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魔法少女ごっこをしてるだけなのに、勝手に周りの人が曇っていくのはなぜ?  作者: さたけやま


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第5話 「隠れ『 』」

昨日は魔法少女になってしまい、その上脚本に勝手に割り込んでしまうなんて、とんでもない事をした。

 なるなと言われていたので、美桜から怒られると思っていたが、私が帰った時には美桜はもう自分の部屋にこもっていて、会話にならなかった。

 今日家に帰ったら謝ろう。


 それはそれとして、今日は大学に行く日だった。


 ……黒歴史を作ったあと、行きたくないに決まっていた。


 私は廊下を進み、教室に入る。


 ガララララ


 よし。誰も私を見てない。


 教室の端に、特徴的なツインテールが見えたので、そっちに向かう。


 ツバメはいわゆる、『ダウナー系』なので配信は見ていないだろう。ツバメの前なら気を抜ける。


「おはよーツバメー」

「おーおはよ。」


 私はツバメの横の席に座る。


 実は、怒られるかもとずっと気を張りながらここまで来たので、やっと安心できると思うと体がダラける。


「お疲れじゃん。どしたの?」

「いやー。これはツバメにも言えないなぁ〜」

 私は少しからかうように言う。

 それが悪かった。


 ツバメはニヤリと笑った。

 

「へぇ〜魔法少女やってたからじゃないの?」


 ほら、カウンターパンチだ。


「ぐふっ!」


 昨日、20歳の女子大生美香は、フリフリの服を着て魔法少女になっていたのだ!


「なんで知ってるの!?」

「なんでって、うち、魔法少女好きだし。」

 ツバメは当然みたいに言った。


 初知りなんですけど……


「じゃあ……見たってこと?」

「あーうん。見たよ。棒読みすぎてめっちゃ笑った」

 ツバメは少し声を出して笑う。


 私は少しどころじゃないぐらい声を出して叫びたかった。


 あぁぁぁぁぁぁぁ!!なんでピンポイントに魔法少女オタクなの!?


「え、ふふ。人違いではありませんか?」

「マジ?」

 美香はまた少し声を出して笑った。

「美香の見た目、特徴的だからすぐ分かったよ。身長今どれくらいだっけ?」

「……154」

「顔は?」

「……童顔」

「胸は」

「……胸はびぃ……って胸はいいでしょ。言わなくて」


 ツバメはまた声を出して笑う。


危ない危ない。ツバメに乗せられるところだった。


 ……乗せられて喋っちゃってたら悲惨だった。


 私は自分の目線が足まで、まっすぐ落ちるのを見て、少し悲しくなる。

 

 また、ツバメは話し出す。


「正直ね。美香が中学生に見えることもあるくらいだよ。」

「中学生!?」


 大学生が、中学生に見える?いいの?それ。

 喜んだらいいの?悲しんだらいいの?わかんないんだけど。


「だからね、魔法少女服もよく似合ってたよ」

「あ、ありがとう……」


 私の顔は勝手に赤くなるが、子供っぽいから魔法少女服が似合ったというのはこれまた喜んでいいのかよく分からなかった。


「配信のコメ欄も美香が出てから大騒ぎだったよ?」

 ツバメは揶揄うような顔で言う。


「……どんなことが書かれてたの?」

「んーとねぇ。美香が出てくるまでは理子ちゃんを心配するコメントとかが多かったね。美香が出てからは……可愛いって言われてたよ?」

 ツバメはまた揶揄うような顔をしている。


 分かってる。今照れるとツバメの思うつぼだと分かっているけど……


 あまり自分の容姿を褒められたことがないので、勝手に熱が籠ってしまう…!


「そ、そうなんだぁ?他には?」


 他にはどんな褒められ方をしてるんだろう?


「あとは、美香からパンチしたのに自分が吹っ飛んでるところに、えぇ...みたいなコメントが多かったかな。」

「あぁ……あれ。」


あれは気持ちよかったな。そういえば、配信はあんなグロテスクなものを写していいんだろうか?魔法少女って子供が見るものな気がするし、それなのに腕が吹き飛んでて……


 いや、私に気にされる筋合いは無いか。

 

「あぁそうそう。理子ちゃんが苦戦してた怪獣に美香がパンチしたら、すぐ倒せたからさ、美香に強すぎない?とか、序列どれくらいなんだろ?とか言われてたよ」


 ……序列?


 たしか、序列って物事の優劣によって付けられる、順番みたいなものじゃなかったか?


 えぇと順番順番……


 それは


 ……芸歴みたいなものか?


 なら1だな。私1年目だし。


「私の序列は1だよ」

「は?」

 ツバメがその大きい目をさらに大きく開けて私を愕然と見ている。


 え?何か変なこと言った?


 ツバメが驚きを辞め、また呆れたように私を見ていた。

「はぁ……」

「な、なに?はっきり言ってもらおうか!」

「序列は魔法少女の中での強さのランキングのこと。1位がいちばん強いの。いくら美香が強くても、1位はないわ。」

 はぁ〜とツバメが私にアピールするみたいにまたため息をつく。


 強さのランキングか。そんなものを作っていたんだな。


なるほどなるほど。

 

 そういう売り方をしてるんだなぁ…


 私が思うに、魔法少女に強さの優劣なんて無い。理子ちゃんだって、『わざと』弱いように振舞っていただけだろうし。

 

あぁ今思い出しても余計なことをした。理子ちゃんはきっと勝てないと思わせてから、一気に逆転して、配信を盛り上げる脚本だったんだろうなぁ……


「あとは……美香が不気味ってコメントも結構あったね。なんで笑ってたの?すごい怖かったけど」

「あぁ、あれ?あれは腕がちぎれて血も出たのに痛みがしなくて勝手に治ったからだよ?」


 魔法少女が本当に戦っていると思いかけていて、その誤解が解けて安心したからというのは恥ずかしくて言えなかったからもう1つの理由を言ってみた。


「え?」


 ツバメは目を丸くして私の腕を凝視する。


 私は治ったと見せるために手を開いたり閉じたりする。


「……どゆこと?配信にはそんなの写ってなかったけど?」

 ツバメは私を疑っている。

「へ?」

 今度は私が驚く番だった。


 まぁ……まぁ確かに……子供が見ているものなのにあそこまでやっていいのか?とは思ってたけど。

 ツバメが話したコメントは聞く限り、私の動きそのもの。つまり、腕が吹き飛ぶとか頭が無くなるとか血が出るとか。そういうのは排除されたものが配信されているのか?


 ……どうやって?謎技術だ。


 それに、二度手間だろう。最初から血が出ない、体がちぎれないという設定にしておけばいいのにと思ってしまう。


 とにかく、視聴者には見えていないものなら誤魔化した方がいいかな。


「じょ、冗談だよ?」

「っはぁ〜……びっくりした。そういう冗談やめた方がいいよ?」


危ない危ない。

 

「そういえば、」

 ツバメはこの変な空気を変えるみたいに、話し出す。

「うちの最推しの、元序列一位の小百合さんが同じ大学らしいんよね。しかも、魔法少女で忙しくて2年間休学してたから同じ学年とかって聞いた」


 どこ情報だよ。

 

 いや、そういうの隠しててもバレちゃうんだろうな。

 さっきから、当たり前みたいに理子ちゃんとか小百合さんなんて言っているし名前も公開されているのかも。

 

 昨日の私は理子ちゃんの名前を配信中は、呼ばないようにしていたが、必要なかったみたいだな。


 これでこの話題は終わりかと思ったが、まだツバメは喋り続けていた。

「それでさ、小百合さんは2年前に、今までで1番大きい怪獣と戦って、負傷したから引退しちゃったんだよね。まぁそういう設定だけど。めちゃくちゃ綺麗で強くてさ。水魔法がもう派手で派手で!更にそのレイピア裁きは、突いてもらいたい人が続出したぐらいだからさ!今22歳らしいから、もう見れないかもしれなくてまじ残念なんだよね」


 私は話半分で聞く。


 2年前に怪獣と戦って負傷して引退、ね。


 はいはい。


 そして、今22歳ね。


 はいはい。


 それさ、


 ……年齢で引退させられただけだよ?


 まぁ言わないけどさ。


 というか、突いてもらいたい人ってなに?

 とは思うけど、まぁ言わない。


「でさ、」


 ……結局、ツバメは授業が始まっても喋り続けた。おかげであまり頭に入らなかった。前回の授業のことは理子ちゃんと美桜のことでいっぱいで何も覚えてない。


 ……テスト大丈夫かな?

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