第二章
学校からの帰り道を、いつもとは違い、一人で歩く。
家が近いこともあって、いつもは雅と雄大と私の三人で帰っていたんだけど。
「あれは笑えた……」
学校でのことを思い返し、私は思わず笑ってしまう。
誰に言われるまでもなく、二人が付き合い出したら私は別に帰るつもりだった。
だってわざわざ二人の邪魔するようなことしたくない。
けれどそこで鈍感、雅の真骨頂が垣間見えることになる。
なんと私にも一緒に、つまり今まで通り三人で帰ろうと彼女は言い出したのだ。
「あの雄大の顔ったら……」
あからさまにオロオロし出す雄大に私は笑いを堪えるのに必死だった。
そして痛いお腹を押さえながら、用事があると嘘をつき、雅を宥めたのだ。
「まぁ雅らしいんだけど」
今まで色恋について全く関心を示さなかったくらいだ。
これくらい当然といえば当然のこと。
しかし、ここまでくると少し雄大が可哀想になってくるけど。
「でも私が言うとお節介だしな……」
どうしたもんか……
道を歩きながら考えていると、背後からクスクスと低い笑い声が聞こえた気がした。
「……っ?!」
訝しげに振り返った私は、そこにいたスーツの男性の姿に絶句する。
「……清貴さん」
「偶然だね、桜ちゃん。今帰り?」
清貴さん――この人が社会人二年目、六歳年上の私の彼氏。
「……いつから?」
「結構前からかな。桜ちゃんの百面相、可愛かったから声かけるの躊躇ってた」
……見てたなら、さっさと声かけてくれたら良かったのに。
「……意地悪っ」
「意地悪な俺が桜ちゃんは好きなんでしょ?」
「うっ……」
言葉を詰まらせた私を引き寄せて、清貴さんは私の肩に手を回すとそのまま歩き出した。
にこにこと楽しげな清貴さんにムカついてくる。
でも大きな抵抗も出来ずに、私はまんまと彼の腕の中へと捕まったのだった。




