第10話 【二つの能力を持つ者】 4
ーー『本来、女性が劣るとされる戦闘能が彼女にはあるんだよ。それに加えて、回復能じゃトップクラスの【A】スコアらしい。有名な魔法雑誌の話題はそれでもちきりさ』
入学式の時、智也が言った言葉が新太の脳裏によぎる。
(戦闘能、男のはずの俺がなぜか低かった数値、それをアイリスさんは持っている……【速度強化】の魔法でここまで差が出てしまったのは戦闘能の違いということか?)
真下に溜まる血だまり。
致命傷はまだ受けていないものの、さすがに避けるのにも限界がある。
次、もしくは次の攻撃で新太が何か戦況を変えなければ勝負アリだ。
「また避けられた……でも、次は当てる」
斧を構えなおしたアイリスは【速度強化】の魔法に集中している。
(動くなら……今しかないっ!)
「属性選択は水、使用するのは【液体融合】ッ!」
そう新太が叫んだ瞬間、再び神速で迫り来る斧を持つ金髪。
魔法のためが長かった分先ほどとは比べものにならないほど速い!
しかし、新太はそれを避けるそぶりを見せずに直下の血だまりを片手で叩く。
「避けない……!? ふふふっ面白い! やっぱり面白いわ、アリスは!」
その姿、まるで獲物に舌なめずりする腹を空かせた猛獣のよう。
全身の血が沸騰する感覚を覚えアイリスは文字通り全力を振り下ろされる斧にかけた!
「あなたの負け、アリスッ!」
ゼロ距離から振り下ろされた斧。
その斧からは尋常じゃない量の血が滴っている。
滴っている。
滴っている……だけ。
「なっ……斬撃できていない!?」
斧は相手の体を貫通したはずなのに、その時の手応えまるで……水を切っているようだった。
「ふぅ……危なかったぁー」
力の抜けた声を漏らすのは新太。
それを見てアイリスは呆然としている。
【液体融合】、近くにある液体と魔法使用者を融合し、使用者を液体化する常用魔法。
新太はこれによって己の肉体と直下の血を融合したのだ。




