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世界の風上 その中で  作者: イクラ太郎
第一章 平和なひととき
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第四話 任務完了 その報告に

 放たれた槍は闇騎士の胴体を貫き、その後方の木を数本ほど打ち抜く。胴体に穴の開いた闇騎士は後方へバタッと倒れ、その手から剣を離す。


「今度こそ勝負有りだ。」


 倒れた闇騎士を見下げ、勝利宣言を下すアラタ。その言葉に対し、また闇騎士はどこから出しているのかもわからない声で喋りだす。


「......ミゴトダ......ヤハリ.....ソウダッタ.......ドレダケマッタ....コトカ.......」


「なーに一人で納得して感動?してるだよ。てか元からカタコトだから瀕死かどうかよく分からねえな。」


 そう言っていると、闇騎士の身体が眩く光だし、脚の先から光の粒子となって消えていく。


「ハッ!!?なんだこれ!!?」


「.........マタ....アオウ.....」


「いや!またってなんだよ!!お前一体!!?」


 なんだと聞き終わる前に、闇騎士の身体は光となって消えていった。


「キュウッ!!」


 ふと動物の鳴き声がしたので三人はその鳴き声の方向に一斉に向いた。この空間に住む動物だろうかと思い見てみると、そこには先ほど見た、彼らの目標がこちらに向かって四足歩行で寄ってきた。


「ああ!!探してた新種!!」


「やっぱりここに居たんだね。」


「まっ、さっきの部屋にはこの子が隠れられそうな場所無かったもんね。」


 その新種のモンスターはトコトコとアラタの足元まで歩み寄り、ヒョイっとジャンプして肩に飛び乗った。


「ウォ!なんだコイツ!?さっきは逃げたくせになんだぁっ?てか軽っ!!」


「可愛いわねこの子。ほらぁ、そんな奴に近づいても良い事ないわよぉ。」


「キュウ!」


 レイラが手を伸ばし、そのモンスターの首元を撫でてやると、気持ちよさそうになどを鳴らし、今度はレイラの手に飛び乗った。


「あら、やっぱりモンスターでも人間の良し悪しの区別はつくのねぁ。」


「ついてねぇじゃん。」


「...........」


 リンは小動物と戯れていたアラタとレイラを、いや、正しくはその小動物自体をじっと眺めていた。

 唯の動物とモンスターの境界は結構と曖昧だが、基本はその体内に孕んでいる魔力の量で決定される。一定以上の魔力を持った動物は、その力に耐えるため、その姿は変形し、魔力により体は強化され、モンスターが魔術を使う場合もある。だがこの獣は。


「なあその動物——本当にモンスターかい?」


「ハァ?」


 リンはレイラの手に包まる獣を指差し、二人に問いかける。その言葉を理解できず苦い顔をするアラタ。言われてみればとハッと気付き、手の中の獣を凝視するレイラ。


「何言ってんだ?どうみてもモンスターだろ?図鑑に載ってないからって疑ってんのか?当たり前だろ、新種なんだから。」


「いや......違うわ。よくよく感じてみればこの子——」


「ああ、魔力を全く感じない。」


————


  任務を終えたアラタ達はそそくさと遺跡を抜け出し、学園への帰路に着いた。

 あの後、突然飛ばされたあの空間からどうやって脱出しようかと考え、あの場を少しの間探索していた。

 数分後、それは意外に早く見つかった。彼らがここに来るときに踏んだ、それによく似た模様、もしくは同じ魔法陣が。その魔法陣が描かれていた場所は、他と違ってその部分だけ草が刈られたように茂っておらず、とても見つけやすい。

 いまだにレイラの手の中で撫でられ、気持ちよさそうにしている小動物を加え、彼らは「いっせーのーでっ」で魔法陣を踏みつけた。

 すると起こった事は先ほどと同じ。視界は白い光に包まれ、眩しさに閉じた目を再び開けたときには、そこは来るときに確実に潜った遺跡の入り口だった。


「やっぱ便利だなぁ転送魔術(テレポート)って。なあレイラ。これ解析して使えるようにできないか?」


 彼女はまだ獣の首元や頭を撫でては、その毛並みを楽しんでいた。それを邪魔されたからなのか、「アァ?」と態度が悪く反応する。


「アンタねぇ、転送魔術(テレポート)がどれだけ高度な魔術が分かってないの?」


 確かに転送魔術は高度な技だ。

 それなりの腕を持つ魔術師が数人集まって、今いる場所と決められた距離の転移したい場所でそれぞれが色々な準備を施す。そこまでして初めて一、二人の人間を転送できる。

 そもそもあの最初に魔法陣を踏んだ部屋と転送先の空間がどれほどの距離かも分からない。

  

「こっから街までも転送(テレポート)出来たら楽なのになぁ。」


 彼らはテクテクと街まで数十分掛けて歩き、街の『結界』を抜け、任務完了の報告をすべくレクスダント学園の学長室まで向かう。

 任務を始めたのが昼過ぎ、今の時間は夕方を超え、あたりは暗くなっていた。


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