86 匂いで全員起床しました
早速、昨日作ったばかりのバターを使う。ジャンさんに1番大きな鍋を出してもらって作ることにした。ついでに、見張り中でも作業はできるみたいなので、レタスを1枚ずつ剥がして水洗いするように頼んでおいた。
土魔法でかまどを作って鍋を置く。薪を火魔法で強引に燃やして準備完了だ。火加減はまだ難しいけど、焦げなければ何とかなるだろう。ガスコンロが恋しい…。
鍋の中で、バターがじゅわりと溶けた。
火にかけた瞬間に立ち上る、甘くて濃い香り。そこへレッドボアの肉を放り込み、表面にしっかりと焼き色をつける。
なんで焼き色のついたお肉って美味しそうに見えるんだろう? 実際に美味しいから、肉の旨味はこの焼き目に詰まっているんだろうな。
ひと通り焼けたところで、玉ねぎを加えて、しんなりするまで炒める。続けて人参とじゃがいもも鍋へ。軽く混ぜ、全体に脂を回す。
一旦、鍋をかまどから降ろして小麦粉を適量、中に振り入れる。本当は火にかけたままやるんだけど、今の私には難しいからしっかり混ぜることを優先した。
ある程度混ざったらかまどに戻して火を通す。焦げないように気をつけて混ぜたら水を少しずつ注ぐ。
一気に入れると大変なことになるので、ちょっとずつ。ダマにならないようにゆっくり混ぜながら水を入れると、鍋の中身はなめらかな感じになってきた。
塩と牛乳を加えると、色がやわらかく変わる。そこへ白菜を投入し火を通す。水分と甘みが溶け出してきたら最後にほうれん草を入れてさっと混ぜ、火を通しすぎないように気をつける。
仕上げに、バターをひとかけ。
ゆっくりと溶けていくそれを見届けてから、味を確かめる。
「……これなら、十分だな」
前世ではコンソメや鶏ガラの顆粒だしを使ったり、シチューのルーで手早く作ったり、安くてお手軽にできる作り方ばかりだったから、ちゃんとできるか心配だったけど、想像以上に美味しく作れた。
新鮮な牛乳とそれで作ったバター、あとはレッドボアのお肉のおかげだな。
残りの時間でお手軽なパンっぽいものを作る。小麦粉に塩と卵と牛乳を入れて混ぜる。耳たぶくらいの柔らかさになるよう調整して、薄く伸ばしたらフライパンで焼く。バターを使って焼くとさらに美味しいけど、植物油でも十分だ。
牛乳や水の量を増やせば、いつも作っているクレープ生地になるけど、今回のはシチュー用なのでモチモチパンだ。
バターの焼ける匂いがもう美味しい。この薄焼きパンだけでもご馳走だな。
ご機嫌でパンを量産する。たぶん、私の想像以上に食べると思うから、今からたくさん準備しておこう。
「ノア〜、もう限界なんだけど…」
「ジャンさん、まだ朝食の時間じゃないですよ」
「わかってるけど、もうお腹すいたよ〜。見てよ、3人ともテントから顔出して待ってるよ!!」
「そうですか?」
「そうだよ!! この匂いのせいで皆起きちゃったんだから、もう食べようよ」
「まだ焼き終わってないんですよ。こねたり、伸ばしたりするから時間かかりますし」
「野菜は洗ったからこっちを手伝うよ。早く終わらせるなら皆に手伝ってもらえば?」
「うーん…」
フライパン1つで焼いているからそんなに早くはできない。朝だからできればのんびり料理したいけど、テントから伝わる雰囲気は真逆だ。
待たせるのもなんだし、こねて焼くだけだから料理初心者にもできるだろう。私が材料を器に入れて、皆が混ぜて伸ばして焼く。うん、これなら簡単だしすぐにできそうだ。
「皆さん、手伝ってもらえますか〜?」
「いいよ〜。見てたからすぐにできると思う。どれやればいい?」
すごくスムーズに進むんだけど…。余程早く食べたいんだな。
リーダーが新しくかまどを作って火をおこしている。このパーティーが持ってるフライパンの数は3つ、かまどの数も3つだ。焼く気満々だな…。
私の仕事は器に材料を目分量で入れていき、こねた後の生地をチェックするだけだ。あっ、フライパンにバターを入れるのも私の仕事だったよ。
4人で分担して作業をすると、どんどん薄焼きパンが出来上がる。冷めないようにアイテムボックスに収納するんだけど、後でちゃんと出すからそんなに悲しそうな顔をしないでほしい。
こういう簡単な料理は問題なくできそうだし、これからも皆にやってもらおう。
「もう十分焼いたので、そろそろ朝食にしましょうか」
「了解!! 早く食べよう」
テキパキと食器を出し、準備万端だ。シチューと薄焼きパンのセットは絶対に美味しい。味わっていたらなくなるから、自分の分だけは先に確保しておこう。
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