第26話 「不可思議」
ツバメと話し合った日から翌日、今日は2人とも大学に揃う日だったので、例の気配について調べてみようという話になっていた。
「じゃ、じゃあそのホアちゃんってのはお腹の中に飼ってるクジラのことなの……?」
ツバメは目を細めて顔もいっそう老けて見える顔で聞いてくる。
……何その顔
「そうだよ。ホアちゃんはすっごく頼りになるんだよ?この間も、私が能愛を殺そうとした時もー……あ、いや、なんでもない」
「……プレイでも殺しはダメだし、プレイに役立つクジラってなんなん……?」
……ツバメの言っていることはたまによく分からない。
それに、
危ない。
つい能愛を殺そうとしていた話をしてしまうところだった。
最近の私の口はとても軽くなっている。
おかしくなってた時に、思ったことを直接垂れ流す癖がついてしまった。
それに、私はまだ……まだ、能愛をいじめたくて体が疼くんだ……
私の頭は何かを考えていないと勝手に、クジラで能愛の肉を食べ尽くすような、惨い妄想をしてしまう。
……そして、そんなことを考えていたら背筋に電流が走るような……
……気をつけないと。
ガララララ
教室のドアが開き、この授業の指導員が入ってくる。
私たちは授業が始まるので、そこで一旦会話を打ち切った。
……この授業、kがいつもいるのに、今日は居ないなぁ……
kにも謝らないといけないのに、会えない……
元々毎日合うような関係では無かったし、どちらかに用がなければ話すこともあまり無かった、ような気がする。
謝る為だけに呼んでいいものか……
……kも心配してるかなぁ
でもツバメを魔法少女にしてるぐらいだし、kなりの目的があって忙しいかも。
うん、今度会った時に謝ろう。
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私たちは教室内で話せる話ではなかったので、大学外の山まで出てきていた。
「それで、例の気配はまだ感じるの?」
「うーん……そうだね。この大学内か……それかこの山……どっちかに居そうな感じがする。」
うーん……
kでさえそんなこと言っていなかったのになぁー
ツバメは優秀なんだなぁ……
「ならとりあえず大学内見てみる?」
「うん……どうやって?」
「え?ツバメが近くに行ったら、ここ!みたいな感じでわかったりしないの?」
「うち、金属探知機じゃないから。それに……気配が大きすぎて少なくともこの大学の周りじゃ、どこにいてもそばに居るような気する……」
「え、じゃあどうやって探すの?」
「…………………………」
「…………………………」
えっ?
じゃあどうやって探したらいいの?
……無策?
あーーーもう……しょうがないよね……
「……kを呼んでみようかな……?kなら何かわかるかもしれないし。」
「……あの変態ね……まぁいんじゃない?うちはちょっと離れとくけど。」
k嫌われたなぁ……
そういえば私がkを呼び出す時にしてるのって過去に凪ちゃんが妖精を呼び出す方法として教えてくれたものと一緒な気がする。
いつもは感覚でやってたけど……
今回はその言葉を思い出して……
胸の辺りに魔力を集めて……
……いや魔力はまだ正直よく分かんないけど
でも胸辺りに何かを集中するイメージで……
「来て!」
眩い光が。
あー……なんて言って謝ろうかな……
あ、出てきた。
「k——」
「望ーーー!!!」
ッびっくりした。珍しくkが叫んでる……
「k、どうしたの?」
「む?ここは……ふむ久しぶりにこの魔法を使われたな……なんだか懐かしい気がする。私を呼んだのは美香か。……美香!その様子だと元に戻ったようだな……!良かった!」
「kにも迷惑かけちゃって、ごめんね。……それで、kは今なんで叫んでたの?何かあった?」
「望が皿を割ってしまったのに破片を素手で拾おうとするから、止めようとしたのだが……!遅かった……!!」
……望ちゃんあの腕で皿の破片ぐらいで怪我するのかなぁ……
「ちょっと心配したのに……まぁいいや。k、ツバメがこの大学で凄い気配を感じてるみたいなの。何か知らない?ツバメの反応を見てる限り、もしかしたら能愛より気配が大きいかもしれないの」
kは「ふむ」と言って少し考え出す。
「……その気配というのが何を参照して発されているのかは知らないが、能愛は本気で戦うなら序列5位は下らない実力だ。戦闘力で言っているなら、……もしかしたら序列三位位はあるかもな。」
三位……
……正直能愛に勝てたのは、能愛が本気を出さなかったからだ……
……今の私じゃホアちゃんと一緒だとしても、序列七位翠にも勝てないだろう。
それどころか、美桜にも勝てないかも。
……美桜以外と強いらしいし。
溜めが長い技しか使えないから戦いにくいらしいけど、破壊力だけはあるらしい。
美桜と能愛が小競り合いをしている時に美緒がそう言っていた。能愛も知っていたのか、否定はしなかったし。
とにかく、
うーん。
私は少し考える。
でも、考えなくても分かっていた。
無理かも!
「k、そもそも序列三位ぐらいはあってもおかしくない人って、この世界にどれぐらいいるのか、分かる?」
kは考える間も作らず、話し出す。
「ふむ……少なくとも序列三位より序列が上の魔法少女3人、能愛姫愛縲煉で3人……ここまでで6人。あとはまだ未知数だが、ちゃんと戦った望、姫愛縲が『管理局のジジイ』と呼んでいる老人、ここまでで2人。全部合わせて8人はいるだろうな。」
kは少し悩む様子を見せると、考えをまとめるように呟き出す。
「………だが、どれも……こんな場所にいるはずが……」
8人かぁ……
8人……
少なくとも能愛と望ちゃんは仲間だから心配ないけど、それでもなぁ……
もし本当にそのうちの一人を引いて、戦闘になってしまえば……
……今の私たちじゃ、勝てないよね。
うん。一度出直したほうがいいかも。
能愛を頼るなり、望ちゃんに協力してもらうなり、何かしらの対策を取らないと。
「k、私たちはこの気配を探ってるんだけど……今日は一旦出直すよ。能愛がいたらなんとかなるかな?」
「……環境を壊してもいいなら、何とでもなるだろう」
「そっか。なら能愛に頼もうかなぁ」
「能愛は美香と和解できたんだな……良かった……!」
kは噛み締めるように呟く。
和解……
あんなことがあった上での和解だなんて……
……kには言えないね
「ごめんk呼び出しておいてだけど、ツバメ放ったらかしちゃってるし、私もう行くね?」
「あぁわかった。私の方でも何か分かれば知らせよう」
「ありがとう!じゃあね!」
kと別れを告げて、
私はツバメがいる場所へ……
向かおうとした瞬間、
——空気が揺れた。
それは圧力のようであり、衝撃波のようであり……
私はそれにぶつかった瞬間、咄嗟に腕を前に出していた。
……腕が切り傷のようにパックリ割れていた……
何かが起きている……!
……ツバメっ!!
私はツバメのことが心配で、駆け出した。
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「…………マジ!?」
「わたくしを見つけていただたこと、感謝しますわ〜」
……えっマジ!?
超偶然気配の根幹みたいなのを感じて、触れてみたら……急に空間が捻れてこのお方が……
……嘘でしょ!?
うち今日メイクとか気合い入れてなかったのに!!
なんでそんな今日に限って!?
「今は〜何時ぐらいになるんでしょうかぁ〜?わたくしが居なくなってからどれ程が経ったのでしょうかぁ〜?」
……だが……どこか……どこか違う気がする……
「あ、貴方様が引退なさってから!今で2年になります!!」
う、美しい……
でも……
でも……
この人は、こんなに怖い人だっただろうか……?
……いや外見には一切変化が無い……
ただ、ただ何か……
何か違和感が……
「2年ですかぁ〜随分とまぁ……随分と好き放題されたみたいですねぇ?……あら?」
……っ!?何かの気配がすごい速さで!
「危な——」
パーン!
……目の前のお方が飛んできたものにそのまま腕を貫かれる……
この人は自分を貫いて地面に刺さった物体を見て言う。
「っ!銃弾ですか〜……?思い当たる人物はっ居ますが……2年の間で変わってしまわれたんですねぇ〜……こんなことをする方では無かったのですがっ」
どうして銃弾なんてものが飛んできて……
っ!誰かに狙われているのか!?
……どうして?
魔法少女として活躍していただけのこの方がどうして銃で撃たれる?
「……ふふっ、どうやらしくじったみたいです〜……」
っ!!小百合さんから怪しい気配が……!
もしかしてっ!さっきの攻撃になにか!?
私はもう一度銃弾に意識を向けた、その瞬間……
ダンッ!!
大きな地面を鳴らす音がしたと思ったら、小百合さんが居なくなっていた……
「えっ?ちょ……」
……行ってしまわれた……
大学で感じてた気配はこの方かぁ……
それなら納得できる。
……銃で撃たれているのに大丈夫なのだろうか……?
少し心配だなぁ……
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「ほれ、今寝とったじゃろ?お主のせいで解放されたではないか。」
スパン
老人は機械に向き合う男の顔を叩いた。
「すみません!」
「お主の人生は、このボタンを押すためにある。そうじゃな?」
「はい!私の人生はこのボタンを押すためだけにあります!」
「ほうか!なら終身雇用じゃな!」
「ありがたき幸せ!」
「死ぬまで寝るでないぞ?そのままボタンから手を離すな。」
「は!もちろんであります!」
男は気にした様子もなく、笑顔で機械に向き合い続ける。
……その部屋にいる人間は皆同じ見た目の男性だった。
そして全員が、笑顔を浮かべていた。
「全く、部下の意識が低いと上司は大変じゃなぁ……しかし、逃げられるとは思うなよ?お主が死ぬまで逃がしはせんわ!ワハハハハハハハ!!……あ、そうじゃ。あれ、あの、あれええと『機神』に使った……名前が出てこん。」
「『SSS』ですか?」
また別の男が聞く。
「おぉそんなんじゃったそんなんじゃった。『機神』にそれを使わせろ。」
「もう向かわせておきました!」
「おぉ〜!お主は出来るなぁ……それで、新しい『SSS』はワシが持っとるが、まさか既に『機神』に使ったものをそのまま持たせて向かわせたんじゃないだろうな?」
「向かわせたどころか、使わせました!」
「ほうか!わしの命令を待たず自分勝手な行動で『機神』を解放した、お前のような『自主性』は要らん!……廃棄じゃ」
老人が悪辣な笑みを浮かべた瞬間、
男の真上にある天井から、人の手が沢山降りてきて……
男の首を掴んで、捻る。
男は笑顔のまま涙を流し……
ブチャア!!
「ほれほれ!機械を汚すでない!壊れてしまうではないか!ワハハハハ!」
……老人の目線の先にあった機械は人1人では説明ができないぐらいの血で汚れていて、元の色が判別出来ないほどだった……
「ワシの元にもう一回帰っきてくれるなんて、良い奴じゃなぁお主は!」
老人の視界に映ったディスプレイには猛スピードでこちらに向かっている小百合が映っていた。
老人は大きく笑った。
……世界に光あれば、影がある。
……影はまた濃くなり始めていた……




