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魔法少女ごっこをしてるだけなのに、勝手に周りの人が曇っていくのはなぜ?  作者: さたけやま


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第41話 「助け」

私はゆっくりと……

 恐怖を噛み締めて理子ちゃんを理解するために、ゆっくりと階段を上る。


 7階に着く。


 だが……


 ……理解したいなんて思う権利は無かったのかもしれない。

 私はそう思った。


 そこには私が居た。


 私向かい合うように……


 沢山の理子ちゃんが居た。


 私が手を指し伸びていた。


 それに対して、1人の理子ちゃんが前に進み出て、泣きながら手を取った。

 その瞬間、


 私は無表情なまま手を振り払って、そのまま理子ちゃんの頬をはたく。

 はたかれた理子ちゃんはそのまま電池が切れたように倒れて……

 理子ちゃんは倒れたまま起き上がらず……

 次第に床に染み込んでいく。


 また私は手を差し伸べた。


 理子ちゃんは泣きながら手を取って……

 私はそれを無表情で振り払って……

 頬をはたく。


 理子ちゃんは起き上がらず……


 それがずっと行われていた……


 私はすぐに自分のせいだと気づいた。

 自分のせいで理子ちゃんは苦しんでいるんだと……


 気づいてしまっては……

 落ち込むだけだ……


 でも……

 今更この程度がなんだって言うんだ。

 私はもっと酷いことをしている。

 私がしてきたことはもっと酷い結果をもたらしている。


 ……私は次の階段を登った。

 

 8階は……屋上だった。

 天井が無い、ただの屋上。


 屋上には1組の40代ぐらいの男女がいて……


 男女は涙を流しながら抱き合い、そして


 床に横たわった人の皮のようなものに、呪詛を放つ。


「理子のせいで!理子なんて居なければ!」

「理子なんて産まなければ!理子のせいで私たちは!」


 ……私は瞬時に理解してしまった。

 その皮が……


 その川が理子ちゃんだ……


 理子ちゃんは自分を見失ってしまい……


 自分が無くなってしまった。

 だから……

 皮になってしまったんだ……


 なら……


 この宮殿の中で弄ばれていたなにかは……


 理子ちゃんだったんだ……


 つまり……

 あの何かを集めれば……


 理子ちゃんは……


 帰ってくる……


 でも、ここに連れ戻していいのか?

 だって……


 ここは……


 理子ちゃんが思う世界の姿なんだろう。


 こんな世界に理子ちゃんを……


 いや、それは理子ちゃんを連れ戻したあと、何もしなければの話だ。

 私が守ろう。

 私が理子ちゃんに降りかかる火の粉は、全て払おう。


 あぁそれがいい。

 だって理子ちゃんはもう十分に頑張ったんだろう。


 理子ちゃんのことを苦しめてるのが管理局なら管理局だって壊してやる。

 それが世界なら世界だって壊してやる。


 ……それが私なら……


 私は他の理子ちゃんを害するものを壊して


 ……大人しく死を選ぼう。


 それがいい。


 そう決めた私はすぐに助走をつけて……

 変身してこの屋上から飛び降りた。


 そして……


 地面に落ちる。


 変身していたので痛みはない。

 目の前には脂肪で体がダルダルに垂れている男。

 そして、その男に理子ちゃんを渡す人間達。


 その全てを……


 ———————————————————————————


 私は理子ちゃんを集めて、また屋上へとやってきた。

 道中に居たものは……


 全て殺した。

 赤ちゃんや幼稚園生、小学生や中学生。


 知ったことでは無い。


 私自身だって、殺した。


 私は改めて自分がいた位置に立って、理子ちゃん一人一人に手を差し伸べて抱きしめた。

 理子ちゃん達は咽び泣くと粒子になって空気と混ざる。

 その粒子は屋上に向かっていくように上へと上がっていくのが見えていた。


 私は理子ちゃんの皮に呪詛を吐く、男女すらも……


 殺した。


 私にはこれが理子ちゃんの両親であろうことは察しが着いていた。

 そして、理子ちゃんの認識では理子ちゃんに害を与えるような存在であるというなら……


 

 そう思った私は、殺した。


 私は理子ちゃんを連れ戻すため、

 手に抱えていた理子ちゃんを理子ちゃんの皮にのせてみる。

 

 まずは赤ちゃんが押して落とし続けていた大きな肉が理子ちゃんの皮にモゾモゾと入っていく。

 理子ちゃんの胴体が出来た。

 

 それだけで改めてその皮が理子ちゃんだと認識した。

 次は幼稚園生達が砂遊びのように使っていた小さな肉片達。

 それらが皮に入っていき……


 理子ちゃんの顔ができた。

 理子ちゃんの顔は無表情で血の気を感じない真っ白。

 そこに必死にすくい上げてきた赤い水。

 これが吸い込まれていき、理子ちゃんの顔に血の気が戻る。


 ……あれ?理子ちゃんってこんなに……


 私はかぶりを振って考えたことを打ち消す。


 次は子供達がチャンバラをしていた足。

 その足が……

 理子ちゃんの足とピッタリ一致した。


 ……なんだか理子ちゃんって……


 ……私はまたかぶりを振った。


 そうやって繰り返し理子ちゃんが作られていく。

 そして、理子ちゃんの体が完成し、最後に粒子が集まってきて……

 理子ちゃんの心臓の辺りに吸い込まれていく。


 完成したのは血や怪我の1つ無い、綺麗な理子ちゃん。


 理子ちゃんはまだ目覚めない。


 大事な何かが欠けている気がする。


 何か……


 理子ちゃんが目覚める理由かもしれない。

 理子ちゃんの体があっても、理子ちゃん自身がもう起きたいとは思っていないのかもしれない。


 ……私は1つだけ方法が思いついていた。

 

 まるで物語の王子様のような、そんな方法。

 私の口づけ……


 私の口は穢れている。

 最初は美桜というとても純粋で一切穢れていない妹に、好意を伝えられてキスをされた。


それ以降が……穢れているんだ……

 

 2回目は能愛を所有した証拠として能愛にキスをさせた。


 3回目は咲さんへの愛を伝えて、殺すためにキスをした。


 そして、今回が4回目。


 私の口は決して綺麗では無い。

 それに王子様というような存在でも無い。


 でも……

 理子ちゃんはキスで目覚めるような気がした。

 道中で見た光景は愛が無かった。

 両親でさえ愛を感じなかった。


 理子ちゃんは愛を求めている。

 そんな気がした。


「……違ったら、ごめんね?」


 私は先に謝っておき……

 理子ちゃんの綺麗な唇に自分の唇を近づけて……


 チュ


 キスをした。


 ……私は目をつぶっていた。

 

 だから急に肩を掴まれる感覚に驚いた。

 肩をがっしりと掴まれて、体を起こされる。

 そして、目を見開くと、理子ちゃんが起きていた。


 理子ちゃんは私の方を抱いたまま、唇を離さない。


 その顔は涙でぐちゃぐちゃになっていて、目は「どうして?」と喋りかけているように理解できないものを見る目だった。


 でも……

 嫌そうな顔ではなかった。


 だから、理子ちゃんが満足するまでずっと……


 ずっと……


 それが何分、何時間、何日かはわからなかった。


 だが、私たちはキスをし続けた。


 普通ならありえない時間だが、この空間は理子ちゃんに味方をし始めたようで、可能とさせた。


 キスをやめたのは理子ちゃんからだった。

 

 理子ちゃんが安心したように、そっと唇を離す。

 そして、正座している私の体にもたれかかってくる。


 私はその体を支えて膝枕に誘導する。


「……どうして……どうして今更助けてくれるの……?」


 理子ちゃんは初めて、喋った。


 私はその質問に悩むこともなく……


「謝りたかったから……そして、もう離れたくなかったからかな」


 不思議な話だ。

 私は理子ちゃんとの関係はあまり深くない。


 しかし、

 本当にそう思ったのだ。

 理子ちゃんとは……

 もう離れたくなかった。


「……そう。私……私でもいいの?『理子』じゃなくて、『私』でもいいの?」


 ……そういえば理子ちゃんの喋り方は私の知る理子ちゃんとは全然違った。だが、そちらの方が理子ちゃんらしい。


「理子ちゃんが楽な方でいいよ。理子ちゃんの好きにしていい。どっちでも私は受け入れるよ」


 私はそう答えた。


 理子ちゃんは声を上げて泣いた。

 私は理子ちゃんの頭を撫でて、そっとこの空間を眺めた。

 空間は白く綺麗なのに、中にある宮殿では理子ちゃんをいじめるような世界が広がっていた。


 理子ちゃんはまだ純粋なはずの年齢で、しかし理子ちゃんを壊すように外の世界はできていた。

 だから、理子ちゃんの純粋さとそこに入り込んだ異物のせいで、この世界は綺麗であり歪に映るのだろう。


「……理子ちゃん。私が理子ちゃんに何かをするやつは、全部殺してあげる。だから、安心して目覚めてよ」

「……そんな事しなくていいよ。私は……私は、私のことを愛してくれる人が1人いるだけで、それだけで、いいんだよ」


 理子ちゃんはそう言って、それ以来黙った。

 私も、黙った。


 私は理子ちゃんを膝枕したまま、ただ近くに誰かがいる幸せを改めて思い出していた。

 能愛や美桜、一緒にいられない彼女達。


 私の膝にいる、私のそばに居てくれる理子ちゃん。


 似ているようで、少し違う。


 そんなことを考えていたら、プツッと意識が途切れた。


 一瞬暗闇が広がり、目を開くと、


 元の世界に戻ってきていた。


「……もー!よくもやってくれたねー!?途中で気づいてたけど、理子ちゃんが嬉しそうだったから止められなかったしー!」


 そんな姫愛縲さんの声で、私は理子ちゃんの内心を少し、知れた。

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