第31話 「危険」
走った。
私は走った。
行く宛てもなく、ただ……走り続けた。
だから、奇跡なのだろう。
偶然なのだろう。
違ったら……
違ったらそれは
……日常が壊れたってことだ
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「お姉さんー久しぶりー私のこと覚えてるー?覚えてなくても別に大丈夫ー」
「……なんで、なんでここに居るの?」
私の目の前には、序列七位であると同時に、私と美桜を助けてくれた、翠が居た。
……でも、信用出来ない。
だって序列がついている。
管理局を通した人間だ。
信用できるわけが無い。
「ここは私の地域ーそこに怪獣のような気配を感じてー来てみればお姉さんがーまだ生きてたんだー管理局に狙われてもう死んだかと思ってたー」
翠は私に何かをしに来たわけじゃない?
それは分かった。
だが、それなら、どうして私の目の前から居なくなってくれないのだろう。
目の前に立たれると、
殺したくなっちゃう
「お姉さんー……殺気は隠した方がいいー私だから攻撃してないけどー他の人なら今頃お姉さんぐちゃぐちゃになってるー」
ぐちゃぐちゃ……
殺気を出した相手ならぐちゃぐちゃにしてもいいんだ。
そっか。
そうだったんだ!
……だったら!
だったら!
管理局へ行こう!
敵地だ!
敵地なら、どれだけグシャグシャにしても、どれだけ悲鳴を吐かせても、許されるんだ!
あぁそうだったのか……!
だったら行くしかないじゃないか!
凪のことを助けるようで癪だが、ツバメのことも気になる。
行こう。
管理局へ。
「翠、ありがとう。私用事出来たから行くね。」
「お姉さんー止まった方がいいー私の前でその顔をした人間は全員死んだー」
「止まれないよ。私はもう。」
「もう知らないー私は忠告したー」
「いいんだ……最悪それで死んでも……」
私は駆け出した。
このまま居ても何も変わらない。
なら欲求をっ!
この果てしなく大きい盃のような欲求を、満たしてくれる黒い快感だけを求めて、私は……
私は駆け出した。
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「お姉ちゃん……どうして……!」
美桜は玄関に蹲って泣いて、そのまま動かない。
……私には今の美香がまともとは思えなかった。
美香を探すことは……
全く不可能じゃない。
私の模倣した魔法の1つに探知するものがある。
今だって使っている。
……だから、美香の行き先も……
分かってしまう。
どうして今管理局なんかに行くの……
あんなところに行ったら……無事じゃすまない……
……私も行くしか……
……でも、私でも……きっと無傷では帰れない。
いや、美香がいない日々なんて考えられない。
行こう。
……でも、美桜をこのまま1人にもしておけない……
一緒に来させる訳にも行かないし……
美香は美桜が居なくなったら悲しむ。
美桜のことを……見てあげるべきなのかな……
美香はきっと死なない。
いや、いくつか殺し方は思いつく。
圧死には耐えられないだろう。
回復には限界があるだろう。
複雑な頭を何回も壊されたら、すぐに限界が訪れるだろう。
氷漬けにされてそのまま砕かれたら、再生できないだろう。
傷口を燃やされて回復より早く傷が出来たら再生できないだろう。
回復より早くダメージを与えられたら死んでしまうだろう。
でも、そんなの抜きにしたって美香は殺せない。
……今の美香は再生だけじゃない。
私の前で使ったカナタのワープ。
体内に飼っているクジラ。
死にそうになったらワープして逃げればいいし、最悪クジラに暴れさせれば逃げることぐらい出来るだろう。
……そんな冷静な判断が出来たら……だけど
やっぱり心配だ。
でも美桜のことも見過ごせない……
「お姉ちゃんっ!お姉ちゃんっ!」
美桜が急に立ち上がってドアに手をかけた。
私は急いで美桜を体を使って止める。
「だめっ!美香の所には行っちゃダメっ」
「離してくださいっ!お姉ちゃんがあんな表情……今すぐ何か起きてもっ!おかしくないんですよ!?それなのに行くなって!!私はお姉ちゃんを探す!邪魔しないで下さい!!」
……やっぱり、美桜は危険だ。
ごめんね。美桜。
ごめんね。美香。
私は美桜を止めるし、美香の元へは行けない。
何をしたいのか分からないけど……
無事に生きて帰ってきて。
私の
私の唯一の居場所……




