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5話 綺麗な歌だな

遅くなりましたが、更新です。

 リラと洋子を追ってタマ達は中庭にある大きな噴水へとたどり着く。同時にタマの耳には歌が聞こえて来た。


『~♪』

「反対側で誰かが歌ってる……のか?」

「歌? 聞こえないよ?」

「そうだな。何も聞こえないぞ?」


 タマのつぶやきに対して洋子と紅蓮からタマと異なる反応が返って来る。その隣であり得ないモノを見たような表情でタマを見ながらリラが頭を傾げた。


「え? 聞こえるんですか?」

「ん? ああ。綺麗な歌声だよな。何言っているのかは全く分からないんだけどな」


 タマがうなずくとリラは困惑した様子で答えた。


「え……えっと。この声は私の相方であるツクモ神のソプラノです。セイレーンと呼ばれる種族で歌には人を誘惑する力があるので普段は契約してない人には聞こえないはずなんですが……」

「そうなのか?」


 タマは一緒に来ている洋子たちにたずねる。


「ん。歌は聞こえない」

「ですね。私にも聞こえないのです」

「俺も聞こえないぜ」

「そうだな」


 洋子とパンドラの女性陣だけでなく、紅蓮と蘆屋の男性陣聞こえないと答える。一方で歌が聞こえるタマに洋子は言った。


「タマだけ仲間外れ」

「不思議ですね。タマちゃんは何で聞こえるんでしょうか?」

「なんでだろうな?」


 からかうように答える洋子と不思議がるリラがそれぞれつぶやく。2人の反応を無視してタマは特に気にした様子もない状態で返事をすると最初に噴水の裏手に回り込んだ。


「~~♪ 誰っ!?」


 裏手に移動してたタマの視線の先には小さな人魚が歌っていた。


 噴水の縁の上で手は鳥の翼。下半身は魚。他は人間の女性の姿をしたセイレーンと呼ばれる種族のツクモ神はタマ達の気配を察知したのか警戒した様子で声を上げる。


「あっ怪しい者じゃないぞ。リラの友達だ」

「リラの?」


 リラの名前が出てくるとツクモ神の警戒が弱まる。その直後のタイミングを見計らってリラが出て来た。


「やっほ。オリエンテーション終わったよ。ソプラノ」


 リラが目の前にいるツクモ神の名前を呼ぶ。ソプラノと呼ばれた彼女は翼を羽ばたかせてリラの頬に向かって体当たりした。


「やっほじゃないわよっ!? このっ!? おバカァァァァァァッ!?」

「ぶっ!?」

「っ!?」


 唐突な体当たりにリラが吹っ飛ばされた。いきなりの状況にタマ達は呆然とする。


「あんたねぇっ!? ここで待ってろって言ってからどれだけ待たせるのよっ!? 」

「入学式だから時間が掛かるって言ったじゃないですかっ!?」


 体当たりされた事に起こりながらリラは言い返す。


「言ってないわよっ!? 「後で迎えに着ますからここで待っててください」しか言ってないじゃないっ!?」

「…………そうでしたっけ?」


 リラは覚えていないのか頭を傾げる。最初の体当たりでそこそこ気が晴れたのか呆れた様子でソプラノは答えた。


「はぁ。うっかりなのは昔からだからもういいわ。迎えには来てくれたみたいだしね。それで? その子たちが貴女のクラスメイトかしら?」

「はい。初めてのお友達のタマちゃんと洋子お姉様とクラスメイトの男の子達です」


 リラが笑顔で答えるとソプラノは呆れた様子で答えた。


「お姉様ってまた? 懲りないわねぇ」

「そんなに多いのか? えっと……」

「リラから聞いているかもしれないけど、ソプラノよ。呼び捨てで良いわ」

「分かった。ソプラノ。俺はタマって呼んでくれ。それでなんだけどリラはもの凄く惚れっぽいのか?」


 タマはソプラノにたずねる。ソプラノはうなずいた。


「ええ。凄かったわよ。中学生の時も男の子女の子関係なく優しくされたらコロッと行くのよ。それもしょっちゅう」

「そうか。大変だったな」


 呆れた様子でソプラノが答えるとタマはうなずく。その反応にソプラノは顔を上げた。


「うぅ。分かってくれるの?」

「完全にっていう訳じゃないけどな。さっき洋子に対してお姉様呼びし始めた様子を見ていたら大変なことが色々あったんだろうなって思っただけだよ」

「そうなのよ。この子惚れっぽすぎて同じ学年の子ほとんどに告白したことがあるのよ。二股とかはしてないけど、恋人の関係は長くは続かなかったわね。彼女持ちの子に手を出してその彼女さんと大喧嘩した時はドン引きしたわね」

「えぇ……」


 ソプラノが早口で答えるとタマはドン引きする。その様子に照れた様子でリラは答えた。


「えへへ。あの喧嘩で反省してからは恋人持ちの子には手を出してませんよ?」

「そうだな。そのままお相手がいる人には手を出さないようにな。後、後ろから刺されないようにな」


 タマは少し警戒した様子でそう言うとリラは苦笑した。


「ははっ。優しいですね」

「余り調子に乗せないでね。本気にしちゃうと厄介よ」

「酷いですっ!?」


 ソプラノが辛辣にそう締めくくる。リラは抗議するが、ソプラノはあえてそれを無視する。タマは話題を変えるようにたずねた。


「そういえば何で歌ってたんだ?」

「趣味よ。暇なときはこうして歌ってるのよ。他の人には聞こえないよう契約者であるリラに誘惑する封印してもらってね。……え? 歌聞こえてたの?」


 ソプラノはタマの質問に答えた後に聞き返す。タマは答えた。


「ああ。綺麗な歌声だったぞ。何言っているかは全然分からなかったけどなだけどな」

「そっそうなの?」


 タマがそう答えるとソプラノは困惑した様子で答える。その反応にタマが頭を傾げた。


「そんなに歌が聞こえるのが不思議なのか?」

「ええ。私達セイレーンは歌で海に居る人を誘うわ。だけど、リラにその力を抑えて貰ってるから歌声が人の耳に届く事なないはずなのよ。どうしてかしら? ところで他に感想はあるかしら?」

「少し引きつけるような感じはしたかな」


 困ったようにソプラノは頭を傾げながらたずねる。タマも同じように頭を傾げて答えるとソプラノは少し安堵した様子で言葉を続けた。


「そう。少し引きつけるような感じがする程度だったらそこまで気にしなくてもいいわ。封印もきちんと機能しているみたいね。それはそれとして何か心当たりはあるかしら?」

「心当たり……あるかも」


 タマは半分はパンドラと同じツクモ神であることを思いつく。ただ、流石に素直に答える事に抵抗があるのか言い淀む。


 その反応にソプラノはたずねた。


「教えてもらえる? 少し興味があるわ」


 タマは少し考えてから頭を左右に振った。


「うーん。それについては少し勘弁して欲しいかな。色々と調べてる途中っていうのもあるから」

「そう? まぁ。無理強いはしないわ。教えたくなったら教えてちょうだい」


 タマの反応からあっさりとした返事が返って来る。それにタマはたずねた。


「いいのか?」

「何かで強い影響があるとかだったら別だけど、そうじゃないでしょ?」

「うん。綺麗な歌だなって思っただけ」

「それなら深く聞かなくても問題ないわ。それと綺麗な歌って言ってくれてありがとうね。純粋な感想は嬉しいわ」


 タマの答えにソプラノは微笑む。それにつられる形でタマも微笑んだ。


「そうか。こっちもいい歌聞かせてくれてありがとうな」

「ふふっ。良い子ね。これからよろしくね。タマ」

「ああ。よろしく。ソプラノ」 


 タマはそう言うとソプラノと握手する。そんな感じでリラの相方であるソプラノと仲良くなるのであった。

 リラの相方であるセイレーンのソプラノとの交流のお話。

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