第50話 「非日常」
私は……
……一度夢を見てから、毎日のように同じような夢を見るようになった。
夢でしか会わないのに、その顔や体はもう頭に染み付いてしまった。
美桜と過ごしていても頭にあの顔が過ぎる。
だってしょうがないだろう……?
あの少女が私に与える快楽は、夢だとは思えないほど強力で、一日中少女のことが頭から離れないんだから……
とは言っても肉体的な快楽というわけでは無い。
なんなら少女が与える、というのも少し語弊がある。
……私が勝手に快楽を感じているんだ。
少女の体を噛み砕いてみたり、極限までいたぶってから何回も殺すふりをしてみたり、お腹をえぐってみたり……
……そして今朝は少女が死ぬまで目覚めない夢だと、段々夢の私も理解してきたのか、少女の食事を禁じた。少女は流石に嫌そうな顔をして、でも何故か従った。私の夢だから少女に拒否権は無いのかもしれない。少女は水だけでどうにか1ヶ月ほど生きて……最後は元が思い出せないほどに痩せこけて、死んだ。
……私はその様を見て、1日1日興奮が高まっていた。最終日に死んだ時なんて……
……考えたくもない。
……今は朝。
しかし、あの夢が与える快楽は日々を過ごすことを馬鹿らしく思わせて……
……私は今日大学をサボってしまった。
美桜が毎日どんどん暗い顔になっていってるのがわかる。
でも、なぜか美桜は私に何も言わない。
……ただこうなることを知っていたみたいに。
私は今日美桜を見送って、
そして、今は午後の1時だが、ベッドの上でうずくまっていた。
……だって、日常が与える刺激が全く足りていないんだから……
しょうがないじゃないか……
……今寝たら、
今寝たら、また会えるのかな……?
っダメだダメだ!!
自分から快楽に溺れようとするなんて!!
……あぁ……しんどい……
誰か助けて……
そう思っている私の耳に、とある声が聞こえた。
その声は……夢で聞いたことがあるもので……
「私が助けてあげっかー?」
……そう言って現れたのは、間違いなく夢に出てきた少女……
「っどういうこと!?」
私は自分が幻覚を見ていると思った。
寝転がる私をのぞき込む少女。
幻覚なら触れないと、そう思った。
だから立ち上がって少女の肩を掴んだ。
がしっ
「あ、……あれ?」
「幻覚じゃないよー?……私はここにいる。夢とおんなじだよ!」
少女は私を抱き寄せて後ろに倒れる。
そして、私の耳元で囁いた。
「好きにしていいよ」
「な、何言って……何もしないよ!私には美桜がいる!今あなたに手を出すことなんて絶対しない!」
少女はまた耳に囁いた。
「美桜ちゃんと居てもー満たされないんじゃないのー?私なら何をしてもいいよ?ほら……夢でしたようなこと、してみなよ?」
少女は震える私の手首を握って、自分の首に近づける。
私は絶対握らないつもりだった……
でも……
……体が勝手に……
私の手ははっきりと少女の首を掴んでいた……
力は込めていないはずだ……
いないはず……
いないはず……
「……なんで勝手に力が入るのっ!?」
……やめてやめてやめて!!
こんなことしたくない!!
したく……ないんだ……
「……う……うそ……ばっかり。……こんなに……興奮……してるくせに」
少女の顔がどんどん青くなっていく……!!
私は自分でも分かるっ!
今顔が笑っている!
私の手はどんどん力が強まる。
少女の顔は青を通り越して……真っ白になっていき……
ガクンと少女から力が抜けた。
「……うそ……でしょ……!?」
私は自分の手を見つめる。
ころした?
わたしが?
どうして?
なんでこんなことに……
どうしてわたしはこうふんしているの?
どうしてこれをのぞんでいたようなきがするの?
どうして?
どうして?
どうして?
どうし——「お姉ちゃんっ!」
パアッと視界が開ける。
それは私のベッドの上で……
私は急いで起き上がって周りを見る。
しかし、その場に少女の姿はなく……
……夢……だったのか……
でも……今までの夢と違った……っ!
あれは……!
あれは私自身の意思だった……!
「お姉ちゃん!お姉ちゃん!」
美桜が肩をがくがくと揺さぶってくる。
「み、美桜……」
私は美桜の顔をまっすぐ見れなかった……
美桜は私に抱きつき、泣いているような声で喋り出す。
「お姉ちゃん……どこにも行かないで……ここに居て……私が悪かったんです……彼女じゃなくても良かったんです……そばに居てくれたら……そばに居てくれるだけで……」
美桜はわーっと声を上げてなく。
何だかこんなことが前にもあったような気がした。
もし前にもあったなら……
こうやって前も泣かしてしまったクズ人間だってことになる……
実際今の時点で私はクズだ……
夢でしか会えない少女の方が……
目の前の彼女である美桜より……
気になってしまっているから……




