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24.おばあちゃん強し!

当初の予定では、綾子は父と息子共々ここから引きずり出すはずだった。

だが、気が付いたときには、綾子自身もこのコテージから出られなくなっていた。


「せっかくなんだから、綾子ちゃんも一緒に泊っていきなさいよ!」


「そ、そうですよ!二棟借りてるらしいんで、女子チームと男子チームで別れましょう!」


昌子の提案に、香織は大きく頷いて、綾子の腕にしがみ付いた。


「女子チームって、おばあちゃんも女子?いいねぇ!」


昌子は香織が掴んでいる反対側の綾子の腕を組んだ。


「いいねぇ!女子だけで二次会しよ!二次会!ね~、綾子ちゃん?」


一通り食事も終わり、良い感じに酔いが回っている昌子は上機嫌だ。

二人に両腕を取られて、綾子はすっかり困惑した。


「い、いえ。私は・・・」


何とか昌子の手から逃れようと、身をよじりながら、反対側の香織を軽く睨んだ。

そして小声で、


〔何とかしてちょうだい!〕


と訴えるも、香織も逃がすまいと必死だ。


〔お母さま!どうか一緒に!〕


〔大丈夫よ!陽一は連れて行くから!〕


〔本当ですか?でも、素直に従ってくれますかね?〕


コソコソ二人で話していると、


「そうか!そうか!楽しそうだな、ばあさん!じゃあ、残念だが野郎同士で楽しくやるかぁ!なあ、陽一君、太一郎」


「そうだなぁ、幸ちゃん!なあ、陽一!」


すっかり出来上がっている老人二人は、陽一を引っ張って行ってしまった。

陽一も綾子の魂胆を知ってか、素直に祖父たちに従った。

そしてコテージに入る際、陽一は顔だけ振り向くと、二人に向かって舌を出した。


「なっ!」

「う゛・・・」



相変わらず余裕綽々な陽一の態度に、綾子は目を吊り上げ、香織は唸った。

酔っぱらっている昌子は、二人の様子には全く気が付かず、カラカラ笑いっぱなしだ。


「さあ、さあ!二次会、二次会~~♪」


昌子は綾子の腕をがっしりと掴むと、ズルズル引きずるように、もうひと棟のコテージに入って行った。


結局、深夜まで昌子の相手をしているうちに、二人ともすっかり酔いつぶれてしまい、終いには昌子に寝支度を整えてもらう有様だった。



                 ☆



翌朝、苦み潰した顔をして、鏡の前で自分に対峙している綾子の姿があった。

髪はボサボサ、昨日の服のまま、メイクもそのままの自分を睨みつけた。


(なんて、失態を・・・)


部屋は自分だけしかいない。

ベッドの横には、自分の荷物が置いてある。

西川が待つ車に置いてあったはずなのに・・・。

綾子が昌子に捕まった時点で、西川はさっさと荷物を降ろして、自分は勝手に宿泊予定のホテルに帰ってしまったのだろう。


(なんて、薄情な秘書かしら!)


綾子は乱暴に自分のバッグを広げると、必要なものを持って急いでバスルームに向かった。

廊下に出ると、隣の部屋から規則正しい鼾が、二人分聞こえてくる。


(今のうちに!)


綾子はバスルームに飛び込んだ。

香織と昌子が起きた頃には、綾子はいつもの完ぺきな姿になっていた。


「おはようございます。昨日は大変ご迷惑をおかけしまして・・・」


パジャマ姿の昌子に、綾子は頭を下げた。


「おはよう!綾子ちゃん!いいの、いいの!それより、よく眠れた?」


朝から元気な昌子はカラカラと笑うと、隣で昨日の格好のままでボケーっとしている香織の背中を叩いた。


「ほら、あんたもお風呂に入んなさい。早くシャキッとしておいで。おばあちゃんは昨日の夜にちゃんと入ったから、朝風呂はいらないよ」


「あーい・・・。あ、お母さま、おはよーございまーす・・・」


香織は半分寝ぼけ眼で、フラフラとバスルームに向かった。


「お酒、お強いのですね・・・」


香織を見送りながら、綾子は昌子に話しかけた。


「そうなの!酒だけは強いの。おじいちゃんより強いの!」


昌子は相変わらずカラカラと笑うと、


「さ、朝食の前にお茶入れようね。おいで、綾子ちゃん」


そう言うと、軽い足取りでリビングルームに向かって行った。

綾子は小さくため息を付くと、昌子の後をついて行った。



                 ☆



朝、全員で朝食を終えると、そのまま島を観光することになってしまった。

当然、綾子はそのつもりは無かった。

すぐにでも太一郎と陽一を連れ出す気でいたが、その場の空気がそうはさせない。


昌子は全員で行くことをとても楽しそうにしているし、昨日の自分の失態を考えると、とてもこの老婆に失礼な態度は取れない。


身動きが取れなくなっている綾子を、可笑しそうに陽一が肩を震わせて笑っている。

自分の息子ながらなんて憎らしい!

綾子は陽一をキッと睨むと、香織に向かって、


「いいこと、あなたは私から離れてはダメよ!」


そう言うと、香織は顔の前で両手を組み、祈るように頷いた。


「はい、決して離れません!」


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