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大罪の娘  作者: 武部恵☆美
第25章 大いなる調律の駒
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第486話

 ゼリーは結界だ。

 秘書()を庇い、半身を失ったゼリーは、秘書()がゼリーの生まれ故郷から鈴がしたように結界を千切り取り、ゼリーの身体を修復した。しかし、補修はできたが、完全には治らなかった。それでも秘書()の献身的な看護とリハビリで徐々にではあるが、回復していった。

 では秘書()は?

 秘書()はゼリーのお陰で大した怪我を負うことはなかった。だが複製体()たちは敵対する何者かに意識を乗っ取られてしまったらしい。なので頼ることはできない。それまで使っていた拠点も同様だ。

 複製体(魔由香)の安否も分からないが、無事とは思えない。そうなると教団は?

 秘書()が遠見の魔法で見た限りでは、今のところ無事なようだ。魔由香や司教・司祭・信者たちも普段と変わらぬ生活をしている。それでもいつ敵対する何者かの手が伸びてこないとも限らない。狙われているのは複製体()だ。だから教団と手を切れば信徒たちに手は伸びないはずだ。

 そうなると食料をどうにかして調達する必要がある。秘書()は悪いと思いつつ、山の所有者に許可無く山菜や木の実を採り、川や海で漁業権がないのにも関わらず漁をして食料とした。


「はぁ、イーリンになんて言われるかな……」


 などとぼやきながら、調理をして食事をした。しかし、それでは補えないものもある。


「お米が食べたい……パンも食べたい。うどん、そばにラーメン……ああ……はあ……」


 調味料程度なら錬成すればいいが、食材となると食べたところで栄養にはならない。食べても気持ちは満足するが、身体は食べれば食べるほど乾いてしまう。究極の嗜好品……とでもいえよう。

 そんな日々を過ごしつつ、イーリンと過ごした隠れ家は足が付く可能性があるから使わず、根無し草となってゼリーと共に放浪している。そして魔由香の様子を覗き見るのが日課になっている。

 その日もいつものように覗き見ていた。魔由香はいつものように鈴の部屋を清掃していた。同じ手順、同じ所作、同じ時間を掛けて手際よく熟していく。


「今日も元気そうね。もう掃除しなくていいって言えたらよかったんだけど……言ったところで止めるとも思えないけどね。ふふっ。あら?」


 いつものように清掃が終わって部屋を出ると、アンゼル司教が待っていた。その後二人は別れ、魔由香は掃除道具を片付けて身なりを整えると司教の部屋へ行き、司教自ら魔由香をもてなした。


「あっ、いいなー」


 テーブルにはクッキーやケーキと、色々なお菓子が用意されていた。魔由香は遠慮がちにクッキーを食べ、紅茶を飲んだ。そして今度は幸せそうな顔をしながらケーキを頬張った。


「くぅー、いいないいな! 私も……く……ダメ! 今日はここまで! 食べたくなっちゃう」


 そう言って覗き見を止めてしまったことを、後に後悔することになる。

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