3章 幕間2 「いなくなって」
美香が居なくなって1週間。
私と美桜の生活というのは、もはや成り立っていなかった。
美桜は寝ていないのか酷い隈が出来ている。
そして膝を抱えてずっとお姉ちゃんと呟くだけ。
時折聞こえるお姉ちゃん以外の言葉は、私が体を許せば、などの危険な言葉ばかり。
美桜はご飯も食べようとしないので、私が無理やり食べさせているような、そんな状態。
かくゆう私も、美香の居場所を知っているだけで、美桜と違うのはそれぐらい。
美香のため、そう思っているからどうにか耐えられているが……
美桜みたいに隈は出来ているし、なんだか日光が眩しく感じて外に出られない……
……生きることが難しくなっていることに気づいた私は、カナタに連絡して、ご飯の買い出しを任せるようになった。
カナタに連絡出来たなら、そのまま美香を連れ戻しに行けばいい、とは思えなかった。
あの状態の美香を連れ戻せば、私たちみんな同時に壊れてしまうような気がした。
……そうなった方が幸せなような気もして来たが、倫理観の最後の砦のようなものが立ち塞がって、私にそれを選ばせてくれない。
……美桜は今も美香のベッドの上で膝を抱えている。
美桜のように依存してしまうから、
私は意図的に美香の物から離れるために、ソファーに座っていた。
私は意識を探知魔法に向けると……
美香の位置が動いていることから、まだ生きていることに安心感を得る。
しかし……これは場所が……
……まぁいい。
こうやって確認することを1時間に1回やらなければ、体がおかしくなってしまいそうだった。
私は現状の打破を求めて、思考の海にしずむ。
美香を連れ戻すには美香が正常である必要がある。
そして、美香が今いる場所は決して美香を元には戻してくれない。
……私には一つだけ確実な方法が思いついていた。
だが、これを行えば……
これを行ってしまえば……
美香は私のことを……
いや、これは最終手段だ。
こんな方法には頼りたくない。
あとは……
出来るかは分からないが、美香を説得することだ。説得と単純に言ったが、それ自体を行うまでも困難がある。美香が今いる場所は気軽に行ける場所では無い。
説得するなら美桜も連れて行った方がいいと思うが……
何も危険がないとは、言い切れない場所だった。
カナタとも相談して、望とカナタと私と美桜でその場所に行くのはどうだろうという話になった。
その際……
もし私が判断を間違えたら、止めてもらうように言った。
……私だって心配じゃない訳がない。
会いたい。
おかしい美香でもいい。
私がどう扱われてもいい。
ただ……
ただそばに居たい。
そんな私が正常な判断を出来るとは思えなかった。
美桜だってそうだ。私一人では止められないかもしれないし、人手は多い方がいい。
説得に向かうのは、望の調整が終わってからだ。
望が「今度こそ万全な状態で皆さんのお役に立ちたいのです」と言ったから、待つことになった。
実際問題、全員が本気を出しても、もしかしたら全員負ける……いや、おかしくなってしまう可能性もある。
だから私は賛成だ。
私たちは先を見据えていて、今は行動できない。
それでも……
それでも美香、
私達はあなたのことを忘れた訳じゃない。
だから、
絶対『負けないで』
私たちが行くまで待ってて




