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魔法少女ごっこをしてるだけなのに、勝手に周りの人が曇っていくのはなぜ?  作者: さたけやま


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第47話 「日常」

「美桜……お姉ちゃんは……大学に行ってくるね……?」

「お姉ちゃん……!……そんな寂しそうにしなくても大学ぐらい行ってください……」


 美桜!

 冷たいよ!

 お姉ちゃんはこんなにも心が痛む行為なのに……!


 私は授業内容も全く覚えていない大学に行くことにした。なんの授業を取っているかはよく分からなかったので美桜の携帯で大学に連絡した。「私ってなんの授業取ってますかね?」と聞く私は酷く怪しまれていたので、大学まで行って、本人を証明して、聞いてきた。


 まぁ……一応まだ出席回数は何とかなるので、行くことにした。


 私は電車に乗って、大学に向かう。

 大学に行くのも、久々なような……

 そんな気もする。


 ツバメは元気してるかなぁ……

 私の記憶だと元気なんだけど、半年だもんなぁ……


 そんなことを考えながら、電車に揺られる。


 ガタンゴトン


 ガタンゴトン


 電車の中はひどい満員電車で、自分のカバンを胸に抱いて、どうにかカバンが邪魔にならないように……そして自分と他人とのスペースを空けようとする。


 キィーーー!


 電車が一瞬ブレーキを踏む。


「おっと」

 後ろにいた男性が私にぶつかる。

「わっ」


「すみません」

 男性は声と仕草で謝る。

 私も軽く頭を下げて、受け取る。


 しかし……

 少し前に進んでしまったせいで、前の人とのスペースが狭くなってしまって、ドア際にいた少年……?いや、少女との距離が無くなってしまった。


 私は仕方ないからカバンを床に下ろした。


 持ったままだと少女を圧迫してしまうからだ。


 少女は不思議そうに私を見る。


「ねぇ君……!」


 少女が背伸びして私の耳元に顔を寄せる。

 私はその少女のために少し屈む。


 すると少女は囁いた。


「……魔法少女……!だよね!?」


 私は一瞬笑ってしまいそうになる。

 だって私は20歳だ。

 ……魔法少女?

 そんなわけない!

 私は魔法少女にならないことを誓ったばかりだ。

 魔法少女に誘ってくる不審者はいたが……


 とにかく魔法少女では無い!

 不思議なこともあるものだと愉しくなる。


 私も少女の耳元に口を寄せる。

 少女も耳を差し出す。


 だから囁いた。


「違うよ。お姉さん、若く見えるけど、20歳なんだよね」


 少女は不思議そうな顔をした。


 少女は囁くとかではなく、普通に口を開いた。


「えっと、何言ってるの?君。君は魔法少女だよ?」


「……」


 ……言い切られたかぁ……

 乗ってあげるのが優しさなの……?

 いくら、私でも……


 魔法少女はなぁ……


 目の前の少女なら、似合いそうな気はするけどね。

 薄い金髪にショートカット、見える八重歯に少年のような服装。

 

 ……人気出そうだなぁ……


 私は返答に困ったが……


 小さく口を開いて


「……秘密ね」


 とだけ言った。

 しかし少女はまだ不思議そうだった。


 プシュー


 電車が止まった。


 少女は不思議そうにしながら、「あ!僕この駅だから、ばいばい!」


 そう言って元気よくこの満員電車の地獄から抜けていった。


 私もそこから3駅ほど経ってから降りられた。


 そして大学に着いた。


 ———————————————————————————

 ここら辺に座ってたらいいのかな……


 この授業をツバメは取ってないのかな?

 見当たらないけど……


 私は辺りを見渡しながら、恐る恐る椅子に座る。


 座ってしまえばこっちのものだ。


 これだけ広い教室が埋まるようなことも無いだろうし……

 しばらくは落ち着いた時間が送れるだろう。

 ……あの地獄の満員電車でできた傷をここで癒そう。


 あ〜楽だなぁ……


 私がそうやって寛いでいると、周りの席がどんどん人で埋まっていく。


 ……まさか、


 私は少し時間を置いてから、辺りを見回す。


 ……うわぁ……凄い人の数……


 周りの席はおろか、教室全体の席が埋まっていた。


 ……空いている席はほんと僅かで……

 私の隣と、他にも何席か……


 ……人が多いなぁ……


 別段人見知りする訳じゃないけど、それでも人がいない方が落ち着く。

 まぁ大体の人がそうだと思うが。


「あらぁ〜……どこも空いてませんねぇ〜」


 キョロキョロと辺り見回しながら、歩き回っている謎の和服美人。

 

 和服……


 よく他の人あの人の事見ないで居られるなぁ


 私気になってしょうがないよ……


 そう思っていたら、


「あら?」


 その美人と目があった。


 目を逸らそうと思ったが、なんだか礼儀的に良くないような気がして、軽く手を振ってみる。

 女性は笑顔でそのまま手を振り返してくる。


 そして、そのままずんずん近づいてくる。


 ……え、えぇ!?

 こっち来る!?


 私は内心少し焦っていたが……


 自分の隣の席が空いていたことを思い出して、そこに座りたいだけだろうと納得した。

 だから、女性に隣の席を譲って、自分の席に座り直す。


 女性は「ありがとうございます〜」と礼を言ったので間違いじゃなかったみたいだ。


 ……でも……


 ……何故か視線を感じる。


 授業が始まったあとも……


 ずっと視線が……


 視線が気になりすぎて、授業に集中出来なくて、この授業が英語の授業であることしか、頭に残らなかった。


 こういう時、誰かがノートを見せてくれて、助けてくれた覚えがあるのだが……


 ……誰かは分からない。どこかで見た夢を覚えているだけなのかもしれない。

 それぐらい淡い記憶だった。


 授業終わり、女性は話しかけてきた。


「改めて、この間はありがとうございました〜。おかげさまで、わたくしはこの通り元気です〜。ただ、凪ちゃんが落ち込んでまして、今度会っていただけませんか〜?」


 ……この間……?

 凪ちゃん……?


 一人称わたくし……?


「凪ちゃん……ですか?」


 ダメだ……

 なんだか、口は凪ちゃんと言い慣れているような気がしたが、口に出してみても記憶に無い。


「……あら?まさか、忘れてしまったんですか?わたくしの妹を」


 妹……

 いや、そもそもあなたにも覚えが……


 うーん……

 でも……


 うーん……


 何故か近くにいると胸が微かに痛むような気がするけど……


 私の好きな相手は美桜、なら恋は無いだろうしなぁ……


 ……結局私はよくわからず、曖昧に笑って逃げるようにその場を後にした。


 ……私は半年の間に何かしていたのか、少し不安になりながら今日を過ごした。

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