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22話 ここが箱庭かぁ

 部屋を出てからすぐ隣の部屋。機材や資料等を保管する準備室のような小さな部屋の中には机と白い大きな箱だけが置かれた何もない部屋であった。


 校長はタマ達を連れて箱の前まで移動すると言った。


「到着しましたよ。これが私の鍛錬場です」

「え? それって箱じゃあ……」


 タマは困惑する。目の前にあるのはどう見ても鍛錬場ではなくただの箱であった。


「ああ。重要なのはこの中身なのですよ」


 そういうと校長は被せていた箱を開ける。箱の中には緑の広がる小さな草原の模型があった。


「草原の模型?」

「そうですね。ですが、ただの模型ではないのですよ。これは異界の箱庭という代物です」


 タマのつぶやきに校長が答える。タマは頭を傾げながらたずねた。


「異界の箱庭?」

「はい。通称は箱庭。詳しい事は中に入ってみれば分かりますよ」


 そう言うと校長は置かれた箱に手を向けた。すると校長と箱庭が光り始める。しばらくすると箱庭の横の空間が歪む。


 空間の歪みは大人が通り抜けられる大きさで歪みが固定されると校長は言った。


「さぁ、行きましょうか」

「ん。入ろう」

「え……っと入る……んですか?」


 タマは思わず校長と洋子にたずねる。校長は答えた。


「そうです。そのために開いたのですから行きますよ」

「ん。この箱庭には入った事があるか安全性は保障する」


 そういうと校長と洋子は歪みの中へ入る。残されたタマに頭の上にいるパンドラが言った。


「タマ。行かないのですか?」

「いや。普通は躊躇しない?」

「見れば安定して空間と空間を繋いでる状態なのが分かるので問題ないのです」

「いや。それが分かるのはこういうのを知ってるパンドラだけだろ。まぁ、そこまで言うんなら安全なのは分かるけどさ」

「それならさっさと行くのですよ。それと警戒する事は悪くはないですが、私達よりもツクモ神に詳しい2人が言ってるのですから問題ないと思いますよ?」

「うっ。それもそうか。教えてくれてありがとな」

「えっへん。なのですよ」


 パンドラの言葉にタマは礼を言うと歪みの中へと入る。特に変な事が起こる事もなく、中に入るとそこには広大な草原が広がっていた。


「おぉ。広い。ここが箱庭かぁ」

「ん。分かる。私も初めて見た時はびっくりした」


 タマが周囲の景色に感動するとそれに洋子が同意する。タマは空を見るとある事に気がついた。


「あれ? 空は青いけど、薄っすらと天井みたいなのが見える。アレってさっきの部屋の天井か?」

「ん。上に見えるのはさっきの部屋の天井であってる」

「え? そうなの?」


 洋子が肯定するとタマは意外そうな表情でたずねる。洋子は答えた。


「ん。簡単に言えば模型の中から見た外の景色」

「ここが模型の中って事は……俺達は小さくなってるのか?」


 洋子の話を聞いたタマは考えを口にする。それに洋子が頭を横に振った。


「違う」

「違うのか? どういう事?」


 洋子が頭を左右に振るとタマは混乱する。それに助け舟を出すように校長は言った。


「葛葉君。それでは余計に混乱させますよ。ここは箱庭。さるツクモ神によって創られた小さな世界です」

「世界って事はここは現実なのか?」

「はい。現実です。ここは私がお願いして与えられた空間なのでそこまで広くはありませんが、ツクモ神の力によっては今の地球よりも大きな世界を持っているなんてこともありますよ」

「そうなのか?」


 タマはパンドラにたずねる。パンドラは答えた。


「そうですね。複数のツクモ神が集まって星と同程度の大きさの空間を創造するのは割とあるのです。おじい様とおばあ様が私の生まれ育った世界を創ってましたし」

「マジか。何でもありだな。俺も出来るかな?」

「簡単ではないのです。古くからある神話の規格外の力を持つ創造神や主神クラスが複数集まって初めて作れるのがその規模なのです。今の私やタマだと作れても今ももっているダンボールくらいの大きさを作った後に数年は意識不明なのです」

「それは滅茶苦茶怖いな」


 手に抱えているサイズの箱の世界を創るだけで昏睡状態になるというパンドラの説明にタマは何とも言えない表情に変わる。


 パンドラは締めくくるように言った。


「なので自分で創るというのはオススメしないのですよ」

「みたいだなだな。校長先生。それならなんで空の方にはさっきの部屋の天井が見えるんだ?」


 タマは上の景色についてたずねる。


「上空に見えるのは模型の中から見える景色を映し出しているのですよ。入った後に外から奇襲されたり、閉じ込められたりはされたくないでしょう?」

「うぇ。確かに」


 校長の説明にタマは納得する。タマは気になる事を口にした。


「そういえば……ここって壊れたりしないよな?」

「基本的には壊れたりはしませんよ。ここの草木は燃えても外が燃える事はありませんし、全員が外に出れば元に戻ります」

「そうなんだ。ちなみにどれくらいだったら壊れたりするんだ?」

「うーん。そうですね。星が爆発するような熱量や空間そのものを崩壊させるような力を出されたら流石に耐えられませんが、基本的にはどうやっても壊れませんよ」

「へー」


 タマは分かったような分からないような呆けた表情で返事をする。パンドラはタマから洋子の方へと移動すると2人はひそひそと喋り始めた。


「パンドラさん」

「タマは絶対分かってないのですよ」

「ん。やっぱり」

「……聞こえているぞ」


 はっきりと聞ける内容にタマはジト目で洋子とパンドラを見る。一方で気にしていない2人は言った。


「聞こえるように言ったのです」

「ん。分からないなら無理しなくていい。タマ。実際は?」

「……わからん。星が爆発するってどれくらいなんだ?」


 タマは気まずそうに答える。それを聞いた洋子は微笑んで頭を撫で始めた。


「ん。素直に疑問を口にできていい子」

「もうっ。同い年だろ。でどれくらいなんだ?」

「ん。数えるのもバカらしくなる程0を並べる必要がある途方もない数字の量。気にするだけ無駄。全力で動いても問題ない。それにしても髪が柔らかい。気持ちいい。抱き着いていい?」

「っ!?」


 突拍子のない洋子の言葉にタマは身の危険を感じて離れる。洋子は名残惜しそうに言った。


「ん。残念。もう少し堪能したかった」

「抱き着くのはダメ」


 洋子の言葉にタマは手で×の形を作りながら答える。


「それなら他は良いの? ほっぺをムニムニしたりとか頭のてっぺんを嗅いだりとか」

「ダメ」

「……代わりに私にも同じようにしてもいいよ?」


 洋子は誘惑するようにそういうとタマは揺らいだ。


「うっ……ダメだよっ!? もっと自分を大事にしろっ!?」

「ん。残念。今回は断念」


 洋子の説得にタマは少し同意しそうになりながらも拒否した。それに洋子は表情を変えないまま特に残念そうには見えない様子で答える。


 このまま続けるのは良くないと思ったタマは話題を変える為に校長に話しかけた。


「こっ校長先生。今回やる稽古って何ですか?」


 タマは今回やる稽古についてたずねる。


「そういえば稽古の事を言ってませんでしたね。今回は鬼ごっこです」

「「鬼ごっこ?」」


 校長の出した予想外の内容にタマとパンドラは頭を傾げた。

 少し遅れましたが、更新です。校長の鍛錬する場所は普通じゃない場所であるというお話。ちなみに描写がほとんどありませんが、タマは肌身離さず常に小さいダンボール箱は抱えています。

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