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28話 始めようか

 依頼の日。校長のしごきを終えた2日後。


 地獄のような鍛錬を超えたタマは相方のパンドラと洋子、玉藻と共に隣町の海野市へと訪れていた。


「おぉ。海だぁっ!」


 駅から出た目の前には広い浜辺と海の景色が広がっており、タマが声を上げる。興奮しているタマに洋子は声を掛けた。


「ん。海だね。タマ。依頼は忘れてない?」

「おっと。そうだった。ありがとう。多分大丈夫」


 洋子の指摘にタマは依頼の事を思い出す。そんなタマの反応に洋子はスマホを見ながら言った。


「今依頼主の九十九士の人に連絡した。結界の境界は近いから案内する」

「そっか。ありがとう。あっ。そういえば紅蓮達もいるんだっけか?」


 洋子の言葉でタマは紅蓮達の事を思い出す。それに洋子は頭を左右に振った。


「ん。違う。紅蓮と大輔はここにはいない。占いは別の場所でもできるから安全な場所でしてる」

「そっか。なら今の俺達はレアな体験をしてるって事だな」

「ふふっ。確かにそうだね」


 タマが言った事が面白かったのか洋子は笑う。洋子が先頭に立って浜辺の方へと誘導する。


「海岸の方に行くのか?」

「そう。海岸に結界の入口がある」

しばらくの間は堤防に沿って進んで行き岸へとつながる階段にたどり着く。階段を下りてから海に沿って砂浜を歩いて行くとコンクリートで出来た足場のある場所へとたどり着いた。

「ついた」

「あそこが?」

「みたい。教えてもらった情報を一致してる」


 洋子がそう言うと何もない空間から光の渦が現れる。不規則な形の渦はどんどん広がっていき人が通れるくらいに大きくなった。


「うおっ。急に渦が出て来て大きくなった」

「ん。これが結界の出入口。入ろう」

「おう」


 洋子に連れられてタマは渦の中に入る。渦の中に入ると外と変わらない景色があった。


「あれ?」

「どうしたの?」


 タマが頭を傾げると洋子がたずねる。タマは疑問を口にした。


「本当に結界の中なのか?」

「ああ。なるほど。結界の中であってる」

「え? でも、さっきと全然変わってなくないか?」


 洋子の言葉にタマは混乱する。洋子は言った。


「ん。よく見て。人や車」

「あ。道路の方に車がない。それに人もいない?」

「人以外の生物もいないのですよ」

「本当だ」


 パンドラの言葉でタマは周囲を探す。パンドラの言う通りに周囲に生物らしい生物は一切いなかった。


「ん。結界の中でしょ?」

「みたいだな。それにしても外とそっくりなんだな」

「当然だ。本来の使い方は外となるツクモ神を迷い込ませるための空間だからな」


 タマが感想を口にすると大人の男性の声が聞こえる。慎重に声の方を見ると迷彩服を着た深い赤色の髪をしたガタイの良い男が立っていた。


「ん。お迎え。来たみたい。おはようございます。おじさま。こちらは環タマ。依頼で物資の運搬と巨人戦の支援に来ました」

「お、おはようございます」


 洋子が紹介と共に挨拶をするとタマは同じように頭を下げて挨拶をする。それに男はさわやかに答え

た。


「ああ。おはよう。それとはじめましてだな。俺は来夏(らいか) 太陽(たいよう)という」

「もしかして紅蓮の親父さん?」


 苗字からタマは紅蓮の父であると推測する。それに太陽は笑いながらうなずいた。


「ああ。正解だ。環さんの事は学園の校長と息子、そこに居る葛葉さんから話を聞いているよ。よく来てくれた」


 太陽はタマを歓迎する。それにタマは困惑して戸惑っていると洋子が助け舟を出した。


「ん。おじさま。まずは物資を置きたいから基地への案内をお願いします」

「おっと。そうだったな。先に済ませてしまおう。着いて来てくれ」


 洋子の言葉に太陽はうなずくとタマ達のゆうお堂を始める。結界内の浜辺を歩き始める。しばらく広い砂浜を進んで行くと周囲をバリケードのように木の塀に覆われた場所へとたどり着いた。


「ここが今回の巨人対策の為に作られた基地だ」


 太陽はそう言うとタマ達を連れて基地の出入口へと移動する。塀の扉の前まで来ると太陽は言った。


「少し待っていてくれ。一応話は通しているが、門番に伝えてくる」


 そう言うと門の出入口周辺にいる太陽と同じ様な迷彩服を着た男達の方へと移動する。話はあらかじめ話している事が伝わっているのか太陽はあっさりと戻って来た。


「門番と見張りには情報を共有したから入ってもらって構わないぞ」

「ありがとうございます」

「ん。ありがとう」

「こちらから頼んだことだからな。このまま着いて来てくれ」


「「はい」」


 太陽がそう言うとタマ達もうなずいて後ろを着いて行く。木造の建物が並んでいる中で基地の中央の施設の中へと入るとそこには地下へとつながる階段があった。


「とりあえず。届けてくれた物資は地下においてくれると助かる。先行して案内するから着いて来てくれ」

「分かりました」


 太陽の言葉にタマがうなずくと暗がりにある階段を降り始める。薄暗い階段を慎重に降りると保管庫と書かれた地下へとたどり着いた。


 扉を開けると中には冷えた空気と食料や水が置かれた小さな部屋であった。太陽は保管庫の奥の方へと移動すると何もない開けた場所へとたどり着いた。


「ここに持って聞きた物資を置いて行ってくれ。移動は本当に時間が掛かっていないから多少ゆっくり置いていってもらっても構わないぞ」

「ん。タマ」

「分かった。洋子も手伝ってくれ」

「ん。任せて」


 タマが洋子に声を掛けると洋子は快い返事が返って来る。タマは行動を開始する為にこれからすることを口にした。


「よし。始めようか。再確認だが、共用に切り替えたら他の人でも取り出せるんだよな」

「出せるのですよ。学園の時と同じように誰でも使えるようにイメージしてから繋げたら行けるのですよ」

「うん。大丈夫そうだな。繋いだら俺と洋子で置いて行こう」

「ん。了解」


 洋子の返事を聞いてからタマはうなずく。そのまま広い空間の中心部へと自身のダンボール箱を持って移動を始める。広い場所の中心へとたどり着いてから箱を置くとタマは言った。


「開け。ダンボール・ボックス」


 そう言うとタマは個人用の設定した箱の異空間を共用へと切り替わって空間がつながる。タマは洋子に言った。


「これでよし。洋子。繋げたから一緒に取り出して置いて行ってくれ」

「ん。わかった」


 そう言うとタマ達は箱から物資を保管庫に置き始めた。

 当日の依頼の進行のお話。場所については日本によく似た土地の海辺になります。

 次回は物資を置いた直後くらいから再開。次の更新は7/5(日)頃を予定しています。


 ここまで読んで下さりありがとうございました。次回もお楽しみに。

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