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魔法少女ごっこをしてるだけなのに、勝手に周りの人が曇っていくのはなぜ?  作者: さたけやま


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32/68

『刻まれた記録』より「花畑の記録・孤独」

「我は研究室に篭もる。邪魔するな」

「うーん?じゃあ私も!ま、私はいつでもきてくれていいよー?」

「ふむ。なら私も研究室に戻ろう。なにか要件があれば携帯で連絡してくれ。渡しただろ?……なくしてないよな?」


……みんな居なくなっちゃうんだ……

 ……別にいいけど

 

「うんもちろん!無くすなんてありえないよ!」

「我に携帯は必要無い。用があるなら直接来い」


 この携帯……

 この携帯でしか、もうみんなと繋がれないんだ……

 別に……別にいいけど……


「能愛はどうするんだ?ここに残るのか?」

「……私、は……移動めんどくさいから、ここに残る」

「そうか。相変わらずだな。」

「能愛も私の研究室に遊び来てねー!絶対だよ!」


 ……行っていいんだ……


「能愛が行くわけなかろう?貴様は言動だけじゃなく、頭までバカになったのだな」


 ……そうだよね

 私は……行かないよね……

 

「ぶー!この私に向かってバカなんて!もう知らない!」

「おい、こんな時に喧嘩するのか?やめてくれ。最後ぐらい仲良くしろ」

「カナタだってー!いっつもそうやって言ってくるけど!研究行き詰まってるんじゃないのー?」

「む。言わせておけば。私はまだ取っ掛りが掴めてないだけで——」


 ……こんな日常も、今日で終わりか……


 ——————————————————————————

 ——————————————————————————


「それではな。また会おう」

「ばいばーい!」

「ここで失礼する」


 あっみんなが行っちゃう

 別れぐらい伝えないと……


「また——」


 グニャリ


 ……………………………………

 …………………………………………


 ———————————————————————————

 ビューーー!!!


 バゴーーン!!


 ……皆以外来られないように出来た。


 そして、皆と使いたいウッドデッキも出来た。

 花畑も出来た。

 机と椅子も出来た。

 

 煉はお酒が好きだし、姫愛縲は可愛いものが好きだし、カナタはみんなで騒ぐのが好き。


  ……私はみんなといるのが好き……


 いつになったら……来てくれるかな……


 ———————————————————————————

 ……来てくれない


 空が暗いせいかな?

 明るかったら、みんな来てくれるかな……


 太陽を作ってみよう


 ———————————————————————————

 ……来てくれない

 

 ……寂しい……?


 いや、そんなはず……


 ———————————————————————————


 ここのウッドデッキ、だんだん汚れてきたな……

 やすりかけようかな……

 

 ———————————————————————————


 雪山の方で魔法の練習でもしようかな

 

 ———————————————————————————


 あっ

 携帯が鳴ってる……


『私が配信に映っちゃった!ほらほら!見てみてー!』


 ……ふふっ


 ……返信すると、私らしくないかな……


 …………………………

 ………………………………

 ————————————————————————————


 あっ!

 3年振りに携帯が鳴った!


『私の研究が進んで、皆の助けを借りたくなった。私の研究室に集まってくれ』


 ……やった

 皆と会える


 ———————————————————————————

 ……楽しかった

 ここにみんなを呼んだら、来てくれるかな……


 ……私じゃ無理かな……


 ———————————————————————————


  ……1年も連絡がない

 ————————————————————————————


 ……もう2年になるよ……?

 誰か……

 誰か来てくれないの……?

 ————————————————————————————


 この魔法は、なるほど……

 序列二位だろうが、私にかかれば……


 ……でもこの魔法………


 ———————————————————————————


「能愛貴様っ!我の研究の邪魔をするとはな……覚悟しろ。半殺しではすまんぞ」


 ……そんなつもりじゃなかったのに

 私は皆と一緒にいたくて、魔法の研究の過程として、怪獣に手を出しただけなのに……


「どうした!?いつものバカみたいな規模の魔法はどうした!?使わんのか!?そんな舐めた態度だと死んでしまうぞ!?」


 ……死ぬのかな

 なんでそんなことしなきゃいけないんだろう……


 煉……


 せっかくこっちに来てくれたなら、楽しく話でもしたかった……


 なんでこうなるんだろう……


 ———————————————————————————


 ……人が死の恐怖を感じた対象を、呼び出す魔法……

 ……本人ではなく、その時の存在を……か


 もしかして……


 ———————————————————————————


「ほう?この体は……なるほど。我は貴様に作られただけの存在なのだな」


 やった!やった!

 本人じゃないけど、煉を呼び出せた!

 

「……煉……どうして、あなたは会いに来てくれないの……?」

「我がどうして貴様らに会う必要がある?研究が進めばなんでもよかろう?」


 ……そうだよね

 ……うん煉はそう言う


「煉…皆…もっと会いに来てよ……」


「おぉ!もちろん!我が何回でも来てやるぞ」


 ……は?


 違うこれは煉じゃない

 

 この魔法……


 呼び出した対象に服従するのか……


 ……寂しいな……

 何やってるんだろう……


 —————————————————————————

「我に言っているのか?それは。邪魔はするなと言ったはずだろう?仕方ないな……」


 ……調整に調整を重ねて

 煉っぽくなってきた。


 でも……

 

 私、何してるんだろう……


 煉がいる場所は知ってる。

 姫愛縲がいる場所も知ってる。

 カナタがいる場所も知ってる。


 それならこんなことせず、会いに行けばいい……


 ………………………………

 …………………………………………

 

 ——————————————————————————


 ……何だこの魔法!?

 明らかに致命傷を負っているはず……!

 何故治る!?

 ……興味深い……


 ……なんて……本当は見た瞬間に分かった。


 ……私の研究は、多分終わらない……


 ……もう興味が無くなってしまった。それに魔法に終わりはないことを、知ってしまった……


 それなのに配信なんて見ていたのは……

 

 ……そんな事でも考えてないと、寂しくて……どうにかなりそうだったからだ……


 ———————————————————————————

ピリリリリピリリリリ


 連絡っ!

 内容は……


『皆に手伝ってもらった人造魔法少女の研究、あれで一旦私の研究は終了となる。妖精に関する全てを解明し尽くした、そんな気がする。あと、あの人造魔法少女は望と名付けた。なんだか愛着が湧いてしまってな。望を雑に扱うことがあったら、君たちでもタダでは済まさないぞ。……また会える日を楽しみにしている』


 カナタ……

 研究終わったんだ……


 なら、こっちに帰ってくるの?


 ……なんて、そんなわけないよね


 ……望、か


 カナタは望がいれば、寂しくないもんね


 ……私のことなんて忘れちゃうかな……


 ———————————————————————————

ピリリリリピリリリリ

 

 ……えっ?

 ……今、携帯……鳴った?


 皆と会える!?


『美香という少女が君に聞きたいことがあるそうだ。いつならそっちに行っても問題無いか?美香は面白い魔法を使う。研究の足しになるかもしれない。私は邪魔しないから、存分に研究してくれ。』


 ………………なにそれ……


 ……カナタじゃないの?

 ……知らない誰かが会いに来たって、私……


 でも……私は、魔法を研究しないと……


 最後まで研究しないと、皆と一緒にいられない……


 ……………………………………

 …………………………………………


 ……すぐに返したら私らしくないかな……

 ————————————————————————————

 1ヶ月経ったし、流石にいいよね……?


 ……送信。


 カナタ……

 煉……

 姫愛縲……


 ……寂しい……


 ———————————————————————————

 ドンドンドン!


 こんなに激しく叩く人……

 

 ……三人じゃない


 ……ほんとに来たのか。

 

 興味が湧かない。

 今更、実験なんて。

 めんどくさい……


「ごめんくださーい!美香です!kからの紹介で来ましたー!」


 ……めんどくさい

 皆はこんな雑に踏み込んでくる人間じゃ無かった

 カナタはいるのかな……

 それでも……魔法の研究はしないといけない……


 ドンドンドンドン


「ごめんくださーい」


 ……出るか……


 ガチャ


「え、開いっ!!」


「………………」

「………………」

「………………」


 どうみてもカナタじゃない。

 それに、私がいちばん嫌いなタイプの人間の顔をしている。

 能天気で、明るくて、人の事情にズカズカと踏み込んでくる。


「能愛さん、ですか?」


 …………………………………………

 ……………………………………………………


 ……話すこともめんどくさい


「能愛さん、ですよね?」


 ………………


 ……まぁ、こいつの魔法の研究は、するか

 カナタがさせるんだ。終わったら、もしかしたら会いに来てくれるかもしれない。


 「……入って」


 ガチャ


 こいつの魔法は配信で見た。

 自己治癒能力、またはただの治癒能力。

 だが仲間に使う様子が見られないことから、

 自己治癒だと思われる。


 試してみればいいか。

 さっさと済ませよう。


 めんどくさい。


 包丁でいいよね


 ヒュン


「ぐぁっ!?」


 うるさいな。大きな声出さないで


「なん……で……!!」


 なんでもなにも、そういう理由でカナタが送ってきたんでしょ?

 ……あれは、こいつのこと実験台にして欲しいって意味だったんだよね?


 ……あぁめんどくさい。

 だって、どうでもいい。

 こいつが治癒能力に長けてても、何でもどうでもいい。


 逆にめんどくさいぐらいだ。

 どこまでなら再生するか、いちいち試してやらないといけない。

 それに私の魔法じゃ加減できない。


 ……はぁ……手でやる必要がある。


「何でこんなことをっ!?」


 ……うるさい

 ……喚かないで


 あなたがうるさくても、私はやるしかないの


 研究の足しになると言われたなら、研究するしかないの


 どうでもいい


 スパッ


「あぁぁぁぁ!!!」


 血なんか出さないでよ

 臭くなる


 それに、この家は、私が皆と過ごすために建てたの……

 汚さないでよ……


 ドシン


「あっ!」


 ……めんどくさい


 ぐちゃ


「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 足ぐらい治るでしょ

 うるさいな


 ……その口塞いでやろうかな


「ぶべっ!」


「ぐはっ!」


「殺さないで……っ!」


「まだ、まだ生きていたい……!」


「美桜が待ってるんだ……っ!」


「やめて……っ」


「これ……以上は……」


「あがっ……………………」


「…………………………」

「…………………………」

 ……………………………………

 ………………………………………………


 ……これでも死なないんだ

 ……めんどくさい


 魔法少女に変身する前から、怪我への耐性があるみたい……

 魔法少女になった結果、変身前でも死ににくくなったのだろう。


 魔法少女は変身する前から出来ていたことの、延長戦にあるような能力を得る場合が多い。


 きっと元々怪我が人より治りやすいのだろう


 ……だから何って話なんだけど……


 ———————————————————————————

起きて騒がれてもめんどくさいし、眼球と鼻は原型が無くなるぐらいグシャグシャにしてやった。

 なにかされてもめんどくさいし、手は没収した。


 あとは……


 強制的に魔法少女に変身させる魔法……


 ……昔カナタと作った、失敗作

 契約の過程をすっ飛ばして魔法少女にさせられると思っていたら、既に魔法少女だった人を魔法少女に変身させるだけの魔法。


 ……それを使った。

 これ以上は変身させてないと、死ぬ。


 配信を見ていた限り、変身したなら痛みの感覚や暑さや寒さなどの痛みに近い感覚がなくなるのだろう。

 変身と同時に強烈な自己治癒が自動で発動する。


 だから……


 あとはトラウマを刺激するための魔法。

 人のトラウマの対象を呼び出して、心理的に圧迫させる魔法。欠点として、実際のものよりサイズが小さくなる。


 それをこいつのお腹に入れてやった。


 自己治癒を一旦させないで、どこまでの怪我なら


 そう……


 ギ……ィ……ギ……ィ……


 どこまでも治るなら、治らないラインを探さなければならない。

 それが研究だ。

 

 手足の骨ぐらいはまぁきっと治るだろう。


 ギ……ィ……ギ……ィ…………パン!


 ギィコギィコギィコギィコ


 はぁ……外から見えるところは大抵グチャグチャ……

 

「……手間……次は臓器……めんどくさい……まぁいいか」


 サクッ


 ビチャビチャビチャビチャ……ズルッ


 あ、これ腸か。

 取り出したのは初めてだな……

 壊れた状態のものがあるんじゃなくて、臓器自体を取り出されても治るのかな


 ……気なるけど、めんどくさい


 はぁ……次は心臓でも——


「…………何を……っ!!何をやってるんだっ!!能愛っ!!」


 っ!?

 カナタの声!?

 でも、なんで怒って……


 あ、カナタだ……


 ……でも私が喜ぶと、変だよね……


「……うるさい……大きな声出さないで。それはさっき聞き飽きた」

「……君に……!君に任せたのが間違いだった……!!」


 ……え?

 間違い?

 私に任せたのが?

 えっ?

 どういうこと?

 だって、研究をする代わりに、頼み事を聞いてやれって、そういう話だったよね?


 グニャリ


 ……えっ?

 待って、行かないで

 やだ!

 喧嘩別れなんてやだ!

 待って!!


 ………………………………

 ……………………………………


 行っちゃった……


 ……どうしよう……


 姫愛縲なら相談に乗ってくれるかな……?


 ……皆が思う私は、そんな事しないか……


 ……何でこうなったんだろう……


 ……寂しいよ


 寂しい


 ———————————————————————————

 ………………カナタがやれって言ったんだ


 私は悪くない

 私は悪くないんだ


 それに研究の邪魔をしたのはカナタだ

 カナタが悪い

 カナタが悪いはずなんだ


「じゃあ行く——」

「死んで。」


 ……私はそれぐらい言うよね

 本当は思ってなくても、言うよね……


 ビューーー!!


 いいな……

 カナタはたくさんの人に囲まれてて……

 ……だからなの?

 だから私のことを捨てたの?


「能愛!!随分な挨拶じゃないか!!私たちはただ、美香を治して欲しいだけなんだが!?」


 ……なんでそっちが正義ぶってるの?

 カナタがしろって言ったんじゃん

 ……もう分かんないよ……


「研究の邪魔をしたのは、そっちでしょ?ほら、死んで」


 バゴーーーん!!

 

「……能愛ぁぁ!!今日は本当に許さない!!覚悟しろ……っ!!私の娘に手を出した報いを受けさせてやる!!」


 ……娘?

 なんのこと?

 まさかあの女のこと?

 ……ありえないよね?

 自分の娘を実験していいなんて差し出すなんて。


「能愛様でも!!今回ばかりは見過ごせません……!ご覚悟を!!」


 望……だっけ?

 ……私も作ったのに、なんで私は狙われてるの?

 いっつもそう。

 私は嫌われる。

 疎まれる。


 そうしなかったのは皆だけなのに

 そんなカナタも……


「弱い。死んで」


 グサ


「ぐっ……ご主人様……」


「望っ!?」


 ……意味がわからない。私が今の攻撃を貰ってたらさ、死んでたんだよ?

 私より、望なんだ……


 でも、殺したくはないから……


 カナタのことは生かしてあげる


「カナタも邪魔」

「なんだ!?これは!?辺りが暗く……はっ!?上か!?グッッッ!うおおおぉぁぉ!!!」


 カナタ、剣なんて使えたんだ。

 そんなのも知らなかった。

 もっと教えてよ……

 もっと……


 コーン!


 バゴーーーーーン!!


 ……邪魔しないでよ


「はぁはぁ……相変わらずめんどくさい能力だ!!今のは誰の力だ!?」

 ……え?

 私の能力のこと……

 素晴らしいって、君にしかできないってそう言ってくれたのに……

 ………………………………

 ……………………………………


「うるさい、死んで」


 び、びちゃびちゃびちゃびちゃびちゃ

 ゴリゴリゴリゴリゴリ


 あ、やりすぎちゃった


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 ……まぁいいや。

 死んでさえなかったら何とか治せる。

 ……反省してくれるでしょ?


 ここまでやったら……さ……


 ……私が間違ってるのかな……


 …………………………………………

 ………………………………………………


 グチャ、バキ、グチャグゴバキグチャグチャ!!


 ……は?

 なに……あれ


「……こんなに大きく育つなんて、ありえない。それに宿主を食い破るなんて。」


 いいや……大きすぎる……


 まさか……育てたのか?


 いや待てこのクジラが出てきたってことは……


 あぁ……治ってる……


「あぁ……っ!これで殺せるっ!」


 殺す?

 誰を?

 ……私を?

 なんで?

 私はカナタの言った通りに……


 どうして、

 どうしてこんなことになったの?


「ほら、おいで?」


 ……は?

 ありえない。

 どうしてクジラが従って……


「アハハハ!邪魔で見えないじゃん!!どけよ!」


 クジラに穴が……


「動くなよ?今見えてるんだから!ねぇ!能愛ちゃーん!今から殺してあげるからねー?もう!どうなっても知らないから!」

「……なに?……どういうこと?」


 意味がわからない……

 

 ……狂ってる


 …………………………………………

 ………………………………………………


————————————————————————————

………………………………

 ……………………………………

 

 「能愛……君にかける言葉が見つからない……君が悪いんだ……っ!!でも、私の個人的な感情が、君を死なせたくない……!……クジラ……君に群がっているクジラを食べろ……それは美香の魔法を吸い込んでいる。きっと……きっと食べれば回復する……ほら、食え……!……食うんだ!!」


 ……なんで……なんでこんなことに……


 ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………


「君が生きてくれて……良かった……だが、次はきっとない……まっとうに生きろ……そうすればまたこんな目にあうことはない……私はここで失礼する……また、様子を見に来るからな……」


 よう……す……?

 まっとう?

 ……私……何を間違ったん……だろう……


 グニャリ


「…………………………」


 ———————————————————————————

 死にたくない

 死にたくない

 みんなとまた話したい

 死にたくないのに……


「も、もう痛いことは……しないで……何でもするから……」

「っ!何でも!?アハハハ!!焦りすぎだよー?そんなこと言ったらどうなるかも分かってない!ほら、じゃあ私にキスして?」


 ……キス?

 26年間……まだ、誰にもしたことなかったのにな……

 ………………………………………………………………………………………………………………


 チュッ


「アハハハハハハ!————————————」


 私の……キス……

 初めてだったのに……

 こんな形で……


「ほら、能愛、帰ろう?私のものだもんね?」

「………………」


 ここ、を離れたら……

 …………仕方ないか……


 グニャリ


「————ギューってして寝かせてあげる」


「ギュー……」


 ……あれ?

 心臓が……暖かい……

 なんで……なんで満たされてるの?

 こいつは……こいつは……


 ———————————————————————————

「美香って呼んで」

「……美香」


「ふふ……可愛い……」

「……っ!……」


 ……可愛い

 そう言われる度に、なにかが満たされる……

 本当は嫌なはずの言葉なのに……

 研究の代償で若返って、コンプレックスになったはずなのに……


 ———————————————————————————

「今日の態度はなんだったのかなぁ?……お仕置だよ?」


 グチャグチャグチャグチャグチャグチャ


「……やっ……やめて……」


「その顔が見たくてやってるんだよ〜!ほら!」


「っっっっっっあぁっ!!」


「ふふふ!可愛い……」


 ……どうして?


 すごく痛い……すごく痛いのに


  ……どうしてか満たされる


「ほら、死んじゃうよ?私の肉食べて?」


「あ!本当に食べたー!可愛いねぇ……」


 ……どうしてだろう

 人の肉を食べるなんて、嫌なはずなのに

 自分だけ特別と思ったら……

 どうしてか満たされる……


 ———————————————————————————

 この感情はなんなのだろう

 

「美香……ギュってして……」

「っ!ふふっ!自分からそんなこと言うなんて可愛いなぁ!ほら!ギュー!」


 ……あぁ

 ……分かった。

 ……美香は私と一緒にいてくれる

 ……私にだけ欲望をぶつけてくれる

 

 ……だから、だから特別だって感じる

 ……だから寂しくない


 ……居なくならないって思える


 ———————————————————————————

「ごめんね……能愛……謝って許されることじゃないけど……もうここに居なくて……いいよ?帰ってくれて、構わないから!」


 ……え?

 ……なんでそんな事言うの?

 せっかく満たされたのに

 美香のそばに居るために美桜を治してあげたのに

 美香

 離れないでよ……


「……美香……傍に居ちゃ……だめ?」


「っ!……ううん。いいよ!これからも一緒に暮らそっか……!」


 そっか。

 嬉しい。

 これからも一緒

 一緒なんだ

 寂しくない


 やった

 やった!

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