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 第10話 【二つの能力を持つ者】 5 



 また、この魔法や【速度強化スピードハイ】などの常用魔法は日本では小学校、中学校レベルで習得することができる。

 よって新太もまた使いこなせるわけだ。


 「今度はこっちの番だっ!」


 戦いの雰囲気に酔い、完全に完全に男口調に戻った新太はアイリスに両手を伸ばす。

 斧での攻撃が失敗に終わり、のけぞっているアイリスはそれを避けることができない。

 新太の両手からは生臭い鮮血がアイリスの顔面を包みこむ。


 「なっ……はぁ!? く、苦しい……!」


 新太は融合を解く代わりに液体を全て相手にぶちまけた!

 自分の身に得体も知れない液体をかけられ混乱するアイリスの正面でふと、新太は考える。


 (おそらく、アイリスさんの斧は【創造クリエーション】によって作られたもの。そして、彼女は【速度強化スピードハイ】の魔法を使っていた。この二つの魔法に共通することは、常用魔法であることだ……)


 魔法にはニ種類ある。

 常用魔法と戦闘魔法。

 日本において戦闘魔法は高校以上で覚えるのが原則だ。

 そして、新太は思った。

 アイリスの住むペルーシア王国はどうなのか、と。

 もしも、戦闘魔法を高校生以下にもすでに教育している場合、新太には勝ち目はない。

 だが、そうでなかったら、戦闘能の差は【速度強化スピードハイ】などの効力差以外には無関係ということになる。


 (ならば……賭けるしかない、この一撃に!)


 「属性は土、使用するのは……【再創造レクリエーション】!」


 目くらましを食らっているアイリスの斧を奪い、高らかに叫んだ。

 【創造クリエーション】によって作られたモノを再構築するその魔法は、斧を鋭い日本刀に変化させた!

 

 「なっ……アリス、ウチの斧をなんてモノに!」


 視界を確保させたアイリスが怒号する。

 が、新太は渾身の力を込めた日本刀で切りかかるーー。


 (アイリスさんが戦闘魔法が使えるのなら、俺はこの攻撃を守備魔法で防がれ、のけぞったところを突かれて確実に負ける……だから、チャンスはこの一回しかないんだ!)


 「うおおおっ!」

 

 振りおろされる刀。

 確かな、感触。

 ふるえる両手。

 凄まじい観客の歓声。

 ーー当たった、しっかりと刀は彼女をとらえたのだ!


 『勝負ありぃ! 勝者、騎士アリス!』


 そして流れるアナウンス。

 再び巻き起こる歓声。

 刀からは血が滴るが、すでにアイリスはあわてて駆けつけた救護担当の回復魔法によって傷一つなく、魂の抜けたような顔で空を見上げている。


 「騎士アリス様。決闘による傷の治癒を行います」

 「ああ、ありがとうございます」


 新太に歩み寄った救護担当の手からは柔らかい光が放出。負傷した両腕の傷を治癒した。

 

 『【二重能力ダブルアビィリティ】が負けちまった……』

 『あの有名なアイリス・ステファニーが負けたぞ!』

 『あの騎士アリスってヤツ、何者なんだ!?』


 観客席からはそんなアイリスの負けを不思議がる声と新太への興味の声が漏れる。

 

 (なんだろうこの感じ……勝ったのに、実感が湧かないな。それに、戦闘魔法が使われなかったんだからアイリスさんの【二重能力ダブルアビリティ】が生かされないも同然だよね)


 なにか、気負っていたモノがおろされた気分を感じた。

 なぜ自分はあんなにも勝負前おびえていたのか、新太はそれさえもわからなくなる。

 

 (まぁ、いいよね。勝ったんだから)


 これから、学園長に何を言われるのか。

 アイリスにどう対応されるのか。

 部屋はどうなるのか。その全てを振り払い、新太はしばらく観客の歓声と共に決闘の余韻にひたった。



 《俺は性転換して回復魔法で学園無双することにした。 第十話 完》



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