第4章 幕間1 「その後」
うちはベッドを飛び起きる。
「遥の魔法が使われた……?遥がいる……?」
うちは急いでツバメの魔法を使ってみる……
だが……
元々未完成だった魔法な上に、今は色々と混ざりすぎて、だいたい中途半端にしか使えないのもあって……
……場所が特定できない。
でも、間違いなく管理局の位置ではなかった。
遥は逃げられた?
もしそうだとして、序列二位になった原因とも言える魔法を使った?
……どういう状況であれ、緊迫した状況なのは間違いない。
うちは急いでリビングに降りていく。
「照ちゃん!急いで準備して!遥が危ないかも!」
うちの大声で起きた照ちゃんは、
「……へぁ?……」
と言った。
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「……正確な位置が分からない。でも……多分ここら辺のはず……」
「……ふぁい……」
照ちゃんは朝に弱いみたいだし、最近夜更かし気味なのもあって、半分寝ているような状態でその場所まで来ていた。
うち達はただの住宅街の中を歩いていた。
探知を使っても反応はなく、うちは探している場所がどこか、はっきりとは判別できなかった。
だが……
……絶対ここじゃん……
やけにピンク色の、一軒家……
もはや怪しすぎて、逆に違うような気もしてくる。
ドアノブすらピンク色だった。
うちがドアを捻ろうとした瞬間……
ガチャ
「あれうちまだ——」
バン!
勢いよく開いたドアがうちの顔にぶつかる……
「いった!」
ドアから驚いた顔をしながら出てきたのは……
「……咲さんっ!?」
「……その声……そうなのね……ツバメも……」
「……ふぁ!?」
咲さんに気づいた照くんが駆け寄ってくる。
「久しぶり!僕のこと覚えてる?」
咲は驚いた表情をまた見せる。
そして、少し考えると……
「……久しぶりね。……話したいことはあるけど、一旦ここを離れない?ここは危ないわ」
咲の表情は管理局に潜入した時を思い出させる真剣さで……
「……分かった。」
うちはそう返事して、咲1人を連れて帰った。
……なんで遥を探さなかったかと言うと……
……本当は分かっているからだ。
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「よし!いけ!そこだー!!………………うわぁーーー!!!そう来るかー!!!でもー!?あー!!ダメかぁー!!」
照くんにはまだ話したくない話をすることになりそうだったので、照くんには離れて貰っている。
……それでも声は聞こえてくるが。
「じゃあ遥の魔法を探知したからあそこに居たのね。なら、……あと少しで危ないところだったわね。」
「どういう意味……ですか?」
咲さんは表情を変えず、淡々と、
「今あの中では……拷問が行われているわ……その拷問は小学生ぐらいの少女に行われていて……」
俺の胸のうちには激しい炎のような怒りが上がってきて、口から火山のように吹き出す。
そして咲の胸ぐらを掴む。
「咲ぃ!それはどういうことだぁ!?」
っ!
うちの中の1つの人格が……
少女に拷問という言葉に強く反応している……
咲さんは目を見開いて、しかし何もしない。
「……すみません。うち……いや、咲さんには見せてもいいかな……」
うちは自分のずっと服に入れて隠していた左手を出す。
「それは……!」
「はい。うちの腕は、まだ何にもなれていない、スライムのような状態です。」
うちの腕は……
紫色に染まっていて、ぶよぶよとした質感のものだ。
そして、その腕を『変化』させてみる。
序列八位の俺や、序列二位の私、序列一位の僕や、元序列一位のわたくし、そして目の前に居る序列六位のあたし、
……そして……この間までただの大学生だったうち。
「わかって貰えましたか?……うちの体にはたくさんの人間が入っているんです。……だから時折あぁやって誰かが出てくることもあるんです。うちの体は長くは持たないみたいです。体に収まった強大な力が、日々体を蝕んで行っています。だから少しでも節約をするために、腕は変化させてないんです。」
うちはまた紫のぶよぶよに戻して、服にしまった。
「そう……なのね……じゃああなたはツバメではないの?」
「そう……ですね。うちの体の大部分はツバメが占めているので、ツバメ……が1番親しみやすいですが……うちはツバメではありません。」
咲さんは表情をあまり変えなかった。
そりゃそうだろう。
咲さんだって、あんなに何回も殺された記憶を持つだけの、クローンのようなものなのだから。
「話を戻していいですか?……うちの中から俺が出たがって仕方ないんです。きっと体を許せば、暴れてしまう。」
「分かったわ。……少女が拷問されているという話だけど、どうやら少女が美香に何かをして、美香とその妹を逃がしたみたいだわ。それに怒った理子という少女が、小学生のような少女に拷問のような真似をしていて……何かを吐かせたいみたいだったけど、あたしにはどうでもよくて、話を聞いてなかったわ。」
……咲さんは少女の拷問をどうでもいいと言った。
やっぱり何かが変わってしまったのだろう。
わたくしの記憶を辿れば、咲さんは最初から正義感溢れる人間だったのに……
それに、理子という少女……
確か、うちの記憶によると、魔法少女として元気よく配信を行う子だった。
……そして俺の記憶によると、理子という少女は管理局の闇……
……粛清班のリーダーだったはずだ。
粛清班は規則違反の魔法少女を始末したり、なにかに気づいた一般人すらも始末したり、かなりやりたい放題していた組織。
もちろん、やりたくてやっている人は一人もいなかったと記憶しているが。
そんな少女が、少女を拷問している……
……管理局が動いているとしか思えなかった。
そんな場に気軽に近づくのは……はっきり言って危険だ。
照ちゃんや、うち、それにもしあたしまで揃っても、絶対に安全とは言いきれない。
「そうですか。状況は分かりました。引いてよかったのかもしれません……」
見捨てるような形になることに、うち達全ての人格が悲鳴を上げる。
……特に照ちゃんの人格は激しく怒っている。
うちはその全ての叫びに……
気付かないふりをして……
「さっき、美香っていいました?」
気になることを聞いた。
「言ったわ。」
咲さんはなぜか顔を緩ませて、そう言う。
「美香が……居たんですか?」
……美香はあたしの記憶を辿れば、とんでもないことをしていた。酷すぎてあまり見ないようにしているぐらい。
そんな美香の話をなぜ嬉しそうにできるんだろう?
「そうよ。美香とは今日まであの家で一緒に暮らしていわ。理子や姫愛縲も一緒ね。」
うちは驚いたが……
美香……
その名前の方がインパクトを持った。
いや……
うちだけが強い光を放っていた。
美香、うちが魔法少女になったのは、美香を助けるためだった。でも実際はその時は助けが要らなかった。
でも……
今回はやっと、うちが助けられるんだね。
待ってて
美香。
うちが助けてあげるから。




