4話 お姉様っ!?
「「むっ」」
洋子とリラが資料のページをタマに見せながら牽制するようににらみ合う。微妙に張り詰めた空気の中でそんな2人にタマは頭を抱えた。
「待って。一応言っておくけど、俺完全な初心者だからね?」
「ん。だから戦闘学基礎。体を動かすのと生き残るため動きを学んでおくと便利。一緒に受けよう?」
「占術や魔術は海外のツクモ神から受ける事が出来るみたいです。学ぶ内容的には基本的な部分は学べると思いますよ。一緒に授業を受けませんか?」
「ひゅー。モテモテですね。タマ」
「茶化さないでよ」
2人に挟まれた様子を見たパンドラの言葉にタマは鬱陶しそうに答える。
「それで」
「どっちにする?」
洋子とリラが迫る。その様子にタマは2人が出してるページを見ながら2人を交互に見て答えた。
「えっと……両方じゃ……ダメ? 一応、時間は重なってないみたいだし」
「「両方?」」
タマの言葉に洋子とリラはきょとんとした様子でお互いを見る。確かに時間の指定は重なっていなかった。
「ん。確かに出来ない事はない」
「ですね。一緒に受けますか?」
「ん。一緒に勉強楽しそう」
「ですよね。交渉成立です」
洋子とリラは握手をし始める。同時にタマの方を見ると真剣な表情で言った。
「「というわけで一緒に受けよう」」
「それだったら別にいいけど……仲いいね!?」
結託して迫って来る2人タマはドン引きしながらうなずく。同意を得られた洋子とリラはハイタッチをすると自身の受ける授業の欄を記入する。
「ん。タマも書く」
「一緒に提出しちゃいましょう」
「わかった」
「流されてますねぇ」
タマはうなずくと受ける授業を書き始める。
「いや。正直、授業の事は全然分からないんだから聞ける人がいる授業を受けた方が良いだろ?」
「なるほど。賢いです」
タマの言葉にそれを見ていたパンドラが納得する。肯定的なタマの言葉に洋子は言った。
「ん。何でも聞いて」
「あははっ。そうですね。私も出来るだけ力になりますよ」
そう言うとタマ達は受ける授業を書き終える。出す方の紙の記入を終えるとリラが口を開いた。
「あ。しおりの時間割の方に午後の受ける授業を記入する欄があるので書いておいた方が良いですよ」
「あ。そうか。ありがとう」
「ん。盲点だった。助かる」
「いえいえ。それほどでもですよ」
タマと洋子が礼を言うとリラは照れる。2人が書き終えるとリラは言った。
「2人共書き終わりましたね」
「おう」
「終わった」
「それでは出しましょう」
タマと洋子が書き終えるとリラが提案する。
「おっけー。そういえば紅蓮と蘆屋さんも終わったか?」
「ん? ああ。俺らはもう少し調べてからだな。お勤めの予定とかもあるしな」
「そうですね。私もアンナさんとの連携を強めるために受ける授業は厳選するので後にします」
「そうか。将来の事をしっかり考えてるんだな」
タマは感心する。それに紅蓮と蘆屋は力強くうなずいた。
「おうよ。九十九士と言ってもやるからには最強を目指してるからな。その為には妥協は出来ねえぜ」
「当たり前ですよ。将来をアンナさんと過ごす為の資金を集めたいですから」
「凄いな。そこまで考えてるのかぁ」
「おうよ」
「当然です」
タマの反応に当然といった様子で男子2人が返事をする。そんな内容を聞いていたリラが落ち込んだ。
「うぅ。思ったよりも将来を考えてるのです……」
「ん。私も家を継ぐために色々してるけど、自分は自分。よそはよそ。自分のペースで決めて進めていくのが大事」
「葛葉さん……。いえ。洋子お姉様」
「お姉様っ!?」
「んんっ!? 私達同い年っ!?」
恍惚とした表情で答えるリラに見ていたタマと彼女の対象になった洋子が慌てた声を出す。リラがずいっと洋子に迫ってから抱き着く。
ネコのように体をスリスリし始めるとどうすればいいのか分からずに洋子はタマに助けを求めた。タマはどうすればいいか分からずにパンドラを見る。パンドラは特に気にした様子もなく答えた。
「放っておいても大丈夫だと思いますよ?」
「うっ。酷い」
パンドラの言葉に洋子は恨めしい視線をタマとパンドラに送る。そんな様子を気にせずにリラは洋子にたずねた。
「洋子お姉様は何がお好きですか? 今度作ってきますので教えてください」
「ん。ステーキかハンバーグ。焼いたお肉は正義」
洋子がそういうとリラはその答えに引くことなくうなずいた。。
「分かりました。それでしたら今度素敵なお肉の料理を作ってきますね」
「ん。楽しみにしてる」
洋子がそう答えるとリラは嬉しそうに微笑む。落ち着いてきた様子を見計らって洋子は言った。
「ん。それはそれとして。そろそろ放してくれるとありがたい」
「わかりましたっ!」
洋子がそう言うとリラは洋子から放れる。それを見ていたパンドラがつぶやいた。
「それにしてもなんというか……惚れっぽい子ですねぇ。アフロディーテみたいです」
「確かパンドラの所の女神様の1柱だっけ?」
「はいなのですよ。リラは女性なので流石に他の男神達で例えるのは気が引けるのですよ」
「達って事は複数いるんだよな? ちなみに男神だと誰がいるんだ?」
「筆頭はお父様ですね。身内の恥で詳しくは言えないのですが、それでよくお母様とケンカになってるのです」
「おっ。おう。そ、そうか」
有無を言わせない様なパンドラの雰囲気にタマは聞くのをためらう。タマは洋子とリラを見るといつの間にか従順な様子を見せるリラを手懐け始めていた。
「ん。抱き着くのは良いけど、放して欲しい時にはきちんと放してね。それが出来るならいつでもいいよ」
「はい。分かりました。洋子お姉様っ!」
「よろしい。抱き着くことを許可しよう」
「はいっ!」
「放して」
「はいっ!」
「許可する」
「はいっ!」
洋子が許可を出すとリラはためらいなく抱き着く。放してと言うと洋子から放れる。もう一度許可をだすと磁石のように洋子の肩に抱き着いた。
そのままの状態で洋子は移動するとタマに言った。
「タマ。行こう」
「お、おお。大胆だな」
「不意打ち気味に来られたから困ってた。来ると分かってるならそこまで問題ない」
「洋子お姉様の事も大好きですが、タマちゃんの事も大好きですよ。ただ、今は洋子お姉様の方を優先させてください」
「あ。ああ。存分に楽しんでくれ」
「ふふ。優しいですね。ありがとうございます」
そう言うとリラは洋子の肩の方で頬をスリスリし始める。洋子は特に表情を変化させることなく紅蓮と蘆屋の方に声を掛けた。
「ほら。2人も行くよ」
「おっ。おう」
「アンナさん。私達も負けられないな」
「何を言ってるのよ。そんなことしなくても私たちの絆はその程度ではないでしょ」
「っ!? アンナさん」
「ほら。2人共行くぞ」
蘆屋と彼のツクモ神のアンナが寸劇を始めると紅蓮が手慣れた様子でそれを阻止して立ち上がらせる。
「タマも」
「そうだな」
洋子の言葉にタマは立ち上がると言葉を続けた。
「そういえばリラの相方のツクモ神はどこにいるんだ?」
「それだったら校舎内の中庭にある噴水の方にいると思いますよ。会いたいのですか?」
「これからお世話になるかもしれないから挨拶だけはしておこうかなって」
「そうですかそれでは案内しましょうか。こちらです」
「あ。このまま引っ張るんだ」
リラはそう言うと洋子と腕を組んだ状態のまま引っ張って移動を始める。
「行こう」
「はいなのですよ」
「おう」
「はい。行きましょう。アンナさん」
「よろしくね」
その後を追ってタマ達も校舎の中庭にある噴水へと動き始めた。
惚れっぽいリラに洋子がお姉様と呼ばれるお話。




