表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女ごっこをしてるだけなのに、勝手に周りの人が曇っていくのはなぜ?  作者: さたけやま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/50

第30話 「穢れた者」

「……私は大学にいる。だから、大丈夫……これは日常……過ごしていても……何も起こらない……起こらないんだ……だから大丈夫……大丈夫……」


 無理だ……!

 耐えられない……!


 私を渦巻く不安と罪悪感は言葉にして吐き出さないと、頭がおかしくなりそうだった。


「帰ろう……!無理だ……!私には無理……!!うぅぅ……!!」


 ……この体をめぐる非日常な感情が、私に発散先を囁く。

『能愛をぐちゃぐちゃにしちゃえ!』

『美桜は何でもしていいって言ってたよ?なら、手を出してもいいじゃん!』


 ダメ!ダメ……


 でも……


 ……どうしてダメなんだろう……?


 能愛はそれを望んでいるし、美桜はなんでもしていいって、言った。


 ……あぁ、なら、好きなだけ……


 好きなだけしよう……


 ……私は感情を抑えるのをやめた。だから、少し気が楽になって、そのまま家に帰れた。


 ……しかし、家は私にとっての発散先にはなりえなかった。

 ————————————————————————————

私が家の前まで着いた時、異変に気づいた。


 髪はボサボサ、目には大きなくま、猫背に腰を曲げて……

 普段とは全く違う見た目の凪ちゃんが私の家の前に居た。

 

「美桜。……私のお願い、聞いてもらえるわよね……!?」


 ……凪ちゃんは歪に笑う。

 

 私は呆然として言葉が出ない。


「え、ええと……内容によるのですが……どうしたんですか?」

 美桜が心配そうに聞く。


「わた、私のお姉ちゃんが……小百合が管理局に捕まって……!助けに行ったのに、私の計画が間違っていたせいで!!二人が捕まって……!!」


 ……は?

 今なんて言った?

 おい。

 ツバメが捕まったのにお前は逃げてきたのか?

 は?


「だから!美桜……!お願い……私と……私とみんなを助けに行ってくれない……!?人数がいないと……無理なの……お願い……!じゃないと……じゃないと私……おかしくなっちゃいそう!」

「ひっ……い、いえ、私はっ管理局とた、戦うなんて……したく……」


「お願いっ!!」


 凪が美桜の肩を掴んだ瞬間……

 私の体は勝手に動いていて、凪の頬に向かって……


 パーン!!


「私の妹を巻き込むなっ!!死にたいなら勝手に死ね!!」


 凪は頬を抑えて呆然と私を見ていた。


 私の胸の中には苛立ちと怒りでいっぱいだった……


「わた、私……」


 ……凪はゆっくりと立ち上がると、とぼとぼとどこかに歩いていく。


「な、凪ちゃんっ——んん!んんんんん!!」


 ……美桜が凪を呼び止めようとするのを、必死に口に手当てて止めた。


 ダメなんだ……

 ああいう人間と関わったら、巻き込まれるだけじゃなくて、自分まで不幸になる。

 私には分かる。

 だって、おかしくなってた時の私みたいな顔をしていた。

 じゃあダメだ。

 じゃあ美桜と関わっちゃダメだ。

 美桜は穢れてないんだ。

 美桜を穢すな。

 美桜は綺麗なんだ。

 お前ごときが触るな。


「……中に入ろう……」


 私は美桜を押さえつけて、無理やり家に入る。


「んん!んんんんんん!!」


 美桜はずっと暴れていた……

 でも仕方ない……

 関わったら不幸になるのだから、仕方ない……

 関係ない人の為に命をかけるなんて普通じゃない……

 ダメなんだ……


 でも……

 ツバメ……!!

 捕まった……!!

 

 私……


 でも私……!

 ツバメのことが心配で仕方ないんだ……!!


 どうしたらいいの!?

 

 美桜を止めておいて……!!


 私が行きたくなってる……!!


 でもダメだ。日常が崩れる。日常は簡単に崩れるものなんだ。美桜が居て、能愛が居る。それでいいじゃないか。


 それで……


 ———————————————————————————

「お姉ちゃん!どういうことですか!?どうしてあんなことを……!」

 

 美桜は食ってかかるように私に言う。


「……どうも何も無いよ。関わってもろくな事にならない。だから止めた。それに凪ごときが美桜に触るなんて許せなかった」

「肩に触れただけじゃないですかっ!?お姉ちゃんどうしちゃったんですか!!なんかおかしいですよ!!」


 ……あぁそれが、肩に触れたことが、おかしいことだとは思えないんだ……

 美桜はきっと、これからも汚い人に触られ続ける。

 そして穢れる……


 ならいっそ、私の手で、


 私がぐちゃぐちゃにしても……いいかな


 ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン


 あぁ……最高の気分だ……


 私が美桜に向き直ってすぐだった。


「美香、待って」


 ……能愛が私を止めたのは


「どうして邪魔をするの……?返答次第では……私にもどうなるか分からないよ?」

「美香、美桜が望んでないことをしちゃダメ。後悔する。」

「っでも!!でも言ったんだ!!美桜は何でもしてくれるって!!だったらいいじゃん!!私がぐちゃぐちゃにしても……」

「……美桜の顔を見ても……言える……?」


 美桜は……


 あぁ……

 怯えてる……


 でも……でももう抑えられない……

 もう無理なんだ……

 美桜じゃないと嫌だ……

 美桜をぐちゃぐちゃにしたい……


 美桜を……私の手で、穢したい……


「美香がそれでもするなら……私は本気で止める」

「どうして!?それなら……それなら私……!」


 この感情はどうしたいいの……


 ……私は美桜から離れた……


 ここには居られなかった。


 私だってわかってた。

 美桜に手を出すのも能愛に手を出すのも、やってはいけないことだって。

 でも抑えられない。

 でもしてはいけない。


 なら、

 逃げるしか無かった……

 

 なら、

 飛び出すしか無かった……


「お姉ちゃん——」


 美桜の止める声が聞こえた気がしたが——


 ……私はもう家の外にいて、そのまま宛もなく走り続けた。


 あぁ一緒じゃないか……

 凪も、美桜にあんな顔で止められていた。

 なんだ、まだ私は……


 

 狂ってたんだ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ