第25話 「気配」
「はー……ツバメ……その服すごい似合ってるねー」
ツバメは元々地雷系に近いファッションだったから、ゴスロリを着られてもあまり違和感がない。
というか似合ってる。
「……うち……いや、ありがとう……」
私はツバメを家に入れ、リビングで二人で話していた。
「ツバメが魔法少女……か……」
……ツバメに魔法少女について、教えてあげた方がいいかな?
……いやぁ…でも…ツバメは魔法少女に夢見てるからなぁ……
うーん……
でも、命に関わるかもしれないし……
あれ?そういえば……
「ツバメはどうやってここに来たの?」
「うーん、美香の……匂い?気配?を辿ってきた」
「えぇ私臭い?」
……脇かなぁ
でも夏終わったしなぁ……
うーん……
結構ショックかも……
「ううん。なんか、多分魔法少女としての力ってこと。うちは気配を感じ取れるみたい。美香の気配はちょっと独特な感じがする。……2つある?」
2つ……
あぁ
ホアちゃんのこと言ってるのかな?
クジラのホアちゃん。
ほあああって鳴くから。
ホアちゃん。
「それに……この家からはあと2つ、気配がするね。片方は妹さんでもう片方は能愛ちゃん?」
……おぉ!
「大正解!ツバメすごーい!」
「うーん……でも、能愛ちゃんの気配は、圧迫感あるね。能愛ちゃんも魔法少女なん?」
……能愛が魔法少女?
そんなこと言ってたような……
言ってなかったような……
言ってたとしたらkだけど、kの話は大抵聞き流してるからなぁ……
「……多分そう?」
「あと……能愛ちゃんから美香の気配が薄らするのは何でなん?」
「………………」
「えっ今黙るん?怖っ」
多分……
多分、能愛に私の体を食べさせてたからだろうなぁ……
私何やってたんだろ……ほんと……
そして、どう伝えたらいいものか……
「………………能愛は……私の……いや、私を食べたからだよ」
「私を?食べた?……ふーん……そういう話は開けっぴろげに喋らない方がいいよ。……聞いてるほうが気まずいって」
ツバメは居心地が悪そうに私から視線を逸らす。
え?おかしなこと言ったかな……
伝わったと思ったんだけど……
流石に私のあんなものを食べさせたなんて、言えないしなぁ……
「あーあと、k?だっけ?あのモヤ長身パパ活変態男。あいつの気配独特だね」
「えっなんて?も、モヤ?」
「モヤ長身パパ活変態男」
……パパ活?
変態?
……kには似合わない言葉だなぁ
なにかの誤解なんだろうけど……
ん?あれ?
まさか……
「……もしかして、妖精を介さず魔法少女になったの?」
「……うん……変態に胸触られて」
「……えっ?」
また特殊な方法で魔法少女になったなぁ……
ツバメが私の様子を見て、少し笑った。
「……冗談だよ。kに魔法少女にしてもらった。」
「あーkか!良かったぁ……」
「良かったって何?」
「……いや、もしかしたら、なんだけど、正規の手段で魔法少女になると、管理局に文字通り管理されるかもしれないんだよね。命から何まで全て。私は……話半分で聞いちゃったからもうあんまり覚えてないけど、そうらしいよ。」
ツバメは少し考え込んでいる。
「ふーん……ま、いいよ。うちは魔法少女やる気ないし。」
「え、じゃあなんで魔法少女になったの?」
「……秘密」
「えー」
教えてくれてもいいのにー
そんなことを考えていると
ツバメは少し悩む仕草を見せる。
「どうしたの?」
「……大学で感じた気配……あれは大丈夫なんかなぁと思って」
「大学で?……大学にも魔法少女っているのかなぁ?聞いたことないや」
「……すごい圧迫感だったよ。大学にいるだけで心臓が止まりそうだったよ」
「そんなに……」
ツバメはクールなイメージがあるし、そんなツバメがそこまで言うぐらいだ。
よほどのものが居たんだろう。
……でも、大学内で魔法少女は見たことないけどなぁ
……いや、魔法少女自体あんまり知らないけどね……
うーんちょっと気になる。
……でも
私はまだ、正常じゃない。
まだ薄ら、薄ら人をいじめたいという欲求が渦巻いている。
そのせいで私が正常な判断をすることは難しい。
そんな私が1個の判断基準として設けたもの。
それは……
美桜に誇れるか。
この一点だけだ。
大学に危ない気配があって、放置した結果被害が出たら、それは……
それは美桜に誇れないよね……!
うん。お姉ちゃんらしい……かも?
まだわかんないや。
でも、決めた。
「ツバメ、私、その気配探ってみるよ」
「えっ!?……絶対やめた方がいいって!……ここまで来る間で、一回もあんなレベルの気配は感じなかった……!あれは間違いなく別格だよ。」
それでも、そんな危険を見て見ぬふりは出来ない。
「私はもう決めた。それに、私一人じゃないし。」
ホアアアア
……うん。
着いてきてくれるんだよね。
ありがとう。
「……美香1人には任せられんよ。うちも手伝う。やるからには美香に怪我はさせない。」
ツバメは真剣な顔で言う。
「……ツバメ……魔法少女になってすぐなのに覚悟決まりすぎじゃない?なにか理由があるの?」
「えっ!?いや……うち……」
ツバメはそのまま考え込むとポツリと「ま、言う必要無いか」と言った。
「そんな危険な気配がするところに私とツバメとホアちゃんの3人だけかぁ……危ないかもなぁ……私はあんまり戦えないし。」
「ちょいちょい。知らん三人目がいるんすけど?」
あ、ツバメには言ってなかったっけ?
じゃあ教えておくか。
私はお腹に手を当てる。
「今この中にいるの……ホアちゃんが」
「うん分かった。今すぐモヤ長身パパ活変態妊娠放置男は通報しよう。」
……ええっ!?
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「えーっ!?わ、私がやったと思ってるの!?やだなぁ……やる訳ないじゃん、そんなこと!小百合様は神様だよ!?元序列一位様だよ!?そんなことする訳ないじゃん!!」
ふぅん……
嘘をついてるようには見えないわね。
……あてが外れたわ。
てっきりこの女が小百合を隠してると、そう思っていたけど。
「まぁ小百合のことは分かったわ。じゃあ理子は返して貰えるかしら?」
「……なんで?君さぁ……分かってたんでしょ?理子ちゃんがこんなになってるって、ずっと前から。それなのに何もしてこなかった君に!どうして今更理子ちゃんを渡さなきゃいけないのかなぁ!?全然信用出来ないよ!」
私はチラッとベットに寝かされている理子を見る。
肌はコケていて、髪は艶を失い、唇はカサカサに枯れていた。
保存状態が良いミイラのようにも見える。
……あれで生きてるなんて思えないわ
それに、
……私が言えたことでは無いけど、この人、私の事を知りすぎている。
……やっぱり厄介ね。
小百合の記録によれば、この女が原因で管理局の情報統制技術というのは、最悪な方に転がったらしいけど……
……本人に自覚は無さそうね
「はぁ……一応聞いておくけど、小百合がもしあなたの力で隠されていたら、どう見つけたらいいの?」
「私の力で?……それなら見つけられないんじゃないかな?」
「は?あなた何言ってるの?」
「わー!武器は出さないでよ!戦う気なんてないから!正直に答えてあげてるじゃん!私は自分の力の影響力をちゃんと分かってるの!だから自分が誰かを隠すなら、絶対自分なら見つけられる方法を残しておく!でも、私が隠してないなら、そんなもの残ってないかもね」
は?なにいってるの?この女
「私は、あなたの力で隠されていた場合の、見つけ方を、聞いたのよ?そんな、開かない扉を開けるためには鍵を使え、みたいな事を言われても、困るの。分かる?」
「だーかーら!私の力で隠されてるなら見つけられないの!だから普通なら見つける方法を残しておくって言ってるの!分かった!?……私はよく馬鹿って言われてたけど、君はそれ以上だね!?」
それ、見つける方法が無いって事?
嘘でしょう?
小百合が見つからないなんて……
「もういいかな?そろそろ理子ちゃんの食事の時間なの!だから、出てって?」
「……分かったわ」
私は部屋の出口へと向かっていく。
……途中でふと食事という言葉が引っかかり、振り向くと……
……あの女が理子の服をめくって、お腹に何かの針のようなものを刺している所だった。
さっきまでは服で隠れていて見えなかったが、よく見れば、お腹には無数の注射痕のようなものが出来ていた。
…………ごめんなさい理子
私は……
私には、小百合のことしか、見えていないの。
小百合のことを助けることが優先なの。
いつか絶対、あなたのことを、私じゃない誰かが助けるから……
それまで、耐えて……
……私は気持ち悪いぐらいピンク色の部屋を出た。
……あても無くなった私の足は、自然と家に向かっていた。
……次はどうしようかしら
孤独な戦いは、まだ続く。




