第4.5話 『理子』
私、理子は魔法少女の闇を知っている。
それは魔法少女が知るそれよりも、もっと深いものだ。
いつか正さなくてはならない。
しかし、私個人が管理局をどうこうしようとしても、どうにもならないのは分かっている。
だから世間を味方につける必要があった。
だから、私は知ってもらうことに注力する事にした。
まぁその記念すべき1人目が美桜のお姉さんになるとは思わなかったが。
学校から出ようとしたら、美桜のお姉さんを見かけた。
私は話しかけた。
『理子』ならそうする。
お姉さんは学校でナギナギを出待ちしていて、ナギナギに魔法少女について聞こうとしていたみたいだった。
「ナギナギは部活だし、ナギナギに代わって、私が教えてあげるよ〜! 」
本当はナギナギは部活に入っていない。
嘘を言って、私が教えることにした。私ならありのままを伝えられる。
私はいつもの揶揄う笑顔を浮かべる。
歪だ。
私がよく浮かべる笑顔。
その子供の演技も疲れる。
「配信なんだから、キャラ付けをしろ」「子供っぽく振る舞わないとさ、分かるだろ?」「皆素の君なんて見たくないって」
うるさいうるさい!
私だって最初はただの少女だったのに。
あなたたちが勝手に引き込んだくせに。
あなたたちが私にあんなことをさせたくせに。
だから、管理局はいつか絶対潰す。
恨み?執念?怒り?
なんだかどれも違うような気がする。
いわば敵討ちが1番近い。
私はこの笑顔を浮かべる度に管理局の腐ったあの人間たちの声が頭に響く。
本当にこの笑顔は『成立』しているのか?
お姉さんの表情をよくみる。
「ほんと?ならお願いするね」
お姉さんは少しひきった笑顔を浮かべていた。
ほら、できていなかったんだ。
紛い物だから。
「うん!任せて〜」
……気持ち悪い声だ。
自分の声と思いたくない。
私はそのままお姉さんを公園に連れていく。
お姉さんにこの歪な笑顔で疎まれているのか、道中はあまり会話は弾まなかった。
ほら、
やっぱりできていなかったんだ。
私はまた心の中にある怒りのようなどす黒い何かが、またチカチカと熱を放つのを感じながら、公園へと案内する。
———————————————————————————
お姉さんを人目がある公園に案内し、話し出した。
公園は声がよく通るので、あわよくば誰か私の話を『間違って』聞いてくれないかなぁと思って、ここで話してみる。
まぁ、聞いた人間を管理局がどうするかは分からないが。
それでも、それでも、人のことを考えられる余裕はない。
……もう限界なのだ。
「——3人が魔法少女ってことであってる?」
「——守るって何から?」
お姉さんは私に積極的に質問し、私の話を真剣に聞いてくれていた。
私の最初の1人目としては上出来なんじゃないか?
……なんだか事態の好転を感じ、頬が引き攣っているのを感じる。
いや、これは引き攣ってるのでは無い。
これが笑顔だ。
昔浮かべていたような笑顔が勝手に顔に出てくる。
作っていない笑顔なんていつぶりだろう?
「——理子ちゃんも戦ったりするの?」
お姉さんの、問い。
私は、はっきりと答えていいのか分からなかった。
私は汚れている。
他の魔法少女と同じように振舞っていいのか?
いや、お姉さんはそこまで知る必要がない。
ただの魔法少女のように振る舞え、さっきまでの笑顔を崩すな。
「もちろん。私も、命を賭して戦ってるよ」
あぁだめだ。意識してしまったから。笑顔が崩れるのを自分でも感じた。
お姉さんは……何故か目を輝かせている。
「もっと聞かせてよ。魔法少女のこと。」
お姉さんは笑顔で言う。
あれ?伝わってない?私はちゃんと伝えているはず。あれ?なにか間違ったっけ?おかしいなぜ?
「もちろんだよ!……お姉さんには知る義務があるから。」
私は意図的に真剣な表情を作ってみる。笑顔が悪かったのかもしれない。
伝わって。お願い。私の気持ちを理解して。
「魔法少女って脚本とかあるの?急に始まるイメージがあるけど」
お姉さんの声が聞こえたと同時に、自分のおかしさに気づいてしまう。
あれ?私今何を考えてた?いやいや、押し付けるんじゃだめだ。お姉さんには知ってもらいたいだけ。そのはず。そのはず。
私はおかしい自分を誤魔化すために笑顔を浮かべてみる。
できる。さっきまでの態度を崩すな。あのままなら聞いて貰えるんだ。ちゃんとしろ。できるはず。
笑顔のまま、答えるんだ。
「脚本なんて無いよ!これ理子たちも困ってることなんだけど!いっつも、怪獣が攻め込んできた時から配信されてるけど、理子たち怪獣がいつ来るかなんて分からないからさぁ〜プンプンだよ!」
気持ち悪い気持ち悪い!
何だこの声は?何だこの顔は?
私じゃない。私じゃないはずなのに……
もう分からない。私はこんなだっただろうか?
こんな気持ち悪い人間だっただろうか?
人を巻き込むために笑顔を作る、そんな人間だっただろうか?
ダメだ。ダメだ。今日はもうダメだ。私はもう笑顔を被れない。
今すぐ、用事ができたって言え
帰るって言え
メッキが剥がれる。バレてしまう。
「そういえば、美桜が家族に話さなきゃいけなかったことってなんだったの?」
あ
フフっ
フフフフフ
「やっと聞いてくれたね」
私の口は勝手に、『私』として話してしまう。
やっと、やっと聞いてくれた!
伝えられる!魔法少女の真実を!
私はもう剥がれたメッキを取り繕うことは出来なかった。でももういい。聞いた。お姉さんは聞いた。話すだけだ。お姉さんも聞くはず。聞かないわけが無い。聞かせる。聞かないなら、無理やりにでも聞かせる。
大丈夫。大丈夫。
……あれ?私、どうしてまたこんなことを考えている?
私の口は話さなければいけないこと、話してはいけない事の区別をせずに勝手に話し出す。
「私たち魔法少女は地球を守るために、実は命がけで戦っている。その上、なりたくてなってるわけじゃない。勝手にやらされている。魔法少女に選ばれたその日から、拒否権はなく、巻き込まれる。そして怪獣と戦う義務が国からもたらされる。断れば国によって死、断らなくても、怪獣と戦っていればいずれ死ぬ」
待って!止まって!
それは本当に言っていい話だったか!?
どうして勝手に私の口は話している!?
なんでなんで!!
「私も美桜もナギナギもなりたくてなった訳じゃない。ある日突然、私たちの前に現れた怪獣。私たちはその瞬間に、変な生物と勝手に契約を結ばされて、魔法少女にされた。そして、勝手に魔法少女の真実を植え付けられ、怪獣が現れたら、体が勝手にその場に向かうようになった。そして、その場から逃げようとすれば体に激痛が走る。」
どうして止まらないの!?これじゃ、何にもならない!!話しすぎている!
これじゃ、『目的』が達成されない!!
『目的?』
それはなんだ?お姉さんに真実を知ってもらう。それが目標だったはず。『目的』とはなんだ?私は何を考えた?
私はお姉さんの顔を無性に見たくなって、見た。
笑っていた。
目が輝いていた。
は?なんで?
自分の妹が巻き込まれている状況を、理解し始めているはずではないのか?
……もっと話す必要がある。
もっとしっかり理解してくれるように。
もっと、私たちのことを理解してくれるように。
もっと、私の苦しみを理解してくれるように!!
え?私今、何考えて……
い、いやいや、お姉さんに現状を知ってもらうのが目標だったはず?
……ならもっと、真実味を持った話をしよう。
これでお姉さんも理解してくれるはず。
「配信は怪獣の存在を隠すための、ただのカモフラージュ。もし、怪獣が本当に暴れているという、真実を知るものがいたら、その人は魔法少女にされる。国は秘密が広がるのを恐れている。国は、どこに出るか分からない甚大な被害を出す化け物の存在を認める訳にはいかなかった。」
え?今私何を言った?
魔法少女の真実を伝えようとしていたはずなのに、管理局の闇を伝えた?
いつから?私はいつから管理局の闇を話した?どこまで話した?どうして覚えていないんだ!?私はしっかりとラインは守っていたのか!?
いや、いや……守れていなかったかもしれない。
私の口は話したかった話をそのまま垂れ流すように、次の言葉を発していた。
「美桜があなたに話さなかったのは、あなたが魔法少女の真実を知ると、魔法少女にされる恐れがあったから。」
これは、これはいい。これは伝えてもいい。
いや、良かったのか?伝えたら魔法少女にされる恐れがあったんだぞ?
でも魔法少女になれば魔法少女の苦しみを理解できる?
……あれ?私、もしかして、もしかして、自分と同じ苦しみを人に味合わせたいだけなの?
え?
そんな訳………………
……………………
「……理子ちゃん、ひとつ聞いていい?」
お姉さんは顔が真剣だった。
理解、してしまったのか?
私はなにを……いや、とりあえず答えよう。それこそが義務……義務?いや、
私は頭の中に浮かんだ全てを押し込むようにして会話に応じる。
「なに?」
「理子ちゃんが言ってる話って、本当の話?それともこれまでの話全部が、脚本なの?」
ドクン
心臓の跳ねる音がする。
これを伝えたら、本当にお姉さんも巻き込まれる。
……いや、もう巻き込まれることに間違いはないか。
ならもう伝えよう。
私にはそうすることしか出来ない。
ほら!
口が勝手に答えようとしている。
「——ほ」
ビキーーーーン!!
胸の心臓がある辺りに、強い刺されたような痛みが走る。
……は?今?
ふざけるな
私は気持ちを切り替えて、お姉さんに向き直ると、謝罪する。
「お姉さんごめんなさい。この話はあとで。」
戻れるか、戻れないかの境界を越えないで済んで、少し安心したような気がする。
私はスマホを取り出すと、スマホに届いている通知から怪獣の発生地域を確認する。
「ここなの!?」
は?そんな偶然ある?管理局は怪獣とまで繋がってたのか?
……いや、これは飛躍しすぎている。
それよりもお姉さんを守らないと、知ってくれ始めている、お姉さんを。私はお姉さんを安心させようと口を開く。
「お姉さんのことは絶対守るから安心して」
私は戦う意志をしっかりと固める。
ビキビキビキ
怪獣が空間を破りながら、出てくる。
ズーン。
怪獣はそのまま地面に落ちる。
……大きい。
『武器が無い』私じゃ勝てないかもしれない。
しかし。
体に何かが通り抜ける気配が怪獣の登場と同時にした。
配信カメラから人払いが行われた合図。
と同時にこれは配信が始まった合図。
私は無理やりにでも顔を作る。多分笑顔、だろう。
「お姉さんはその配信カメラより後ろに下がっておいて〜」
そこなら映らない。カメラの人払いの影響で、戦闘に真実を知らないものが巻き込まれることはない。だからこそ、魔法少女でも無いのにカメラに写ってしまえば、視聴者に騒がれてしまう。それは管理局を動かす理由になる。そしてお姉さんの魔法少女化。全てが見えていた。
姿が映らなければなんとかなるだろう。
何にせよ近くにいてもらわないと守ることができなくなる。
「変身」
気持ち悪い。そんな良いもののように呼ぶこと自体、気持ち悪い。
苛立ちがあるが、表には出せない。今は配信中だ。
それならあまり考えないようにした方がいい。
私は怪獣に向かって行き、右手からパンチしてみる。
それは狙い通り、怪獣の顔にあたるが、怪獣には傷一つつかなかった。
っ!?
「グッ……ふぅふぅふぅ!!」
堪えろ堪えろ堪えろ。
急に訪れた痛みが、私が傷を負ったことを理解させる。
いつ?
いつやられた?
私の視界には写っていなかったはず。
……まさかあれだけ巨大な怪獣だと、攻撃が視野外から飛んでくるのか?
は?
それって……
……無理ってこと?私じゃ勝てないってこと?
いやいや。勝てない勝てるの話じゃないんだった。私は戦わないと、戦わないと死んでしまう。
……あれ?勝てなくても死ぬんだったか?
じゃあ勝つしかないじゃないか
……フフ
怪獣の腹を狙って殴ってみる。
ガスッ
硬いザラザラとした質感のものを殴りつけたみたいに掠れた音を鳴らすだけで、私の攻撃は効いていなかった。
「ッッッ!!」
反対に怪獣の攻撃で私は大きく吹っ飛ばされてしまう。
堪えろ堪えろ堪えろ堪えろ
痛みがなんだ?これぐらいこれぐらいこれぐらい
……痛い
あぁだめだ。
痛い
「ハァ……ハァ……ハァ……」
あぁ私は、どうしてこんな事してるんだろう?
私はどうして痛みを堪えなければならないのだろう?
どうして痛い思いをしなければいけないのだろう?
「グッ!!」
私は怪獣に地面に叩きつけられていた。
痛い
痛い
痛い
「ぁ」
何かが迫ってくるのが見える
「ぐあっ!!」
抑えろ抑えろ抑えろ抑えろ
また迫ってくる
「ぐっ!!」
声を出したら視聴者にバレてしまう
また迫ってくる。
「あっ!!も、もうやめ」
「ぐぁ!!」
「あ……」
ボキボキ
何かが折れる音がする。
グチャグチャ
何かが潰れる音がする。
キーン
みみがきこえなくなってきた
おさえなきゃおさえなきゃおさえなきゃ
しちょうしゃにばれちゃうしちょうしゃにばれちゃう
しにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくない
しにたい
………………
?
あ?
どうして?
どうしてどこかにいっちゃうの?
わたしをころしてよ
おわらせてよ
こんなじんせいおわりでいいよ
もういきていたくないよ
もういやだよ
?
かいじゅうのむかうさきにだれかいる?
は?
おねぇ、さん?
ちょっと、まって
お姉さん
お姉さん
お姉さん
逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて
怪獣の爪がお姉さんの顔をえぐった
お姉さんの顔は左半分を抉り取られた
あ
お姉さん死んだ
お姉さん死んじゃった
あれ?
お姉さんどうして笑顔なの?
治った?
これがお姉さんの力なの?
…治るなら人は笑えるの?
お姉さん、もう、壊れちゃった?
「ぅ、ぅ……ぉぉぉぉーそ、そのこはやらせないぜー」
おねえさんのこえだ
え?
お姉さんが私のために戦ってる?
……私がお姉さんのために戦ってたんじゃなかったっけ?
……え?
お姉さんの右手が、怪獣に当たって、お姉さんの右手が無くなった?
え?え?え?
お姉さんどういうことなの?
お姉さんお姉さんお姉さん
大丈夫なんだよね?お姉さん
治ってる?
早すぎる。有り得ない。
代償がある?
「ふふふふふふ……アハハハハハハ!!」
は?なんで笑って
「おっといけないいけない。怪獣は……ありゃ」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
……あれは私の知ってるお姉さんか?
違う。
絶対に違う。
違うはず。
違うんだよね?
違わないとおかしい。
人は顔が無くなったり、腕が無くなったりして笑えるわけない。
あれはお姉さんじゃない。
別のなにかだ
じゃなかったら……じゃなかったら……
……お姉さんは既に壊れてることになってしまう
「一応トドメ刺しといた方がいいかな。」
や、やめ!!
声が出ない。止められない。
あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
お姉さんの右手が……また……!!
なんでこんなことを!
どう見ても怪獣は既に死んでいた!
その肉片すらも壊そうとするなんて!
「ハハハハハ!!」
え?
あれ?
こっち来てる?
なんで?
なんで来るの?
怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
「理子ちゃん、理子ちゃん、もう大丈夫だよ!怪獣は倒して、配信も終わったから!」
そこにあったのはいつもと変わらないお姉さんだった
……なんで?
腕が無くなって顔が吹き飛んでなんでいつも通りなの?
あ、だめだ。お姉さんは助けてくれたのに。助けてくれたお姉さんにこんな感情抱いちゃダメ。やめろ。堪えろ。堪えろ。堪えろ。
「ヒ、ヒィ!」
あぁ!!だめだ!!
怖い怖い怖い怖い怖い!
これは私の知ってるお姉さんじゃない!
「ん?……まぁいいか。立てる?」
その手!!
綺麗に治っているように見える!
どうして!?
あんなにぐちゃぐちゃになって、なんで治ったの!?
……その手は怖い
分からない。もう、分からない。
怖い
「ま、まぁ……いいけど……」
「ごめん理子ちゃん。割り込んじゃって。ごめんね。逃げることにするよ。」
あ、違う。
お姉さんは助けてくれた
それは間違いないのに
そんな顔しないで
そんな顔させるな!
私が悪い私が悪い
謝れ感謝を伝えろ
「あ……待って……ぐぅ……助け…を……」
私の口から出るのはただの自分よがりな言葉だった。
気づいてしまった。
私は自分のことしか考えていないって。
いやだ
見捨てないで
いたい
しんじゃう
ごめんなさい
まもってもらったのに
ごめんなさい
わたしがまもるはずだったのに
ごめんなさい
ごめんなさい
……私はそのまま気絶し、気が付けば病院のベッドの上だった。
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私の怪我は魔法少女の自己治癒能力込でも1ヶ月は治らないものだった。臓器に骨が刺さっていたり血が全く足りていなかったり肉が飛び散ってしまっていたりしていた。
だから、1ヶ月で治るなら、万々歳だろう。
もう今は深夜だ。
私は病院のベッドで寝ていたが、今日のことしか頭にはなかった。
あれは
間違いなくお姉さんが魔法少女になった姿。
お姉さんは私を守るために魔法少女になった。
お姉さんは契約時に教えられた『真実』の情報量で壊れてしまったのだろうか?
……いやだ。
お姉さんはもう壊れてしまったなんて、認めたくない。
私が守りきれなかったせいでお姉さんが壊れてしまったなんて、受け止めきれない。
……怖い。
お姉さんは腕が吹き飛んだ。頭が半分無くなった。治ったとはいえ、痛いはずだ。ショックなはずだ。
しかし、いつも通りに振る舞えていた。1歩間違えば一瞬で死ねる戦場で、笑っていた。
……理解ができない。
怖い。
でもそれもこれも私が助けられなかった、せい……
……私の、せい
私を守ってくれた。私を助けてくれた。
そんなお姉さんが壊れた原因は私。
そんなお姉さんのことが、怖くて仕方ないのも、私。
私ってなんなんだろう
人のことを巻き込んで壊す
お姉さんじゃなくて私が壊れるなら良かったのに
なんで私は壊れないんだろう
壊れてしまえれば楽だったのに
……美桜にもう顔向けできない
魔法少女にさせてしまった。それにお姉さんの回復能力は異常だった。
あれには間違いなく『代償』がある。
そんな力を使わせてはダメだった。
お姉さんは気づいているのか?
気づいていなかったら、これからも使い続けるなら、
……私がお姉さんの代わりに戦い続ける
……それがせめてもの
ドンドンドン!!
「……入るぞ」
なんで今……
……私がこの世でいちばん嫌いな男の声がする。
ガチャ
返事も待たず、男は入ってくる。
男はニヤァと嫌な笑いを浮かべると話し出す。
「やってくれたな。理子」
「……」
「なんだぁ?ダンマリか?それでもいいけど、お前がやってきたことは、無くなんねぇからな?」
な?と男はもう1回繰り返すと笑い出す。
………………
………………
……………………………………苛立ちが募る
「理子よぉ今回の負け方は酷かったんじゃねぇか?てめぇのせいでよぉ、配信が盛り下がったじゃねぇか」
「……ふざけないで。私だって……私だって!『武器を使わせてさえくれたら』やれる!」
そうだ。『武器』を使えたら、お姉さんもこんなことにならなかったのに。使わせないこいつらが悪い。こいつらが!こいつらのせいで!!
……いや、いや!違う……
お姉さんを巻き込んだのは私
人のせいにするな
私が背負わなければならない
私が悪い私が悪い
どうして私はこんなにもどうしようもない人間なんだ
早く死にたい
もうとっくに限界なんだ
早く
早く……
「ハハハハハハハハ!」
男は愉快そうに笑いながら部屋から出ていく。
死ね
死んでしまえ
お前みたいな人間をなんで私たちが守らなければならない
……………………
……………………
お姉さん……
お姉さんには守ってもらった。助けてもらった。それなのにこんな怯えている姿を見せてはだめだ。次は、次会うときは『理子』として振舞おう。そしてごめんなさいとありがとうを伝えよう。
大丈夫
私は何回も同じことをしてきた
できる
できるんだ
できる……
………………
……もういやだよ
「う……うぅ……」
……目から落ちてくる涙を拭うこともできず、私はそのままベッドの上で泣き続けた。




