第五章
「桜、携帯……メールみたいだよ?」
机に突っ伏した私に、雅がそう言って声をかけてきた。
「いいの。どうせメルマガだから」
顔も上げずそう答えたけど、違うって分かってる。
メールの相手は清貴さん。
勉強を教えてもらった日から一週間。
私は彼との全ての繋がりを絶とうとしていた。
あの日。勉強を中断して間もなく、清貴さんに電話がかかってきた。
相手は仕事の取引先の人らしく、急ぎ確認したいことがある、という呼び出しの電話だった。
仕事なんだから仕方がない。
何度も謝ってくれる清貴さんを半ば追い出すように送り出して。
ドアが閉まった途端、私は泣き崩れた。
苦しかった。
本当は"行かないで"と叫び出したかった。
でもそんなことしたら嫌われてしまうかもしれない。
彼は社会人で、私は学生。
ただでさえ年の差に苦しい想いをしてるのに、住む世界すら違う。
そのことを突きつけられた気がした。
「ねぇ、帰りにカラオケ行かない?」
放課後、席を立つと同時に雅がそう言ってきた。
見れば、雅の後ろで雄大が小さく頷いている。
「久しぶりに桜の歌、聞きたいの。だめ?」
私の手をギュッと握って、首を傾げる雅は可愛い。
私にはない、女の子の部分。
「うん……そうね。久しぶりに行こうかな」
気分転換にはいいかもしれない。
雄大も構わないみたいだし、今日は思い切り楽しもう。
そう心に決めて、私は雅達と歩き出した。




