別してくれ」
「承知しました」
太陽の指示を聞いた茜は1礼すると端末を操作する人の方へと移動を始める。やり取りを終えた太陽はタマ達に言った。
「という訳で済まないが、君達にもすぐに動いてもらう。まずは海の砂浜の10個ある防波堤近くにある防衛ラインに銃弾と火薬、食料の運搬を運んでもらうぞ」
「了解です」
「ん。任せて」
太陽の言葉にタマと洋子は元気に返事をする。それに太陽は笑顔で答えた。
「いい返事だ」
「太陽様。指示出し終わりました」
「ありがとう。茜。忙しいかもしれないが、次はこの子達に送ってもらう物資の餞別を頼む。物資はこの子達のおかげで地下に全てあるはずだ」
「承知しました。タマ様。洋子様。保管庫に戻りますので着いて来てください」
太陽の言葉にうなずくと茜がタマ達に声を掛ける。タマと洋子は短くうなずくと茜の後ろを着いて行く。先程まで通っていた道を戻って地下へと到着した。
保管庫内部を確認すると茜は言った。
「なるほど。確かにこれなら物資の不足もしばらくは問題なさそうですね。少々お待ちください」
そう言うとアカネは部屋の中へと入る。少しすると大きな鞄がギチギチになるまで入った荷物を3つ持って来てから保管庫から出て来た。
「ふぅ。流石に重いですね」
「その荷物を運べばいいんですか?」
タマはたずねる。茜はそれを肯定するように答えた。
「はい。これらを3つの基地に届けてください」
「茜さん。地図は?」
「こちらを」
予め準備していたのかアカネの地図を洋子が受け取る。洋子は言った。
「タマ。物資を入れて行って」
「おうよ」
洋子の言葉に反応してタマは無意識に持っていた箱を広げて茜の準備した荷物を手早く片付ける。
それを茜はじっとタマと荷物を入れたダンボール箱を見ていた。タマは思わずたずねた。
「どうしました?」
「不躾に見て申し訳ありません。明らかに質量の大きな物がそのダンボール箱の中に入って行くのが不思議で見ていました」
「そっか。邪魔しないなら別に見てくれてても大丈夫だよ」
「そうですか」
「「…………」」
タマと茜はお互いに話す内容がなくて沈黙する。しばらくすると洋子が呆れた様子で言った。
「ん。2人共。作業中。手を止めないで」
「あ。悪い。それと茜さんもすみませんでした」
「いえ。こちらこそですよ」
お互いに謝り合うと少しだけ2人の間の空気が柔らくなる。
タマと茜は荷物3つを全部箱の中に入れると今度は洋子に話しかけた。
「洋子様。地図の方は大丈夫そうですか?」
「ん。大体理解した。返した方が良い?」
「そのまま持っていても大丈夫です。ただし、地図はなくさないようにお願いします。紛失した場合は私か太陽様の方に伝えてください」
「ん。了解」
「最後にこれを」
そう言うと茜は懐からスマホの端末を2つ取り出してタマと洋子に渡した。
「これは?」
「幽世結界内でも使える携帯スマホです。これであれば結界内の相手に連絡を送れます。連絡先は予め登録されているので必要があればそれを参考に連絡してください」
「「はい」」
タマと洋子が返事を返す。それを聞いた後に茜は言った。
「後はお二人に言う事べき事は巨人と遭遇したら命令違反でもいいのでまずは生き残る事を優先してください。次点で他の人を巻き込まないように。分かりましたね?」
「分かりました」
「ん。気を付ける」
アカネの言葉にタマと洋子はうなずく。茜は満足そうにしてから言った。
「よろしい。ご武運を祈ります。行ってらっしゃい」
「「行ってきます」」
そう言うとタマ達は返事をしてから各基地への物資の運搬を開始した。
警報が鳴った理由のお話。




