23話 鬼ごっこで?
「はい。鬼ごっこです」
タマ達の言葉に校長は答える。その言葉にタマは頭を傾げた。
「なんで?」
「簡単です。何があっても生き残れるようにするためです」
「鬼ごっこで?」
「はい。それが丁度いいと思いました」
胡乱な表情でタマは疑問を口にする。校長は笑顔で返事をしてから言葉を続けた。
「ルールを説明しますね。ルールは簡単。私が呼び出したモノから5分間逃げ切ってください。環君は逃げる側です。もちろん反撃しても。なんなら倒してもらっても構いません。その場合は即合格です」
「それって本当に鬼ごっこなのか?」
「それはこれを見たらわかりますよ」
そういうと校長はいつの間にか手に持っていた木製の剣を地面に差す。
「さぁ出番ですよ。樹童子」
その言葉と共に剣を中心に地面が割れる。割れた地面から校長の倍近くある暗赤色の鬼が這い出て来た。
鬼は校長の横に立つと校長は言った。
「鬼が追って逃げる役の環君は鬼から逃げる。ほら。鬼ごっこでしょう?」
「た、確かにっ!?」
校長の言葉にタマは驚愕しながらも納得する。慌てているタマにパンドラはツッコミを入れた。
「タマッ!? 落ち着くのですよっ!? これの相手させられるのはタマなのですっ!」
「はっ! そうじゃん!? 校長先生っ! 俺がこの鬼さんを相手にするんですか!?」
「はい。この鬼は樹童子。刺した木剣に封印した鬼です。今回の稽古に協力してくれるツクモ神です。喋ってもいいですよ」
そういうと樹童子と呼ばれた鬼は校長を背後から摘み上げる。摘まみ上げた校長を顔に近づけると樹童子は眉間にしわを寄せながら言った。
「あん? 封印がほころんだから出て来てみればいきなり好き勝手言いやがって。 確かに俺様はお前に負けたが、下僕になった覚えはねぇぞ?」
どう考えても制御できていないと言った様子で樹童子は校長に反逆する。それに校長は淡々とした様子で言った。
「出て来て早々に反抗する元気があるとは選んで正解でした。協力してくれれば後で開放しますよ?」
「うるせぇっ! そんな事しなくてもお前をぶっ殺してしまえば問題ねぇだろぅがっ!?」
樹童子は校長を地面に叩きつけようと掴んだ腕を上げる。それに対して校長は冷静に言った。
「そうですか。ですが、あなたの手は既に断ち切れてますよ?」
「は?」
校長の言葉と同時に樹童子の両腕が体から離れた。校長は解放されて軽い様子で着地すると落っこちた腕は黒いモヤとなって消える。
両腕が樹童子は咆哮した。
「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!?」
「全く。反抗的なのは別に構いませんが、時と場合を選んでください。素直にお願いを聞いていれば解放したというのに」
「貴゛様゛ぁぁぁっ!」
樹童子は怒りに身を任せて自身の体に樹木で覆う。元の体からさらに一回り大きくなり、樹童子の腕の代わりに木の腕を作り出すと校長に迫る。
それに校長はため息をついた。
「はぁ。封印した時と全く変わりませんね。とりあえず成長しないあなたの意識は今回はいりません。眠っててください」
「うごっ!?」
校長は樹童子の攻撃をすり抜けるように最小の動きで攻撃を躱してから懐に入り込む。近づいた顔にさらに寄ってからビンタを叩きつけると樹童子の体は地面にめり込んだ。
「おっと。やり過ぎましたか」
「…………」
「お。良かった。まだ生きていますね。頑丈なんで手加減しなくていいのは助かります。体が必要だったんですよねぇ」
校長は張り倒した樹童子を確認して安堵する。確かに死んではいないが、完全に泡を吹いて倒れており、どちらがマシと言われればどっこいどっこいといった様相であった。
「こ、校長先生。こいつ大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ。鬼なんて大概ワガママな上にタフですからこの程度では死にはしません。素直にしてたらこのまま使っていたんですが、反抗的なので今回はこうします」
そういうと樹童子の頭に金属の輪を嵌めた。輪は樹童子の切り落とした腕が消えた時と同じ様な黒いモヤが樹童子を一瞬覆う。その後すぐにモヤは消えた。
それを確認した校長は意識のない樹童子に向かって言った。
「これでよしと。さぁ立ち上がりなさい」
「……」
「え? 意識ないのに立ち上がった?」
校長の命令に意識のないはずの樹童子が無言で立ち上がるとタマが困惑する。目を見ると意識を失ったままなのか白目をむいたままであった。
「むむっ。あの金属の輪っか。嫌な感じがするのです」
「校長先生っ!? あの輪っかって何ですか?」
「これは隷属の輪。頭に嵌めたモノを自由に操るための輪です。それと意識自体はありますよ」
「そ、そんな物まであるんですか?」
校長の説明にタマは緊張した面持ちで樹童子に嵌った輪を見る。校長は言葉を続けた。
「ありますよ。物に宿ったツクモ神やツクモ神が作り出した物には不思議な力が宿っていますから。これはとあるツクモ神から譲り受けた代物で暴れん坊や巨体を持つ犯罪者を無理矢理動かして捕縛した後で移送に使っているのですよ。今回は私が操って戦わせるのに使いますがね」
「なるほど。確かにそれならあり得る……のか?」
釈然としないながらもタマは一応納得してから微妙な表情でつぶやく。こうした疑問を残しながらも校長は宣言した。
「さて。それでは始めましょうか。本物の鬼を使った鬼ごっこを」
「え?」
そう言うと校長の横に居た樹童子はタマ達に向かって一瞬で距離を詰めると拳を振り下ろした。
鬼ごっこ前の準備と開始と同時に攻撃されるお話。




