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第九章


別に父のことも、母のことも、決して嫌いではない。


けど高校生になってから、格段にお見合いの回数が増えたのは少なからず迷惑なことだった。


父にとっては仕事の付き合いだし、無下にできないのは分かるんだけど。


年に四回はあるお見合いにもう慣れてしまったとはいえ、やっぱり嫌なものは嫌。




今、父と相手の父親は楽しげに談笑している。


……いや、腹の探り合いというべきか。


笑顔なのに目が笑ってないもの。


「二人で散歩でもしてきたら?」


二人の攻防戦に危機感を感じたのか、母が私達にそう言ってきた。


正直、相手の人と二人きりも嫌なんだけど、暗雲が立ち込めてるのは確か。


私は気付かれないよう溜め息をつき、席を立った。





「桜さんは高校三年生でしたね。大学はやはりアメリカに?」


手入れの行き届いた庭を歩きながら、声をかけてくる男の人。


にこにこと微笑む彼に私は作り笑いを浮かべる。


「アメリカは苦手なんで、できれば日本でと思ってます」


「ですがやはり名門校を受けられるんですよね?庶民と一緒に、というのは耐えられないでしょう」


今、大学二年だというその人のその言動に、顔に貼り付けた笑顔が引きつりかける。


なんという金持ち的考え。

理解できない。


「そんなことはないですよ。現に今の高校には金持ちとか庶民とか、そういう考えはありません」


っていうか今さらそんな昔気質なこと、父ですら言ったことはない。


「桜さんは優しいな。まさに私の妻に相応しい」


……はい?妻?


相手の言動に私は思わず立ち止まる。


私は断る気満々なんだけど、どうやらこの人はそうじゃないらしい。


……ヤバイかも


「優しくなんてないですよ、私は」


「その謙虚な姿勢も私好みです」


あぁ、逆効果みたいだ。


どうやら人の話を聞かない、自分本意な人らしい。


私が一番苦手とするタイプ。


「私は欲しいものは必ず手に入れる主義でね」


「え……ちょっ…」


後退りする私を捕らえようとする手。


その手から逃れようとした私は、背後から伸びた別の手に捕まった。


「なっ……なんで……?」


「桜ちゃん、大丈夫?」


そこには荒い息を繰り返しながらも私に微笑む清貴さんの姿があった。


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