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8話 葛葉さんのままじゃダメ?

 タマ達が午後の授業の申請を終えてから校舎を出て帰宅している最中。歩いているとパンドラが突然振動し始めた。


 頭に乗っけていたタマは突然の振動に慌てた様子でたずねた。


「ぶぶぶっ!? どっどうしたっ!?」

「あ。ごめんなさいです。少し悪寒がしたのです」


 パンドラは振動を止める。どう考えても悪寒というには振動しすぎなパンドラにツッコミを入れたいタマは言葉を呑みこんでからたずねた。


「悪寒?」

「はい。こういう時に感じる悪寒は大概ロクでもない事が起きるのです」

「何が起きるんだよ……」


 パンドラが真剣な表情で言うとロクでもない事という言葉にタマは警戒した様子でつぶやく。それを見ていた洋子は自身に憑いている玉藻にたずねた。


「ん。玉藻。これは無視して良い奴?」

『無視しない方が良いぞ。洋子』

「分かった。パンドラさん。他にも何か感じる事はない?」


 玉藻の言葉に洋子はゆったりとした声音でパンドラにたずねる。パンドラはうなり始めた。


「むむむっ!」

「何か見えそうか?」


 唸り声をあげるパンドラにタマは心配そうに声をかける。聞こえていないのか少しするとパンドラは声を上げた。


「——見えたですっ! デッカい何かが見えたのですっ!」

「デッカい何か……もしかして。紅蓮達の言ってたツクモ神?」

『そういえばそんな事を言ってたのぅ。という事はそれがここに来るのか』


 パンドラの言葉に洋子と玉藻は推測を口にする。


「紅蓮達が言ってたツクモ神。それを相手にしないといけないって事?」

『それについては紅蓮達の報告待ちで良いと思うぞ?』

「それもそうか。パンドラさんは大きな相手に心当たりはない?」


 洋子は少しでも情報を得られないかたずねる。パンドラは少し考えてから答えた。


「知っている巨人……ティターンがそうなのですよ。ただ、誰かまでは分からないのです」

「ティターン……」


 洋子はつぶやきながら玉藻を見る。玉藻は頭を横に振った。


『言っておくが、私は外国の神話には詳しくないから答えられんぞ』

「タマは何か知ってる?」

「俺? 俺も神話は詳しくないから何とも」


 タマは頭を左右に振るとパンドラは口を開いた。


「ティターンは私の属する神話の古い神々なのです。特徴としては子孫も含めて全員巨大なのです」

「ん。巨体となると特徴と一致する。誰かまでは分からないというのは?」

「トップは12柱ですが、子孫を含めたら数はかなり多いのです。特にお父様は敵対してた関係で恨みを持ってる可能性もあるのです」

「なるほど。そうなって来ると確かに絞り切れなさそう」

『目的はパンドラという事か。恨みか?』

「それにしては何というか粘っこい感覚がしたのです。私と対峙はしてたけど、私が狙いとは限らないのです」

『粘っこい……か。となるとストーカーかもしれんの。誰を狙っているのかは分からんが』

「ストーカーって……会った事もないのにか?」


 玉藻の言葉にタマが頭を傾げる。それに真面目な表情で答えた。


『例えこちら側が見た事はなくとも一目惚れする輩というのはいるものじゃ。お主も気を付けるのじゃぞ』

「ん。タマも狙われるから気を付けるべき」

「おっおう?」


 玉藻と洋子の言葉にタマは何とも言えない表情で答える。洋子は話を締めくくるように言った。


「とりあえず今の情報は後で持って行く。もしかしたらタマ達にもお仕事を頼むかもしれない」

「分かった。協力すればいいんだな」

「ですね。私も関係あるかもしれないとなるとほっとけないのです」

「んん。スムーズ」

『うむ。助かるぞ』


 タマとパンドラの反応に洋子と玉藻はそれぞれ反応する。ずっと黙っていたリラはおずおずと口を開いた。


「わ、私もお手伝いすることはありませんか? 洋子お姉様」

「ん。リラにお願いすることがあるかもしれない。その時は力を貸して」

「はいっ!」


 洋子は優しく言うとリラは嬉しそうに答える。洋子はタマの方を見て言った。


「後、そろそろタマは私の呼び方を変えるべき。呼び捨てを希望」

「えぇ。葛葉さんのままじゃダメ?」

「ダメ。リラは良くて私はダメなの?」

「うっ」


 洋子の言い分にタマは言葉が詰まる。しばらくお互いに見合っているとタマは根負けしたのか観念した様子で口を開いた。


「……分かった。よ、洋子。これでいい?」

「ん。今はそれでおっけー。慣れてきたらあだ名で呼びあおう」

「わぁ。いいですね。一緒に考えませんか?」


 リラが洋子の言葉に賛同しながら提案する。洋子はうなずいた。


「それもアリ。この先に喫茶店があったはず。そこで考える?」

「良いですねぇ。女子会ですか。行きましょう」

「女子会……。あの……2人共? それはそれでハードル高いんだけど?」


 洋子とリラが楽しそうに話を進めていく。その内容にタマは困惑した様子で答えると洋子は言った。


「ん。皆の分は私がおごるよ? 喫茶店のケーキ美味しいよ?」

「タマ。喫茶店。行きましょう」

「パンドラッ!?」


 洋子の一言でパンドラは陥落する。


「ん。タマも観念して一緒に行こう。1度行った事があるから味は保証するよ?」

「うっ。ケーキ……」

「そう。美味しい。ケーキ。行かない?」

「ケーキ……行く。はっ!」

「ん。陥落。ぶいっ」


 洋子の誘惑に耐え切れずにタマはうなずく。洋子は完勝といった様子でダブルピースする。


「さすが洋子お姉様です」

「了承は取れた。行こう。リラ。手伝って」

「承知しました」

「わわっ」


 洋子はそう言うとリラと一緒にタマを引きずって喫茶店へ向かうのであった。

 パンドラの悪寒と呼び合うなら名前なお話。

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