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27話 すっ数百ま―ッ!?

 準備をしている校長にタマはたずねた。


「ところでなんですが、校長先生。樹童子ってどうなったんですか? 真っ二つにしちゃいましたけど……」

「ああ。あれは本体ではありませんよ」

「本体じゃない?」


 校長の言葉にタマは頭を傾げる。


「はい。あの木刀の封印にはあえて少し弱めたように見せる箇所があってそこを弱めたように見せて分体作り出させて出してるんですよ」

「それって校長先生がやられたら不味くないですか?」


 タマはたずねる。それに校長は苦笑した。


「不味いですね。特にずる賢いので人質なんてやられると逃げられかねないです。ですが、分体の出力を倒せる程度に調整すれば何も問題ありません。奴も私に直接の呪いは効かないのは奴も知ってますから」

「何で樹童子は校長先生の体質の事も知ってるんですか?」


 タマは疑問を口にする。校長はあっさりと答えた。


「それは私が本体を倒してから封印したからですよ」

「倒したんですか?」

「はい。依頼があって封印しました」

「むむっ。封印の依頼もあるんですか?」

「ん。校長先生の武勇伝。聞きたい」


 タマと校長の話が気になったのかパンドラと洋子も食べるのを止めてタマと話していた2人の元へ近寄って来た。


「ははっ。悪さをするツクモ神を放っておけませんからね。それにそんないい話ではありませんよ。樹海になった村の調査で村の人々を樹木に変える鬼が居てそれが効かない私が倒して封印した。それだけの話です。樹木になった犠牲者は戻れませんでしたしね」

『うむ。よくある話じゃな』

「ん。鬼の呪いは厄介」

「「っ!?」」


 校長の言葉に玉藻と洋子がうなずき、タマとパンドラがその内容に動揺する。反応は依頼の経験のあるなしで見事に別れていた。


「そ、それって樹童子を倒したら人に戻ったりはしないのか?」

「しませんよ。今も呪い専門の九十九士達が頑張ってくれてます」

「そうなのか」

「はい。解決方法はその内出てくるでしょう。っと。出来ましたよ」


 話をしている間に完成したのかカップに入ったコーヒーをタマ達に渡す。その匂いにパンドラが反応した。


「おぉ。いい匂いです」

「砂糖は出しておいた。ミルクは調整できないから自分でして」

「ヨウコ。ありがとうなのですよ」

「ん」


 パンドラは礼を言うと自身の入っている箱からスプーンを取り出して角砂糖をさらに小さく砕いて自身のコーヒーに入れた。その後にミルクの入った壺へ寄ってからミルクを少量入れる。タマ達の前に戻って来ると一緒にコーヒーをゆっくりと飲み始めた。


「んぅ。おいしいのです」

「そうだな。おいしいです」

「同じく」


 タマ達はそれぞれ感想を口にする。それを聞いた校長は微笑んだ。


「お口に合ってよかったです」

「というよりもパンドラのサイズのカップなんてあるんだな」


 パンドラがコーヒー自体に感心を持っているのに対して、彼女の手に持てるサイズのカップがある事にタマもコーヒーを飲みながら反応する。タマの疑問に同意するように洋子もたずねた。


「そういえばそう。校長先生。なんで?」

「お客様の中にはパンドラ様のような小さなツクモ神もいますからね。そのツクモ神の中には様々なサイズの方がいるので準備しているのです」

「なるほど」


 洋子は納得する。校長は言葉を続けた。


「ついでに環君の箱程の容量はないですが、似たような物は存在しているのですよ。それを使ってコーヒー等のセットを入れているのですよ」

「えっ! そうなんですかっ!?」


 校長の言葉にタマは驚く。校長は布の袋を見せた。


「はい。意外と存在しているんですよ。この袋がそうです」

「ただ、滅茶苦茶貴重。購入しようと思ったらあの袋の見た目の倍くらいの容量の物でも数百万円単位になる」


 校長の説明に補足するように洋子がそう言うとタマは慌て始めた。


「すっ数百ま―ッ!? それじゃこの箱だったら!?」

「数十億でも足りるか分からないかも?」

「じゅっ!? おっおぉ——っ!?」


 洋子の言葉から出てくる金額にタマから変な声が漏れる。動揺した様子のタマにパンドラが言った。


「タマ。落ち着くのです。タマのは他の人に譲渡は出来ないのですよっ!?」

「パンドラッ!? だってっ!? もの凄い金額だぞっ!?」

「たかが人の基準のお金なのです」

「それでも緊張するだろっ!? そんな金額聞いたらさっ!?」

「えいっ!」

「うごっ!?」


 興奮を続けるタマに苛立ちが勝ったのかパンドラが体当たりした。体当たりは良い場所にヒットしたのかタマは悶絶するように倒れる。何とか意地でコーヒーの置かれた場所を避けて倒れた。


 倒れたタマを洋子はつつきながらたずねた。


「大丈夫?」

「……大丈夫じゃない。痛ひ」

「ん。大丈夫そう。今のはタマも悪いけど、パンドラ様も謝る」

「そうですね。ごめんなさいです」

「お……おう。だ、大丈夫だ。お、俺も冷静じゃなかったし、な」


 パンドラも悪いと思ったのか素直に謝罪する。タマも冷静じゃなかったのは分かっているのかあっさりと許す。


 しばらくすると痛みも落ち着いてきたのかタマは起き上がった。


「ふぅ。酷い目にあった」

「回復早いね」

「今のタマの半分はツクモ神なので身体能力も回復力も人よりも高いのです。ただ、私は戦神ではないのでそこまで高くなることはないのです。タマ。校長に元の姿に戻る方法を聞いてみるのはどうですか?」


 タマの代わりにパンドラが洋子の疑問に答えると同時にタマに提案する。パンドラの提案にタマは納得した様子で返事をした。


「そうじゃん。パンドラ教えてくれてありがとうな」

「ふふん。もっと私の事を頼ると良いのですよ」

「それは勘弁。何かやらかしそうだし」

「なんですとぉ!?」


 パンドラがドヤ顔を披露している横でタマが真顔で答える。それにパンドラが不服といった様子で声を上げるとそれを無視してタマは校長にたずねた。


「校長先生。ツクモ神の力と混ざり合った状態と似たような状況の話……もしくはそこから元の姿に戻ったって言うような話はありませんか?」


 タマは思い出したように当初の目的の方法をたずねる。それに校長は難色を示した。


「うーん。正直、協会の方から話を聞いた時が初めてでしたよ? もしかしたら過去の資料の中にはあるかもしれませんが、私の知っている知識の中にはありませんね」

「そうですか。ありがとうございます」


 校長の言葉にタマは少しがっかりしながらも答えてくれたことに礼を言う。校長は少し考えてから提案した。


「そうですね。私の方でも伝手を使って似た事例がないか調べてみるとしましょうか」

「っ!? いいんですか?」

「困っている生徒に手を差し伸べるのも教師の仕事です。依頼が終わった後にまた話し合いましょうか」

「ぜひお願いします」


 校長の提案にタマは食い気味に返事をする。校長はうなずいた。


「承知しました。こちらの方でも調べてみますね。ただし、確実に情報が得られる可能性は低いのであまり期待しないでくださいね」

「それでも助かります」


 真剣な表情でタマがそう言うと校長は言った。


「さて、程々に休憩できたのでそろそろ再開しましょうか」

「「え?」」


 校長の言葉にタマと洋子が動きを止める。


「連携については問題なさそうなので後は逃げ切る際の体力と継戦能力と冷静な判断力ですかね。来週までの時間はあまりありませんからみっちりきっちりと鍛えてさしあげましょう」

「校長先生。まだ食べたばかりです」


 洋子が慌てて時間を稼ぎ始める。それに校長は優しく答えた。


「それならもう少しだけ待ってから始めましょうか」

「やるのは確定なんですね……」

「当然です。生徒を死なせる訳には行きませんから。しっかりと受けてください」

「はい……」


 校長の言い分に洋子はあっさりと敗北する。校長はタマを見て言った。


「環君もいいですね」

「わ、分かりました」

「よろしい。では3分後。鍛錬を再開しましょう。前日はしっかり休んでもらうので運搬の依頼の日の2日前まで」

「「———」」


 校長の提案にタマと洋子は言葉を失う。


 そこから3分後。校長の宣言通りにタマと洋子は休憩時間のご褒美とは打って変わってハードな鍛錬が再開される。


 そして依頼の日の2日前まで続くのであった。

 ご褒美兼休憩時間と終了後の地獄再開のお知らせのお話。

 次回は依頼の日からの再開予定。次の更新は7/1(水)頃の予定です。


 ここまで読んで下さりありがとうございました。次回もお楽しみに。

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